研究課題
これまでに,ポリ(カプロラクトン-グルコール酸)共重合体(PCGA)とPEGからなるトリブロック共重合体(tri-PCG)を基盤とする温度に応答してゾルからゲルへと転移するインジェクタブルポリマー(IP)系において,ゲル化時に共有結合架橋を生起する製剤の開発に成功してきた。本研究では,両末端をアルデヒド化したプルロニック(PL-CHO)をこの系に混合し,シッフ塩基形成による組織接着性を付与した新規IPシステムを開発し,その医療用材料としての評価を行った。市販食用肝表面にIP製剤を塗布し,ゲル化させた後に密着させ,せん断方向に引っ張り試験を行い,接着強度とPL-CHO添加量との関係を調べた。その結果,想定通りPL-CHO添加量が多くなるほど接着強度が上昇することが分かった。共有結合架橋を生じるIP系についても同様に,PL-CHO添加による接着強度の上昇が見られた。市販のマウス動脈を用いて,IP製剤の血管塞栓効果を検討したところ,組織接着型IP製剤の方が,従来のIPよりも高い血管塞栓効果を示した。一方,IP製剤とキマーゼ阻害剤との併用製剤について癒着防止効果を検討したところ,IP製剤中にキマーゼを混合するよりも,IP製剤と併用して,キマーゼ溶液を散布する方が効果が高いことが分かった。再生医療への応用を意図して,脂肪由来幹細胞(AdSC)をゲル内に封入した後に,サイトカイン分泌および未分化マーカーの発現をRT-PCR法を用いて調査した。その結果,ゲル内で未分化能が維持されていることを確認した。さらに,本IP製剤を使用した麻酔効果の持続について検討した。麻酔薬レボブピバカインとIPを混合した製剤において,薬剤の徐放効果を確認した。以上の結果より,本開発IP製剤の,癒着防止材,血管塞栓材,再生医療用材料,徐放型DDSなどの医療用材料としての有用性が示された。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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