研究課題
動物はヒトと同じく多くの環境化学物質に曝露されており、環境化学物質による集団死は野生動物では世界的にも恒常的に起こっている。また、日常的な化学物 質曝露は野生動物に病態を引き起こしていることがこれまでの 研究により明らかになりつつある。一方で、動物の化学物質の感受性の種差や個体差に関する研究 は少なく、化学物質のリスク管理を難しくし、また、野生動物のケミカルハザード(化学物質の有害性による被害)を引き起こ す原因となっている。本研究では 野生動物、とくに生態系で高次に立つ野生哺乳類と野生鳥類の化学物質感受性 に関して種差や個体差を引き起こしているその要因を明らかにし、データベースの 構築を行うと同時に、環境適 応への分子進化過程を高等動物で初めて明らかにすることを目的とした。 平成29年度では、下記の研究を進め、成果を得た。1)哺乳類について、UGT1ファミリーおよびUGT2ファミリーの動物種差について明らかにした。特に食肉目の動物に関して、UGTの特徴を明らかにすることができた。また、同時に、雑食性動物や草食動物などに関して、ゲノム上でのUGTの特徴について、in silico解析から明らかにすることができた。2)鳥類について、UGTファミリーの分布とそのゲノム構造について明らかにした。3)哺乳類、鳥類について食性とUGT活性との関係性について明らかにした。4)殺鼠剤をモデル化合物として、その感受性に関する新規のメカニズムを提唱した。
2: おおむね順調に進展している
化学物質の動物種差に関して、学術雑誌への論文の発表や、国内外の学会への発表を行うことができた。解毒に重要な異物代謝に関して、その進化に関する新たな仮説を提唱しており、おおむね十町に進展していると判断した。
研究遂行上、大きな問題はないことから、予定通り研究を進めていく。今後は、これまでの研究に加えて、以下の研究についても実施する。1)細胞を用いた化学物質感受性試験樹立のために、ウェットなin vivo実験だけではなく、哺乳類や鳥類からの培養細胞を用いた研究も進める。また、希少動物の試料入手が難しいことから、in silicoによる解析も同時に進めていく。2)モデル化合物として殺鼠剤だけではなく、ネオニコチノイドやDDT、マイクロプラスチックなどに関しての実験も行い、その種差に関する情報を得る。2)最終年度の研究結果取りまとめを目指して、これまでのデータに関してのレビューを行う。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 4件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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