研究課題/領域番号 |
16H01804
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研究機関 | 大阪芸術大学 |
研究代表者 |
中川 志信 大阪芸術大学, 芸術学部, 教授 (00368557)
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研究分担者 |
尾本 章 九州大学, 芸術工学研究院, 教授 (00233619)
近藤 逸人 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (40361802)
蔡 東生 筑波大学, システム情報系, 准教授 (70202075)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | デザイン / ロボット / 音のデザイン / 動きのデザイン / 文楽 |
研究実績の概要 |
2018年度に注力した文楽の音と動きの感情表現メカニズム研究を通して、その法則を明らかにすることができた。 文楽における音と動きの感情表現メカニズムにおいて,1点目は序破急の速度の3区分のテンポで舞台や人形の動き(加速度)を構成していること。2点目は,文楽におけるメロディ(旋律)の音高変化と,文楽人形の頭上下動や,語義を代弁する感情ごとに異なる特徴的な部位ごとの動きの変化点が同期することである。これらをロボットに適応することで,比較的容易に,誰もが,文楽人形のように感情豊かなロボットの表現が可能となると考える。 これらの成果から,ロボットの感情表現における演技演出デザイン法則の基軸として,先ず,そのロボットのテーマから作曲される音楽が重要であることが明らかになった。その音楽には,速度の3区分のテンポを取入れ,ロボットの音高変化と頭上下動や語義に適した部位ごとの動きを同期させることで,ロボットに緩急のリズム感が生まれる。結果,そのロボットと接する人や周囲の人々に,リズム感のある心地よさを感じさせることができる。そして,人はロボットからの意図や感情をわかりやすく認識できると考える。今後は実機ロボットへ,本研究の成果を適応することで,真に必要なロボットの感情表現メカニズムにおける演技演出デザイン法則になると考える。 さらに,本研究を通して,過去誰もが発見できず口承のみで文献も少ない伝統芸能文楽における音と動きの感情表現メカニズムを明らかにできたことの成果は大きいと考える。想像通り文楽演者の匠の技には,17世紀から定量的研鑽を重ねた伝統芸能の型があった。これらの型を継承して文楽が観客を魅了してきたように,これらの型適応した日本文化を象徴するロボットで世界中の人々を魅了していきたい。そのためにも,更なる文楽における音と動きの感情表現メカニズムの研究が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2017年度までに発見した新構造をロボットに落し込み、2018年度には、その実機ロボットで文楽の音と動きの感情表現メカニズムを実装して検証する計画であった。しかし、ロボットの開発遅延や特許申請などで、実験用ロボットの実機開発は大幅に遅れている。東京オリンピック開催時に東京お台場でのデモ出展にも期待されているため、研究としては大変厳しい状況である。 しかしながら、文楽における感情表現の音と動きのメカニズムを明らかにできたので、早急に文楽人形のメカニズムを取入れた新構造の実機ロボットを完成させて、文楽の音と動きを現代風にアレンジしたメカニズムを実装して、ロボットにおける新たな感情表現の演技演出デザイン法則を明らかにしていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
研究予算が当初の計画から300万円減額された分を、どのようにリカバリーするかが課題である。何らかの方策で対応策を考え、善処していくしかない。 開発が遅れている文楽人形のメカニズムを反映させた実機ロボットを完成させるため、実機製作の前に、モーションビルダーのCGソフトを活用して、新構造の関節部の動きを検証し精度を高める。新構造の関節位置や、骨格伸縮する量や角度などを詳細に検討する。これらの検証をクリアした後に、実機制作を行う予定である。 並行して、抽出できた文楽の感情表現における音と動きのメカニズムを、現代語で再現できるようシナリオ(話し言葉)を作成し、音楽も作曲して、先のCGロボットでシミュレーションを繰返し、検証を重ねる。 このシナリオの音節や章節、音楽には、速度の三区分である序破急の型を盛込む。現代で受容される話し言葉と音楽であるが、文楽の義太夫節が潜在するものにデザインする。 これら話し言葉と音楽とCGロボットのシミュレーションが、違和感無いレベルまで到達した時点で、実機ロボットでの検証実験へ移行する。重力のある実空間での実機ロボットでの検証実験は、CGロボットと異なり多くの制約があると予想している。これらの課題解決を図るプロセスや、結果の美しい音と動きのデザインを通して、ロボットにおける感情表現の音と動きのメカニズム、つまりロボットにおける演技演出デザイン法則が抽出できると考えている。これらCGロボットと実機ロボットにおける演技演出デザイン法則は、特許申請を考えている。 当初の目標通り、東京オリンピック開催時に、お台場で開催されるロボット展示会の候補に声がかかっている。何とか、その場で発表して、国内外の来場者を被験者として、比較文化視点で、このロボットの評価実験を行う構想である。
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