研究課題/領域番号 |
16H01769
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
依田 憲 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (10378606)
|
研究分担者 |
北川 貴士 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (50431804)
原村 隆司 酪農学園大学, 農食環境学群, 准教授 (50590197)
飛龍 志津子 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (70449510)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | バイオロギング / マグロ / ヒキガエル / コウモリ / 海鳥 |
研究実績の概要 |
本研究では、動物の移動分散に伴って生じる様々な生態系問題を解決するために、移動スケールの異なる生態系鍵種であるオオヒキガエル、海鳥、クロマグロ、コウモリの移動分散を最先端の動物搭載型センサを用いて追跡する。本年度は以下の野外調査および解析を中心に研究を実施した。オオヒキガエルとアズマヒキガエルに装着した加速度GPSデータロガーの行動解析を行ったところ、アズマヒキガエルに比べてオオヒキガエルはジャンプでの移動が多く、これがオオヒキガエルが生息範囲を急速に広げる一因であると考えられた。海鳥類に関しては、オオミズナギドリやウミネコ等に合計で100羽以上にGPS・加速度ロガー等を装着し、移動分散に関するさまざまな知見が得られた。例えば、オオミズナギドリの行動圏は表層大型捕食魚の漁獲量と相関することがわかり、水上と水中の高次捕食者同士で共通する餌資源を巡る競争があることが示唆された。北海道と福井県の調査地においてキクガシラコウモリとヤマコウモリに対してバイオロギング調査を実施した。音響GPSデータロガーを用いたデータ回収に成功し、採餌タイミングを移動軌跡と同時に初めて記録することができた。またオオコウモリに対するバイオロギング調査にも成功し、島間の移動などが確認された。さらに、海鳥で開発した移動経路から風を推定する手法をコウモリに適用し、コウモリが自然環境下を移動中に経験する風環境を推定した。クロマグロの持続的遊泳をつかさどる生理機能基盤の成長に伴う変化についての検討した。体長25㎝以下の個体のミオグロビン含有量の測定を行ったところ、血合筋で400mg/100g以下の極めて小さい値となった。幼魚期においては持続的遊泳能は極めて低いため、日本沿岸陸棚域の高い生産海域にとどまって摂餌を行うことで、遊泳力を高めているものと推察された。以上の結果の一部を学会発表や論文として公開した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
野外調査によるデータ取得およびデータ解析は順調に進展している。しかし、音響も計測できる小型GPSロガーの回収がコウモリ1個体からしか成功しなかった。これに関しては来年度引き続き実施する予定である。これらを統合的に鑑みて、概ね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
野外データの取得に関しては順調に進んでいるため、引き続き継続して、環境の年変動に応答するであろう移動行動データの取得につとめる。また、本年度は海鳥を用いて開発された、移動経路から風を推定する統計モデルをコウモリに適用したが、次年度は4種から得られた行動データを集積し、統合的解析を行う。
|