研究課題/領域番号 |
16H01802
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松隈 浩之 九州大学, 芸術工学研究院, 准教授 (60372760)
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研究分担者 |
村木 里志 九州大学, 芸術工学研究院, 教授 (70300473)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | シリアスゲーム / ヘルスケア / ロコモティブシンドローム |
研究実績の概要 |
本年度は協力者である従来の介護施設に加え、福岡市内、および近郊のリハビリ施設等への施設へと実施を拡大し、検証・ヒアリングを積極的に行った。結果、片足立ちによるロコモ訓練が施設の利用者、つまりは比較的身体能力の低い患者にとっては負荷が高すぎること、またセラピスト側での患者への安全性に不安がある事がわかった。この片足立ちによるロコモ訓練は、比較的元気な高齢者、現在継続して行ってきているロコモ運動サークルでの検証・ヒアリングの長期的継続が重要と判断した。介護施設に関しては、同時に改良を続けていた立ち座りのゲームを一定期間使用してもらい、随時フィードバックを得てきた。 ①自宅でゲーム訓練実施可能な体制構築:既存のバランスゲームをネット対応版に改良できるよう開発を進めた。しかし高齢者宅においてのネット環境の欠落や、使用機器の操作への抵抗感などの課題を確認した。今後はタブレット利用等、システム面での改良を行う。 ②自主コミュニティ形成支援:福岡市南区保健福祉局の協力のもと、大学内で実施しているロコモ運動サークルが3年目となり現在も継続中で参加者から好評を得ている。また、将来的な自主コミュニティ形成の為、運営補助員を募り、スタッフと共に準備に関わってもらっている。今後はリーダーとなりうる参加者を新規で募集し、ゲームのコミュニティ機能強化と併せて、自主コミュニティ形成を目指す。 ③コンテンツ(運動)種類増加:立ち座り運動ゲーム『起立くん』の改良版『起立の森』のクラウド対応とセンサーの開発が行われた。このゲームをベースに、失敗体験を持したゲーム性とクラウドを利用した新しいサービスを追加する。また、ステップ運動をテーマとしたゲームを増やし、ゲームによるヘルスケアの強化を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の主軸であるロコモ対策用ゲームについては、ヘルスケアイベントや、高齢者施設、病院等で広く利用してもらい、実際に楽しみながら利用されている。利用者からは筋力・バランス力について向上したという報告も受けている。一方で、バランス訓練は一人で行うことは転倒等の危険が伴うため実施しない施設もあり、ゲーム内容と導入施設の関係について再考する余地も見られている。また、科研費助成事業『高齢者向けロコモ対策用ゲームの開発を通したゲームデザイン研究』にて試作したバランス支援ゲーム『ロコモでバラミンゴonline』が、開発環境の変化で今後の改良が難しいことが判明したため、自主健康コミュニティ形成に利用するオンラインゲームについて再考が必要となっている。 2014年11月より開始したロコモ運動サークルが3年目を迎え、参加者の希望で29年4月以降も継続して行う事となった。本サークルへは毎回15~20名の高齢者が参加し、大変好評を得ており、将来的な自主コミュニティ形成への強い可能性も見られるが、リーダーシップを取る事ができる参加者が必要であり、以降特化した参加者募集の呼びかけも必要と考えている。 自宅でのゲーム利用環境構築に関しては、クラウド上のサーバ構築は完了したが、ネット環境整備や自分で操作する際の抵抗感など、利用者側の課題は依然としてある。使用方法に慣れている本サークルより被験者を募り、ヒアリングを行い、ゲーム側も設置、利用方法に改良を加え、容易に自宅で実施できる方法を確立する必要がある。 開発中の『起立の森』について、既存のゲームで課題であったセンサーの感度も改良され、クラウドにも対応し、さらなるコンテンツ利用活性化の準備は整った。共同研究先の病院と議論し、ゲーム性の追加、クラウドを用いたサービスなどの検討を実施している。
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今後の研究の推進方策 |
①自宅で実施可能な体制構築:バランス支援ゲーム『ロコモでバラミンゴonline』が、開発環境の変化で使用できないことが判明し、加えてバランス支援ゲーム自体が一人で行う際の安全面の確保が難しく、自宅利用は困難という意見も多く出された。よって、今後は新規に開発した『起立の森』をベースにタブレット等で簡易に使用可能なゲームを開発し、初年度に構築したサーバーシステムを用いて自宅での実施へと結びつける事を目指す。前半で、ゲーム制作を行い、後半では、スタッフによる検証を経た後、ロコモ運動サークルの参加高齢者から協力者5~6名を募り、インターネット環境・ハード・ソフトウェア一式を貸与し、実地検証を行こととする。 ②自主コミュニティ形成支援:3年目となるロコモ運動サークルを、新規で開発するゲームを追加し、月2回の開催で継続して実施する。現在の参加者に加え、サークルを牽引できるリーダーシップを取ることが可能な高齢者を募集し、サークル活動の自立化を目指す。現在サークルで利用しているゲームはインターネットに接続されていないが、『起立の森』完成後からオンライン対応のものと差し替え、自分の実施状況がサークル会場、および自宅でも確認可能にし、継続した運動と場所によらないコミュニティ強化を行う。自宅ゲーム実施が可能な協力者には、自宅・サークルでのデータ共有に関する意見や機能に対する要望等のフィードバックを得る。 ③コンテンツ(運動)の種類増加:ステップ運動をテーマとしたゲームを増やし、ゲームによるヘルスケアの強化を行う。ゲームデザインは研究分担者の村木教授および長尾病院スタッフと考案する。加えて、『起立の森』に失敗体験を持したゲーム性とクラウドを利用した新しいサービスを追加する。
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