研究課題
超高磁場MRIによる可視化の高性能化では、ハード面では高性能コイルの更新をし、ソフト面では、1細胞レベルでの2次元的な細胞追跡を進化させ、3次元的に追跡できるようにした。細胞追跡では、脳虚血炎症部分を作り、健常部分と虚血炎症部分の細胞の動きを定量的に評価できるようにし、動きが全く違うことも示すことができた。新たな免疫現象可視化のため、ステルス性の新規プローブを用いた。粒子状の造影剤は貪食細胞に取り込まれやすいが、表面処理により、末梢マクロファージや肝臓クッパー細胞のような貪食細胞に貪食されにくくすることができる。この処理により貪食細胞で覆い隠されて見えていなかった免疫現象の可視化や、マクロファージが認識しない物質でも認識できる細胞を可視化できる可能性がある。新規のステルス性磁性粒子は、末梢マクロファージや肝臓クッパー細胞への取り込みが殆ど無いが、腎臓には特異的な造影効果を持つことが分かった。詳細MRIで、新規ステルス性磁性粒子は、特に、糸球体に分布することが明らかとなったが、局在を組織染色や電子顕微鏡レベルで調べたところ、糸球体のメサンギウム細胞に取り込まれていた。メサンギウム細胞は、末梢マクロファージや肝臓クッパー細胞が認識しない物質を認識し取り込んでいた(Magn Reson Med Sci 2017)。中枢神経系・免疫系・内分泌系のクロストークは、精神科・神経内科においても重要であるが、まだまだ情報が乏しく、我々はラットやマウスを用いて免疫系を刺激するいくつかの実験系を構築し、中枢神経系を超高磁場MRIで追跡した。母胎への少量のリポポリサッカリド投与では、子の生後の一時期に、海馬あたりに異常が見られることが分かった。このように超高磁場MRIを用いて、今まで可視化できなかった生の免疫ダイナミズムがどんどんと可視化できてきている。
2: おおむね順調に進展している
超高磁場MRIのハード面・ソフト面の高性能化並びに新たな造影剤の検討によりどんどんと新たな情報が可視化できてきている。非侵襲的な1細胞レベルでの3次元的な細胞追跡を主題とした学会発表では最優秀賞(前発表で一人のみ)を受賞したし、正常なメサンギウム細胞は、マクロファージが認識しない微粒子を認識し取り込む機能があることも発見した。また、ラットを用いた実験ではあるが、軽いレベルの母胎感染でも、子ラットの脳へ影響が及ぶ可能性があることを経時的に子ラットをMRIで追跡撮像する事で示すことができた。また、免疫系が記憶や情動へも影響していることを示すこともできてきた。成果の評価も高く、また、新たで重要な知見がどんどんと得られている。
順調に成果を出せており、徐々に、対象を広げる予定である。様々な因子のノックアウトやノックインマウスも考えられるが、特に、免疫系と中枢神経系の絡みとして、精神神経疾患モデルマウスも用いていく予定である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (6件)
Magn Reson Med Sci
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