研究課題/領域番号 |
16H01797
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
南齋 規介 国立研究開発法人国立環境研究所, 資源循環・廃棄物研究センター, 室長 (80391134)
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研究分担者 |
加河 茂美 九州大学, 経済学研究院, 教授 (20353534)
金本 圭一朗 総合地球環境学研究所, 研究部, 准教授 (20736350)
茶谷 聡 国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境研究センター, 主任研究員 (40394837)
東野 達 京都大学, エネルギー科学研究科, 名誉教授 (80135607)
近藤 康之 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (80313584)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 消費基準勘定 / 多地域間産業連関分析 / 健康被害 / 経済損失 / 貿易の不公正 |
研究実績の概要 |
大消費国である米国、中国、日本、ドイツ、英国に着目した消費者基準によるPM2.5に起因するアジア領域における早期死亡者に関する分析結果を国際学術雑誌で報告した。PM2.5の一次粒子と二次粒子前駆物質排出インベントリ,国際産業連関分析モデル,大気質輸送モデル,曝露リスク評価モデルを組み合わせ,消費国がアジアのサプライチェーンにおいて直接間接的に引き起こす早期死亡者を算定し,その早期死亡者数から逸失労働所得として経済損失額を明らかにした。更に,5カ国がアジアの国々にもたらす国際貿易を通じた付加価値に対する経済損失額の大きさを比較し,貿易に隠れた不公正について定量的な解析を行った。 結果として,5カ国の消費は2010年にアジア域において,12.1百万トンの一次粒子を排出し,二次粒子前駆物質として,窒素酸化物を21.3 百万トン,二酸化硫黄を 26.0百万トン,一酸化炭素を159 百万トン,アンモニアを1.20百万トン,化石燃料起源とバイオマス起源の非メタン揮発性有機化合物をそれぞれ15.6 百万トンと10.7 百万トンを生じさせた。前駆物質により生成された二次粒子の濃度影響を含めて,一年間で約100万人の早期死亡者をアジア域に生じさせたことを確認した。年齢層別の早期死亡者を見ると,80歳以上の高齢者の死亡は多いが,下気道感染による疾患から乳幼児の死亡者も無視できないことが分かった。特に,中国とインドで多く生じ,5カ国の消費が年間1千500人の5歳未満の乳幼児を犠牲にした。約100万人の早期死亡者による経済損失被害は450億米ドルと推計された。アジア各国に与える被害額と貿易により生み出す付加価値を比べると,例えば,日本は被害額の割合が0.2%程度と小さいがラオスは4.1%と大きく,特に途上国において貿易の不公正が顕著であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,5つの大消費国を対象にPM2.5によるアジア域での影響を消費基準勘定により明らかにする学際研究成果をオープンアクセスの国際学術雑誌(Environment International)に掲載することができた。特に,消費基準での早期死亡者を経済損失として理解し,貿易の不公正の存在を世界で初めて明らかにした点で学術的貢献は高いと考え,進捗は概ね順調であると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,昨年度より継続して進めている,消費基準による分析をサプライチェーンに分解して計算することを目的として,アジア各国の発生源別にPM2.5に起因する早期死亡者数を定量化し,早期死亡者数に関する原単位を整備する。これらの原単位を多地域間産業連関分析と組み合わせ,サプライチェーンを分解可能な消費基準の計算を可能にする。
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