研究課題/領域番号 |
16H01846
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
川村 隆一 九州大学, 理学研究院, 教授 (30303209)
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研究分担者 |
竹見 哲也 京都大学, 防災研究所, 准教授 (10314361)
川野 哲也 九州大学, 理学研究院, 助教 (30291511)
早稲田 卓爾 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (30376488)
前田 潤滋 九州大学, 人間環境学研究院, 名誉教授 (40128088)
飯塚 聡 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 水・土砂防災研究部門, 総括主任研究員 (40414403)
吉田 聡 京都大学, 防災研究所, 准教授 (90392969)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 気象災害 / 海象災害 / 台風 / 爆弾低気圧 / 災害ハザード |
研究実績の概要 |
領域雲解像モデルを用いた高解像度シミュレーションから、秋台風の発達・維持に関しても遠隔海域からの水蒸気流入が大きなインパクトを与えることを示した。また黒潮上で急発達する温帯低気圧中心近傍のメソフロントが豪雨ハザードに影響を与えていることを見出した。温帯低気圧発達予測では、気象庁全球客観解析データJRA-55Cの解析値と第一推定値を用いて、爆弾低気圧の発達率予測が、日本南岸から黒潮続流域の海面水温上昇に伴う積雲対流性降水増加によって、近年大きくなっていることを見出した。 京都市や大阪市の実在市街地の建物データを組み込んだLESモデルを用いて、強風時の風速条件を与え、乱流特性と風速変動が建物の配置や高さの違いに応じて異なる振る舞いを示すことを定量的に調べた。また2017年8月9日に九州北部に発生した突風状況を気象官署とNeWMeKでの地上観測記録を用いて,当時移動中の降雨帯の前方に発生したガストフロントによるものである事を同定した。 大気海洋波浪結合モデルを用いて、2018年1月に大西洋北東部で発生した爆弾低気圧を対象に波浪モデルのオンオフ感度実験を行ったところ、波浪が十分発達したエリアでは海面粗度が減少し、表層風速の増加が認められた。 近年の北海道の暴風雪頻発の要因となっている南岸低気圧の北進のメカニズムを呈示した。20世紀末頃に起こった熱帯大気海洋結合系のレジームシフトに関連して亜熱帯ジェットに沿うロスビー波の波束伝播が顕在化しており、 そのレジームシフトが南岸低気圧の数十年規模変動をもたらしていることが明らかになった。 爆弾低気圧の強風指標作成のため、低気圧周辺の風速の規格化偏差と中心気圧の低下量を組み合わせるstorm indexを検討した。日本に影響を与える強風としては、主に低気圧中心に向かう寒気の流れ(CCB)の上の規格化した風速が重要なことが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
爆弾低気圧の発達率予測、大気海洋波浪結合モデルによる海上風速予測の研究が順調に進展している。また近年の北海道の暴風雪頻発の要因となっている南岸低気圧の数十年規模変動の解明は、爆弾低気圧起源の暴風雪ハザードの近未来予測研究に貢献する成果である。 実在市街地の建物データを組み込んだLESモデルを用いて、台風上陸前後の市街地高層ビル周辺の突風の定量的評価に成功した。台風起源の暴風ハザード研究に貢献する成果である。 台風に伴う暖湿気流によって極端現象(線状降水帯による集中豪雨等)がしばしば発生するが、2017年7月九州北部豪雨時の線状降水帯の発生・維持過程を調査したところ、下層風場の強い変形が重要であり、従来から指摘されてきた発生プロセスとは大きく異なる事が見出されている。台風の遠隔影響による豪雨発生の予測研究に寄与する副次的な成果も得られている。
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今後の研究の推進方策 |
①爆弾低気圧に関しては引き続き水平解像度2km以下の高解像度シミュレーションを実施し、ストーム中心近傍のメソフロントの形成機構を調査すると同時に局地的豪雨・大雪への影響を評価する。また、気象庁大気再解析データJRA-55Cの解析値と第一推定値を用いて、北東太平洋の爆弾低気圧の予測バイアス長期変化の要因を解析し、気候変化が爆弾低気圧の予測精度に及ぼす影響を明らかにする。台風に関しては大型台風が多い秋台風の急発達の環境場について、遠隔海域からの水蒸気流入及び鉛直シアの相対的な役割を評価し、台風強度予測の改善への貢献を目指す。 ②建物解像LESモデルを用いて、台風など強風時の気象条件における都市内部での風速変動の数値シミュレーションを行い、建物配置の幾何学的特性に応じて生じる風速変動の特徴を整理してまとめ、都市における暴風ハザードを定量的に評価する。また、風工学的視点で「突風」の定義を見直し、高密度観測システム(NeWMeK)の記録データを用いて突風の評価時間と観測記録の仕様の影響を検討する。 ③大気海洋間フラックスの波浪方向スペクトル依存性をラージエディシミュレーションにてモデル化し、大気海洋波浪結合モデルを用いて、爆弾低気圧・台風下での波浪方向スペクトル影響を評価する。 ④近年の北海道の暴風雪頻発の要因となっている南岸低気圧の数十年規模変動について、地球温暖化がどの程度寄与しているのか大規模アンサンブルデータd4PDFを用いて定量的に評価する。また長期再解析データと領域数値モデルを用いて、寒候期に北海道地方を通過する際に構造を変化させ、暴風雪災害をもたらす低気圧に関する研究を行う。 ⑤爆弾低気圧に伴う強風リスクを評価するための指標と災害事例の対応調査ならびに予報モデルの結果の利用した強風リスクの予測可能性について調べる。
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備考 |
2019年1月14日北日本新聞朝刊:フィリピン海水温上昇 道内の暴風雪倍増招く「南岸低気圧」接近しやすく 九大チーム分析 2018年6月21日西日本新聞朝刊:九州豪雨 線状降水帯の原因「特異」 九州大研究班が解析
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