研究課題/領域番号 |
16H01796
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
比嘉 充 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (30241251)
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研究分担者 |
鈴木 祐麻 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (00577489)
安川 政宏 山口大学, 大学院創成科学研究科, 助教 (20647309)
遠藤 宣隆 山口大学, 大学院創成科学研究科, 講師 (40314819)
松本 英俊 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (40345393)
通阪 栄一 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (40363543)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 再生可能エネルギー / 塩分濃度差 / イオン交換膜 |
研究実績の概要 |
逆電気透析(RED)発電の高出力化のためにPVA系ナノファイバー(NF)シートを包埋した複合イオン交換膜(IEM)を作製し、膜の機械的強度向上と高い対イオン輸率、及び膜抵抗の低減を実現した。またイオン交換膜に凹凸構造を付与して特異形状を有するIEMを開発し、従来の平膜よりも流路部の電気抵抗を低減することで、RED出力を約3倍増加させた。
実証化の初期段階としてREDスタックの大面積化(総膜面積180 m2)を行い、モデル濃縮海水(90 mS/cm, NaCl溶液)と実河川水を用いて出力性能を調査した結果、257.2 Wの高出力を達成した。大面積化時の性能推算モデルを構築するために水温の影響を詳細に解析した結果、膜抵抗は2.5%/℃の水温依存性があることを示した。また流路部抵抗に関してはスペーサー形状と抵抗増加に繋がる遮蔽効果の関係を明らかにした。これらの結果を参考として新たに開発した計算手法は、各種条件(①供給条件(流量、濃度、水温)、②スタック構造(膜性能、膜間距離、膜形状、スペーサーの種類))における最大RED出力の実験結果を良好に予測できた。さらにRED出力からポンプ消費出力を差し引いた正味出力向上のための適した流量条件(淡水:海水=3:8)を明らかとした。
淡水側前処理として、電解凝集/浮上-精密ろ過膜前処理プロセス(EC/EF-MF)を構築して溶存有機物の除去、そして除去に要するエネルギーを評価した。バイオポリマー・芳香族系有機物・カルシウムの選択的除去、溶存有機物の低分子化を観察した。RED発電時のスタック流路目詰まりは付着物の3次元蛍光分析より微生物由来の有機物(つまり生物由来汚染)であることを明確にし、この汚染による目詰まりは逆洗により90%以上回復できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現在までに当初の計画以上に研究が進展している主な理由として、 ①PVAベースのイオン交換膜に関しては膜抵抗に依存する因子を新たに見出すことができたため、今後の膜抵抗低減の目途がついた。 ②膜の形状に関しても凹凸構造付与によりスタックの電気抵抗の低減が可能である結果が得られ、凹凸構造の最適化を進める方策が固まった。 ③開発した大面積スタック出力推算モデルにより、スタック寸法形状に関する検討を行うことが可能となった。 ④実証化を志向した実液を用いた試験を進め、二価イオンやファウラントに関する検討を進めており、膜詰まりの主な原因が生物汚染であることを見出した。 このように、ラボスケールの開発から、大面積の実証化を志向した試験までの一連を包括的な研究を遂行することが出来ていることが挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
PVA系イオン交換膜に関しては、膜抵抗低減と1価イオン選択性の付与の検討を継続し、凹凸構造の最適化の検討を実施する。また大面積スタックシミュレーションモデルを活用し、将来の実証化に向けたフィージビリティースタディー(FS調査)を行う。実用化時の障壁となるREDスタックの膜詰まり(ファウリング)に関してもメカニズムの検討を進めるとともに、ファウリングを防止・除去するための前処理方法、およびスタック洗浄方法に関しても検討を進めていく。
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