研究課題/領域番号 |
16H01851
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
辻 孝 国立研究開発法人理化学研究所, 多細胞システム形成研究センター, チームリーダー (50339131)
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研究分担者 |
武田 啓 北里大学, 医学部, 教授 (20197297)
榊原 俊介 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (50444592)
浅川 杏祐 国立研究開発法人理化学研究所, 多細胞システム形成研究センター, 研究員 (60747187)
寺師 浩人 神戸大学, 医学部附属病院, 教授 (80217421)
佐藤 明男 北里大学, 医学部, 特任教授 (80255356)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 三次元人工皮膚 / 三次元皮膚器官系 / バイオスキン / 毛包 / 器官再生医療 |
研究実績の概要 |
平成28年度の研究は、研究計画に沿って進捗し、下記の成果を得た。 1) 皮膚器官系の生体外構築研究:三次元皮膚器官系の基礎となるヒト表皮角化細胞とヒト皮膚線維芽細胞を用いて、ヒト皮膚に類似した4層の表皮層と2層の真皮層をからなる三次元人工皮膚の構築方法を開発し、皮下脂肪層を含む三次元皮膚器官系の構築を可能とする検討を引き続き継続している。さらに、成体マウスから採取した成長期毛包を組み込み、キメラ三次元皮膚器官系を構築した。一方、皮膚器官系の完全な再構築に向けて再生毛包原基を作製するため、毛包上皮幹細胞の生体外増幅系の開発を進めた。毛包上皮幹細胞は、WntやBMPシグナルの制御により、皮脂腺を含む毛包全体を再生可能な毛包上皮性幹細胞の増幅に世界に先駆けて成功した。また、胎児細胞由来再生毛包原基の培養条件の最適化を進めることにより、毛包原基の初期発生の誘導条件を決定し、毛包の成熟に必要な培養条件の検討を継続している。 2) 細胞シーズの開発研究:これまでにマウスiPS細胞から胚様体を誘導して生体内移植により機能的な皮膚器官系の一体形成に成功しており、この方法をもとにhiPS細胞からの皮膚器官系の誘導について検討を進めている。また機能的な三次元人工皮膚の構築に成功したことから、iPS細胞からの上皮細胞、並びに線維芽細胞の個別の誘導モデルの開発に向け、調査を進めた。 3) 皮膚器官系の機能評価研究:1)に記載した三次元人工皮膚は、天然皮膚と同様に細胞外マトリクスの発現、レチノイン酸による上皮層の肥厚やヒアルロン酸合成酵素の産生が認められるほか、TGF-β刺激により真皮層におけるコラーゲンやエラスチンの合成誘導が惹起されるよう最適化した。一方キメラ人工皮膚器官系は、移植毛包の上皮組織と人工皮膚の表皮組織が接続し、毛幹が伸長可能であることを実証し、機能評価を継続して進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の年度計画に対して、研究項目1)では機能的な人工皮膚、並びにキメラ人工皮膚器官系の開発に成功し、順調に推移している。研究項目2)については生体機能を有する人工皮膚の開発が可能であることから、iPS細胞から上皮細胞、並びに線維芽細胞の誘導が効果的であることが判明した。iPS細胞からの機能的な皮膚組織の誘導は世界的に見ても新規な研究課題でもあり、引き続き技術開発を進める。研究項目3)において、三次元人工皮膚が天然皮膚と同様の機能を有するほか、キメラ皮膚器官系が組織学的にも、機能的にも天然の皮膚と同様の効果が認められたことから、本研究課題の概念実証ができたものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、項目1)は平成28年度に引き続き真皮層深部に脂肪層の構築を進めるとともに、ヒト毛包から採取し増幅した再生毛包原基、あるいは再生毛包を組み込み、再生毛包と皮脂腺を有するヒト三次元皮膚器官系の構築を進める。項目2)については、iPS細胞から上皮細胞、並びに線維芽細胞の誘導に集中して研究を推進する。項目3)については引き続き、毛周期の各段階の毛包を組み込んだ皮膚器官系をモデルに、毛幹伸長や毛周期を駆動する生理活性物質を探索し、再生毛包原基を組み込んだ三次元皮膚器官系の構築、並びに機能評価を進めていく。項目4)、項目5)については、研究計画に従って1)-3)の進捗を達成し、平成29年度後半から実施できるよう研究を推進していく。
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