研究実績の概要 |
2017年度に新潟県粟島で実施した飼育実験の試料の化学分析をおこなった。飼育実験では予め添加剤を練り込んだプラスチックペレットを作製し、それをオオミズナギドリの雛に摂食させた。事前の網羅的分析結果に基づき、紫外線吸収剤のUV-328, UV-326, UV-327, BP-12, 臭素系難燃剤のBDE-209の5種の添加剤をプラスチックペレットに練り込んだ。投与16日後に雛の尾腺ワックスを採取し、尾腺ワックス中の添加剤の分析を行った。分析の結果、プラスチック投与区の鳥の尾腺ワックスからのUV-328, UV-326, UV-327, BDE-209の検出量が、コントロール区の個体に比べて有意に高く、プラスチックに添加剤として含まれる化学物質が、摂食プラスチックから海鳥に曝露され、尾腺ワックスに移行、蓄積することが明らかとなった。このことは、本科研費の手法が妥当であることの確証となった。一方、飼育実験における尾腺ワックスの量が極めて少なく、重量が測定できず、一回の実験操作当たりの検出量での比較での議論となった。野外の鳥の場合でも同様のワックス重量の測定が困難な事例が多いので、本年度は脂質量を化学的に測定するため、水素炎イオン化検出器付きクロマト装置(イアトロスキャン)を導入し、微量脂質の測定法の開発を行った。重量が測定できないような微量な試料でも、イアトロスキャンで有機物量は測定可能であることは確認されたが、まだ定量化には至っておらず、2019年度に定量法を確立する。 野外の海鳥の分析は、ニュージーランド、タスマニア、マリオン島、ゴフ島、ケルゲレン島等、南半球の鳥を30個体分析した。分析した30個体のうち14個体から紫外線吸収剤か臭素系難燃剤を検出し、昨年度までの傾向(海鳥の50%で摂食プラスチックから体組織への化学物質の蓄積が起きていた)と一致した結果となった。
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