研究課題
超高磁場MRIによる非侵襲的詳細イメージングを発展させると共に、新たな免疫ダイナミズムを可視化できる可能性のある以下のような技術の開発を行った。(1)現在の医療においてガンの克服とともに痛みの克服は、最重要な課題である。ガンとともに、痛み・慢性疼痛においても、免疫系が重要な役割を果たしていることが示唆されてきたが、まだ詳細は明かではない。そこで、実験動物での我々の可視化技術を用いて、痛みに関連した免疫細胞の動態追跡に着手した。開発してきた中枢神経系組織での末梢マクロファージのイメージング技術を発展させ、慢性疼痛モデルに応用した。詳細な画像化を検討するため、ex vivo でのイメージングを先行させ、慢性疼痛モデルの脳での免疫細胞1個レベルでの追跡が可能であることを示せた。(2)高感度磁気共鳴法を用いた非侵襲的な手法において、炎症に伴う構造変化、浮腫、軸索変性、免疫細胞動態など多種の情報を可視化してきた。日常的な体調の評価として、血圧、心拍とともに、体温が用いられており、インフルエンザや現在の新型コロナウイルスによる感染・炎症時にも、発熱は重要な情報となる。温度に関しては、口腔、腋窩とともに、簡易的ではあるが、赤外線センサーで体表面の温度が測定できる。しかしながら、最も重要と思われる、脳の内部や肝臓などの体内深部の温度の測定は難しく、深部温の代用として、食道温や直腸温が用いられるのみである。炎症・発熱時の脳・肝臓などの内部温度の測定は、未だ侵襲的な方法でしか測定できていない。わたしたちは、磁気共鳴法による、非侵襲的深部温度測定法を開発してきており、この手法を発展させた。3Tと7Tのヒト用磁気共鳴装置を用いて、ボランティアの脳の数か所で、温度測定できるようになり、生理的条件下でも、ダイナミックな脳内温度の変化を検出でき、炎症時の深部温度の変化も追跡できると思われた。
2: おおむね順調に進展している
超高磁場MRI技術を進展させることができ、実験動物とともに健常人ボランティアを対象として、過去には可視化・実現できていなかった先端的な情報を次々に引き出せている。これら技術は、多面的な免疫ダイナミズムの可視化を可能とするものであるが、様々な方面へも活用可能であり、共同研究も多い。ヒトへの展開も視野に入れているが、ヒト用7T超高磁場MRIを用いた研究も始めることができ、いくつかの新たな情報を取り出せた。
実験動物のみならずヒト用の超高磁場MRIにおいても、詳細な可視化や新たな画像による評価など興味深い結果を順調に次々と出せている。磁気共鳴法は、動物からヒトへのトランスレーショナルな研究も可能であり、ヒトを含めた技術開発も進展させる。特に、中枢神経系と免疫系とのクロストークに係わる研究を更に進展させたい。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 5件)
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