研究課題/領域番号 |
16H01804
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研究機関 | 大阪芸術大学 |
研究代表者 |
中川 志信 大阪芸術大学, 芸術学部, 教授 (00368557)
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研究分担者 |
尾本 章 九州大学, 芸術工学研究院, 教授 (00233619)
川口 幸也 立教大学, 文学部, 教授 (30370141)
近藤 逸人 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (40361802)
大須賀 公一 大阪大学, 工学研究科, 教授 (50191937)
山中 玲子 法政大学, 能楽研究所, 教授 (60240058)
蔡 東生 筑波大学, システム情報系, 准教授 (70202075)
川西 千弘 京都光華女子大学, 健康科学部, 教授 (70278547)
行実 洋一 実践女子大学, 生活科学部, 教授 (70287027)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ロボット / 伝統芸能 / デザイン / 顔造形 / 動き / 音 / 文楽 / 比較文化 |
研究実績の概要 |
研究実績は以下の4項目になる。①サービスや文化ごとに受容されるロボットの顔と動きの関係性デザイン、②文楽人形の構造と動きのメカニズム、③文楽における音と動きの関係性、④伝統芸能の顔造形、これらの研究からロボティクス領域における定量定式化を行った。 ①においては、胴体の骨格が伸縮して文楽人形のように誇張表現が行える文楽ロボットを活用して、日本人と外国人への評価実験を行った。結果、日本人は全員高評価であったが外国人の評価は一律でなかった。また、顔造形においても先行研究の知見を取入れた人型ロボットの顔サンプルを用意して、日本人とドイツ人で評価実験を行った。結果、文化ごとに嗜好が異なり、特に自国民の顔に近い顔造形を好む傾向にあった。しかしながら、日本のアニメを見て育った20代前後のドイツ人は、日本人と同じ顔造形を好む傾向にあったことの発見は大きな成果であった。 ②では、文楽人形遣いの動作をモーションキャプチャなどで解析し、特許申請につながる発見があった。具体的には、主遣い左手の肘、手首、掌、指などの多関節を組み合わせて、想像できない駆使方法で文楽人形の微細な感情表現の動きを再現していることを探究できた。これらを設計構造図に落し込み実機製作し、ロボット構造の新理論とする。 ③でも、文楽の太夫、三味線の音データを解析し、音楽劇シーンだけでなく対話シーンにおいても「拍」があることが探究できた。これら仮説を立証すべく、文楽シーンごとの楽譜化と音楽ソフト使用の解析を行い新理論とする。 ④では、能面など伝統芸能の顔造形を分析し、複合感情の表情をつくる造形手法が理解できた。また多様な仮面研究を通して、目と口の造形が重要であることも理解できた。これらの成果を検証すべく、能面師と協働でロボットの顔造形を検討し、無色有機ELを採用して従来ロボットで表現できなかった目の表情変化(笑い目など)を試行する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
進捗状況は、やや遅れている。2017年度までに、文楽の芸のメカニズム解析が全て終了している全体計画を当初立てたが、①構造と動きのメカニズム、②動きと音のメカニズム、ともにロボティクス領域へ変換するところで遅れている。 具体的に①では、文楽人形の構造と動きをロボティクス領域への変換と、そのロボット構造試作の改良を行う内容である。②では、文楽人形のモーションキャプチャデータの周波数解析を通したロボティクス領域への変換である。 また、文楽の音をロボティクス領域へ変換することも、現状では未着手であるため、文楽の音の楽譜化・音楽ソフトによる解析を急ぎ完了させたい。 今後は、一次試作をして改良を重ねる時間を短縮して、最終試作のつくり込みの中で改良を重ねて精度を上げていく方策に変更する。 構造設計と制御設計、システム設計、動作解析からの新構造課題抽出、音(音場)設計と全体デザイン(動きとのシナジー効果)、これらを2018年度完成する文楽ロボット実機制作の中に取入れて、単年度で一気に基盤となる土台(文楽ロボットの完成)を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は、次の3項目に集中する。①人形遣いの匠の技から抽出した新構造の文楽ロボット実機製作、②動きと音の関係性、③複合感情の表情が認識できるロボット顔造形、これらを統合して2019年度に検証実験が行える体制づくりを行う。 ①においては、主遣いとの共同研究から、前研究成果の胴体伸縮構造に加え、首腕伸縮、胸関節追加、肩首6軸移動など、お化けのような動きをも表現できる文楽人形の基本構造が抽出できた。たかが人形芝居と先入観のある大人に対して、子供向けの人形劇では考えられないほど想像力をかき立てる大量の微細な動きを人形に取入れて表現で、その大人に錯覚を与え魅了する匠の技が理解できた。これにより、たかがロボットと思う人の見方を変えることができる。本研究では予算的制限から、これらの一部を文楽ロボット実機製作に反映させて、その錯覚効果を検証する実験を行う。 ②では、太夫と三味線の音について、その楽譜化と音楽ソフト解析で研究を進め、台詞の抑揚と効果音の最適な関係性や、台詞時にも拍があることを明らかにし実機に適用する。文楽では、三味線→太夫→人形遣いの流れで演じている。この匠の技を、ロボットにおける効果音→台詞→動きの流れに落込んで検証実験を行う。 ③でも、能面師と協働で、ロボットに最適で人を魅了する複合感情の表情がある顔造形を探究して制作する。①によりロボット身体動作量が多いため、能面のように、ロボットの顔は動かなくとも表情豊かに感じさせる顔造形手法を確認する。加えて、おかめなど笑目の伝統仮面は多く、無色有機ELを採用してロボットで笑目などを試行してみる。 2018年度で文楽ロボット実機本体(顔も含めた)と、それに動きと音の基本デザインを取入れて完成させる。2019年度以降は、この伝統から創造した実機に、現代のサービス所作を適応させ人型サービスロボットとしてのあるべき姿を追求する。
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