実験動物を対象とした11.7T超高磁場MRIによる高分解能・高感度計測の推進と共に、ヒトへの応用を視野に入れた研究も進めた。 (1)がんの克服、痛みの克服、痴ほう症や老化の解明と抑止は重要な課題であるが、これらにも免疫系の関与が重要視されており、免疫細胞に着目した研究を進展させた。数種のモデル実験動物の免疫細胞をin vivo で標識し、超高磁場MRIにより、免疫細胞の1細胞レベルでの可視化を行い、解析を進めた。 (2)数種の炎症モデル動物を用いて、スペクトロスコピー側での活用を検討した。自己免疫疾患である多発性硬化症のモデル動物であるEAEマウスを用いた研究では、超高磁場MRIにより測定できるようになった脳内代謝物質が、病態の経過に伴い変動することが初めて分かった。形態学的変化が確認できる以前においてスペクトル側での変化が確認できており、有用なバイオマーカにできると考えられた。イメージング側では、骨格筋、血管、消化管、内臓、椎体、などの炎症を可視化し評価した。 (3)磁気共鳴法は、ヒト臨床では、不可欠な診断法となっているが、動物でもヒトでも同様な撮像法や解析法が利用できる可能性がある。本研究課題の一部では、実験動物とともにヒトの健常ボランティアからも同様な情報を得て解析できるようにでき、トランスレーショナルな研究に直結できると考えられた。本研究課題による装置の高性能化や造影剤・測定法の工夫や活用により、数種の実験モデル動物において、生体内深部の免疫細胞1細胞レベルでのダイナミックな動きを追跡できるようになった。また、多数の炎症モデル実験動物において、炎症の詳細な可視化や、病態変化に伴うダイナミックな炎症の変化も追跡・解析できるようになった。
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