研究課題
本研究では、異分野の専門家がチームを組み、細胞内毒性終末糖化産物(toxic AGEs, TAGE)の生成/蓄積と各種細胞障害との関連性を解明し、生活習慣病の発症・進展の新たな予防概念に関する情報を広く社会・国民に提供して、健康寿命の延伸につなげることを最終目的とした研究を遂行している。平成29年度においては、1)ヒト株化肝実質細胞内TAGEの生成/蓄積が肝細胞障害を引き起すメカニズムを詳細に検討した結果、細胞死に関与する分子がTAGE化を受けて不活性化する結果、肝細胞死が引き起こされることが明らかになり、これらの結果をSci. Rep.に公表した(逆井、高田、竹内)。また、細胞内微量TAGE量測定系を開発して、World J Gastroenterolに公表した(高田、逆井、竹内)。2)一方、TAGEはTGF-beta1の肝星細胞の活性化において細胞死を抑制することで、細胞外マトリックスの産生量を増加させて線維化に関連することが示唆される結果が得られ、継続検討中である(瀧野、研究協力者、竹内)。3)ヒトiPS細胞由来肝細胞内TAGEの生成/蓄積の実験に関しては、株化細胞内TAGE量検出の実験手技を習得し、現在、iPS細胞由来肝細胞内での微量TAGE量検出条件を継続検討中である(松永、研究協力者、高田、竹内)。4)ヒト株化神経芽細胞腫細胞では、軸索蛋白質beta-チューブリンがTAGE化を受けている結果や、TAGEの生成/蓄積が軸索伸長阻害作用を示す結果が得られており、神経細胞内TAGEの生成/蓄積によって軸索変性や軸索輸送の異常が引き起こされる可能性が見出されている(郡山、古川、竹内)。5)ラット心筋由来株化細胞内TAGEの生成/蓄積が心筋拍動の停止に続いて心筋細胞死を引き起こすことを見出し、詳細なメカニズムを解明中である(高田、竹内)。
2: おおむね順調に進展している
研究は、当初の計画通りに遂行中である。
研究代表者は、密な連携のもと研究分担者及び研究協力者の専門分野を活かし、研究計画を円滑に展開できるような共同研究の体制を構築し、計画通りに研究を遂行する。平成29年度に得られた結果を元に、30年度は以下の研究計画を継続して遂行する。1)ヒト由来株化肝細胞や初代培養肝細胞の他、肝星細胞等における細胞内TAGE生成/蓄積と肝細胞障害メカニズムの詳細を解明する。また、NASHモデル動物の肝臓内TAGE蓄積と肝細胞障害との関連を検討する(実施者:逆井、高田、竹内)。さらに、肝星細胞内TAGE生成/蓄積による細胞死の抑制と細胞外マトリックス産生量の増加との関連も解明する(実施者:瀧野、研究協力者、竹内)。2)ヒトiPS細胞由来肝細胞内の微量TAGE検出系を作製して、細胞内TAGEの生成/蓄積量と肝細胞障害の関連を詳細に検討する(実施者:松永、研究協力者、高田、竹内)。3)ヒト由来株化神経細胞内でのチューブリンのTAGE化と神経軸索変性との詳細を解明する。また、神経細胞と密に連絡を取っているアストロサイトにおける細胞内TAGE生成/蓄積と神経細胞障害の関連を解明し、TAGE化蛋白質の同定を行う(実施者:郡山、古川、竹内、研究協力者)。4)ラット心筋由来株化細胞における細胞内TAGE生成/蓄積と心筋細胞障害の関連について詳細なメカニズムを解明する(実施者:高田、竹内)
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すべて 雑誌論文 (16件) (うち査読あり 15件、 オープンアクセス 9件) 学会発表 (23件) (うち国際学会 1件) 備考 (4件) 産業財産権 (1件)
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