研究課題/領域番号 |
16H01850
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
鈴木 淳史 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (30415195)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 肝臓 / 細胞分化 / ダイレクトリプログラミング / 再生 |
研究実績の概要 |
肝臓を構成する肝細胞は移植医療や創薬研究において利用価値の高い細胞だが、生体組織から採取できる細胞数には限界があり、培養下での増殖や維持も難しい。この問題に対し、我々は、マウスの線維芽細胞に2つの転写因子を導入することで、肝細胞の性質をもった細胞(induced hepatocyte-like cells: iHep細胞)を作製すること(ダイレクトリプログラミング)に成功した。作製したiHep細胞は肝細胞の形態的特徴や遺伝子・タンパク質発現を有し、肝細胞特有の機能をもったまま培養下での増殖や維持、凍結保存が可能であった。また、肝機能不全で死に至る高チロシン血症モデルマウスの肝臓へiHep細胞を移植すると、肝細胞として障害を受けた肝臓組織を機能的に再構築し、マウスの致死率を大幅に減少させることが可能であった。このように、皮膚から作製できて増殖や保存が可能なiHep細胞は、ヒトに応用された場合、機能的な肝細胞として医療への応用が期待できる。iHep細胞はその特徴として未熟な性質を有し、培養下において増殖能が高いため、医療応用に必要な細胞を用意できるメリットを有する。しかしながら、その反面、肝機能レベルが生体肝臓の肝細胞よりも低い。そのため、iHep細胞を真に医療の現場で利用するためには、iHep細胞の二次的な分化誘導、すなわち肝細胞としての機能的成熟を誘導する必要がある。そこで本研究では、iHep細胞の機能的成熟を誘導する方法を開発するとともにその分子機構の解明を目指して研究を行う。平成28年度では、iHep細胞の培養方法を再検討し、最も効果的にiHep細胞の機能的成熟を誘導できる条件を見出した。また、当該方法においてiHep細胞が成熟する際に重要なシグナル伝達経路のひとつを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究では、iHep細胞の機能的成熟を誘導可能な培養条件が確立されただけでなく、iHep細胞が成熟する際に重要なシグナル伝達経路の解析も進んでいる。このことから、iHep細胞の機能的成熟誘導とその分子機構の解明に向けておおむね順調に研究が進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、生体内外の解析系を用いてiHep細胞の機能的成熟度をさらに詳しく解析するとともに、同定したシグナル伝達経路の解析を進めることで、iHep細胞の機能的成熟をもたらす分子機構の解明を目指す。また、得られた情報をヒトiHep細胞に応用し、医療応用への展開を模索していく。
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