研究課題
アラスカのバーローとノルウェーのニーオルスンにおいてCOSMOS測定器によるブラックカーボン(BC)の長期観測を継続した。このCOSMOSの性能を評価した結果、その測定精度は10%と極めて高いという結果を得た。これを受けて、カナダの国立環境気候研究所と共同でアラート観測所において2018年1月に観測が開始された。またロシアの南極北極研究所と共同でバラノバ岬観測所においてCOSMOSによる観測が、2017年11月に開始された。ニーオルスンにおいて積雪及び降雪中に含まれるBC粒子の粒径分布を2年間にわたり観測した結果を詳細に解析した。この結果、積雪及び降雪中のBCの粒径分布の観測に基づくBC沈着量の推定値は測定誤差の範囲で一致し、降雪・積雪中のBC濃度及びフラックスの信頼性のある測定法が確立された。また、降雪中の平均BC濃度は平均降雪量に大きく依存しないこともわかった。さらに降雪・積雪中のBC濃度比較から全沈着に対する乾性沈着の寄与は小さいことがわかった。以前に行われた他のグループの積雪の観測と比較した結果、先行研究では、積雪中に含まれるBC濃度を過大評価している可能性が示唆された。ニーオルスンとバーローにおいて2017年までに採取された降雪・降水中のBCの粒径分布の分析を行い、BC濃度が夏に極小、冬季に極大となる季節変化をすることを見出した。また気候モデルを用いて、両地点での大気中、降雪・降水中のBC質量濃度の計算を行った。モデルは、観測された季節変化の傾向を再現できることがわかった。ドイツの極地研究所と共同で北極での航空機観測を実施するためにBC、エアロゾル、雲観測用の機器をドイツに輸送し、POLAR 5機に組み込んだ。試験飛行後、北極での観測を3月より開始し、4月まで実施した。
2: おおむね順調に進展している
ニーオルスンで2013年までに採取してきた積雪・降雪中のBCの粒径分布の解析を行ない、その結果を論文として発表した。またニーオルスンとバローにおいて2017年までに得られた降雪・降水の分析も行った。また全球モデルによるBC濃度の計算と観測データとの比較も続行中である。このように計画通り研究が進んでいる。
バロー、ニーオルスン、バラノバ、アラートの4か所でCOSMOSによりBCの同時観測が行われつつある。この観測を継続することにより、北極圏のBCの分布の時空間変動をこれまでにない精度で把握する。また昨年にニーオルスンで行ったCOSMOSとSP2測定の比較結果を取りまとめ論文化する。ニーオルスンでは降雪・降水の採取を継続する。また降雪と降水中のBCの粒径分布を比較し、降雪と降水でBC除去の特長に大きな違いがあるかを調べる。さらにノルウェー極地研究所と協力して、異なった場所で積雪の採取を春季に行う。このことで、湿性沈着の空間分布を理解し、BC沈着の雪氷アルベドへの影響をより高精度で推定することができる。アラスカ、ニーオルスン、フィンランド、ロシア、グリーンランドの広域で採取された積雪中のBCの粒径分布の分析を行った。BCだけでなく無機のイオン成分の分析も行ってきた。BCとイオンの濃度の関係を求め、それぞれの成分の起源を明らかにする。またBCの粒径分布の空間的な変動も調べる。大きい粒子ほど湿性除去を受けやすいので、この情報からBC輸送中の湿性除去過程の理解を深める。2018年に北極でドイツと共同で行ったエアロゾルなどの航空観測のデータ処理をまず行う。引き続いて他の観測項目と合わせて、データの解析を行う。大気中のBC、降雪・降水中のBCの濃度を全球モデルで計算する。計算する場所は、アラスカ、ニーオルスン、フィンランド、ロシア、グリーンランド領域である。大気中のBCについてはバロー、ニーオルスン、バラノバ、アラートの4か所での連続観測と比較する。また降雪・降水については、ニーオルスンとバローでの観測と詳細な比較を行う。また降水量も観測値を良く再現できるかという点も調べる。これは湿性沈着フラックスを高精度で推定するために重要な検証となる。FLEXPARTモデルでも同様な計算を行う。
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すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 2件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 14件)
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