研究課題/領域番号 |
16H01788
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
古米 弘明 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (40173546)
|
研究分担者 |
片山 浩之 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (00302779)
春日 郁朗 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (20431794)
栗栖 太 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (30312979)
高田 秀重 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70187970)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 環境質定量化・予測 / 雨天時汚濁 / 流動水質モデル / 合流式下水道 / 微生物モニタリング / 下水マーカー |
研究実績の概要 |
都市沿岸域に位置する親水空間における降雨後の糞便汚染の実態評価と、糞便汚染に伴う健康リスクを制御・管理する方策を検討するために、次の研究項目を実施した。 1.降雨後の広域曳航調査及び水位と電気伝導度の連続測定: 台場周辺海域において降雨後の水質調査を広域的に継続実施して、降雨後8日にわたる汚染実態データを取得した。病原指標微生物などの腸管系ウイルス類,大腸菌ファージ、大腸菌、大腸菌群数、糞便性大腸菌群数、腸球菌、汚水マーカーとしての医薬品類や合成甘味料などを測定した。また、隅田川や台場において水位と電気伝導度の連続測定をして、流動水質モデルの検定データとして取得を継続した。 2.汚水マーカー、健康関連微生物の受水域での挙動の評価: 流入下水と処理水を数か所の都の水再生センターから入手して、医薬品類や合成甘味料、大腸菌や腸管系ウイルスの濃度データを取得した。降雨後の経日的な濃度変化の類似性や相違を整理した結果、細菌類の消長は相対的に類似したものの、大腸菌ファージは細菌類とは異なり、濃度低下が小さいという傾向を示した。また、医薬品類と大腸菌や大腸菌ファージとの関係を整理して、受水域における糞便汚染の地点ごとの違いや類似性を整理した。 3.雨天時汚濁負荷削減シナリオの検討: 都下水道局から、過去に遡って雨水滞水池、管内貯留の段階的な整備状況に関する情報を入手して、対策内容を年度ごとに整理した。そして、台場のような水辺空間における糞便汚染の低減につながる越流水由来の汚濁負荷量の削減対策シナリオを類型化して形で整理した。 4.下水道モデルと連携した沿岸域水質シミュレーション: 雨天時汚濁流出解析の予備段階として、合理式合成法による汚濁流出解析を行い、その汚濁流出負荷量を反映して、2017年7月から8月における台場沿岸域の3次元流動水質モデルによる水質予測シミュレーションを実施した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1.降雨後の広域曳航調査及び水位と電気伝導度の連続測定: 昨年度調査とは異なるタイプの降雨後の採水調査を実施して、汚水マーカー、健康関連微生物に関する貴重なデータを取得することができた。また、東京都の協力を得て、水位に関しては隅田川区間3地点、お台場の計4地点に、電気伝導度についてはそのうち2地点での連続観測を継続できており、流動水質モデルの貴重な連続観測データを取得できた。 2.区部水再生センターにおける流入下水水質調査 東京都の協力を得て、流入下水と処理水を数か所の水再生センターから入手して、汚水化学マーカーとしての医薬品や合成甘味料、糞便汚染の指標である大腸菌や腸管系ウイルスの濃度データを取得できた。これにより、越流水の受水域での希釈レベル評価や晴天時における濃度レベルとの関係を整理する道筋が明らかになった。 3.下水道モデルと連携した沿岸域水質シミュレーション: 港区がお台場における水質改善を実施していたことを受けて、その研究成果の評価や今後の研究指導を行った。その延長上として、2018年度は降雨後のお台場水質予報の研究を実施することなり、共同で取り組む予定である。研究成果が直接的に現場の問題解決に貢献できる可能性が高まった。
|
今後の研究の推進方策 |
1.降雨後の広域曳航調査及び水位と電気伝導度の連続測定: 降雨後採水調査により、さらに異なる降雨や潮汐条件における、また、水位と電気伝導度の連続観測を継続して、流動モデルの検定や検証として活用する。 2.汚水マーカー、健康関連微生物の受水域での挙動や消長の定量的評価: 降雨後長期的な水質変化データの取得から、下水マーカーの消長を定量的に評価するため実験をおこなうことが有効である。医薬品類や微生物の沿岸域における環境要因を考慮した消長に関わる動力学定数を推定することを想定している。 3.類型化された降雨に対応した沿岸域水質シミュレーション: 過去10年間の東京区部の降雨データを取得して、降雨パターンの類型化を行い、類型化された降雨に対応した沿岸域水質シミュレーションを行うことで、大まかなお台場海浜公園の水質想定をすることが考えられる。異なる潮汐条件で類型化された降雨での越流量を与えることで、お台場における水浴場水質基準を下回る濃度が生じる大まかな日数を推定する方法を提示できれば魅力的な成果となる。 4.都市内親水空間利用のためのリスク低減対策効果の検討: 東京都と公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会がトライアスロンの競技会場であるお台場海浜公園の水質・水温調査を実施して、水中スクリーンなどの対策を実施する方針である。また、港区は将来的に夏場の水浴場開放への構想を有しており、すでに水中スクリーン設置前後の水質調査を実施している。これらの動向から、水中スクリーンの水質改善効果をモデルにより評価することが有意義な研究推進内容となる。
|