研究課題/領域番号 |
16H01812
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大島 義人 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (70213709)
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研究分担者 |
山本 仁 大阪大学, 安全衛生管理部, 教授 (20222383)
村田 静昭 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (50157781)
宮崎 隆文 岡山大学, 安全衛生推進機構, 教授 (70260156)
富田 賢吾 名古屋大学, 環境安全衛生推進本部, 教授 (70422459)
百瀬 英毅 大阪大学, 安全衛生管理部, 准教授 (80260636)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 科学教育カリキュラム / 環境安全学 / リスクアセスメント / 実験研究 / 行動科学 / 共有性 |
研究実績の概要 |
化学物質ユーザーの危険有害性評価軸の抽出:理系から文系の学部生や大学院生を対象に、様々な化合物の構造式を提示し、そこから判断される物質の危険有害性を5 段階で評価する形式のアンケートを実施した。②実験事故発生メカニズムに関する行動科学的解析:学生の実験作業の観察から、実験台上で有機溶剤が蒸散する可能性が高い位置は、実験台上面から20~30と70~10cmあたりにあることが推察された。有機溶剤蒸気への暴露や実験操作ミスによる種々の事故に対するリスク軽減措置は、実験台上を三次元として捉え、対策を施す必要性があることを示した。③実験室ユーザーの安全評価項目の認識に関する解析:これまでに収集した実験室における事故事例を解析し、実験室ユーザーが定期的に行う安全点検の項目との関連性について調査を行った。④作業の連続性によるリスクへの影響に関する検討:学生実験の様子を撮影した映像データを用いて、各々の実験作業の巧拙を予測するモデルを作成した。その結果、このモデルによってある程度再現できるものの、予測精度の向上のためには別の評価軸を検討する必要性が示された。⑤実験作業の非定常性に関する検討:実際の実験室を対象に作業者の動線について解析を行い、実験行動に関する合理性について検討を行った。その結果、実験作業を遂行するための必要最低限の移動に比べて、実際の実験者では移動距離や移動経路が異なっており、実験作業の非定常性を検討する上で、実験の都合や実験者のパーソナリテイ等を考慮する必要性が示された。⑥実験室の共有に伴うリスクの解析:事故事例を収集し、実験室の時間・空間的共有が要因となっているものを抽出し、それを人・モノ・作業環境の組合せで整理し、共有のリスクについて検討を開始した。 ⑦以上の検討結果を用いて、具体的なリスクアセスメント手法としての可能性を議論し、現場への実装の準備を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
化学物質ユーザーの危険有害性評価軸の抽出の検討については、アンケートの化合物の選定を終え、理系から文系の学生に対して実際にデータ収集を開始し、概ねスケジュール通りに進んでいる。実験事故発生メカニズムに関する行動科学的解析については、様々な作業が行われる実験台に着目し、そこで行われる作業を行動科学的に捉え、実験台における化学物質を用いた作業におけるリスクについて検討を終えた。一方で実験者の生体指標である脈拍、心拍、活動度についての検討はH29年度に実施予定であったが、H30年度に実施することに変更した。実験室ユーザーの安全評価項目の認識に関する解析については、予定通り複数大学から収集した情報を元に解析を進めており、その解析結果を元にした現行の問題点の抽出を行えている。作業の連続性によるリスクへの影響に関する検討については、学生実験(有機化学実験)を対象とし、実際の実験作業のやられ方を解析することで、作業の連続性によるリスクへの影響について予定通り検討を開始し、一定の成果が得られている。実験作業の非定常性に関する検討については、実際の実験室における実験者の動線について実験作業を含めた形で解析することのより、実験行動の合理性から実験作業の定常性・非定常性について検討を進めることができた。実験室の共有に伴うリスクの解析については、一般に公開されていないために入手することが困難な事故情報について、(分担者の協力によって)収集および解析の目途が立った。このようなことから、全体としてはおおむね予定通り順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
化学物質ユーザーの危険有害性評価軸の抽出:回収したアンケートデータを学年及びカリキュラム、分野等を考慮し、統計的手法である因子分析を用いて化学物質の危険有害性に関する評価軸を抽出する。実験事故発生メカニズムに関する行動科学的解析:被験者の実験中の生体指標のリアルタイム計測データをもとに、その値の変化と作業状況の関係性を解析することにより、実験中の実験者自身の正常あるいは異常な状態とのリスクの関係を検討する。実験室ユーザーの安全評価項目の認識に関する解析:安全点検項目を実際に起きた事故から確認できる不適事項との照合や、複合的なリスクの調査等を通じて評点化し、実際の安全巡視時の評価結果を統計学的に解析することで、内在するリスクを総合的に評価し、合理的なリスクアセスメント手法として提案する。作業の連続性によるリスクへの影響に関する検討:新たに学生実験(有機化学実験)の様子をビデオで撮影し、現在検討中の実験行動のモデルの改良について検討を行う。実験作業の非定常性の検討:引き続き実際の実験室での動線情報を取得し、複数の実験者が空間を共有している状況での相互への影響について検討を行い、これらの状況と実験室のリスクについて評価を行う。実験室の共有に伴うリスクの解析:気流解析について検討する一方で、大学で報告されている事故事例から、実験室の時間・空間的共有が要因となっているものを抽出し、その結果を人・モノ・作業環境の組合せの観点で整理することで共有のリスクについて検討する。 個々の検討項目の結果を用いて、具体的なリスクアセスメント手法としての可能性について議論を行い、現場への実装へ展開する予定である。
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