研究課題/領域番号 |
16H01855
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
羽石 秀昭 千葉大学, フロンティア医工学センター, 教授 (20228521)
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研究分担者 |
中口 俊哉 千葉大学, フロンティア医工学センター, 教授 (20361412)
大西 峻 千葉大学, フロンティア医工学センター, 助教 (30706833)
関根 雅 千葉大学, フロンティア医工学センター, 技術職員 (70769182)
川平 洋 千葉大学, フロンティア医工学センター, 准教授 (90447285)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | OCT / 分光 / SDF / 微小循環 / マルチモーダル |
研究実績の概要 |
SDF撮影において、血管内酸素飽和度を推定する方法について詳細に検討した。理論面ではモンテカルロシミュレーションによって誤差要因を検討するとともに推定精度の見積もりを行った。さらに酸素飽和度推定値の修正方法を考案して、血管ファントム実験を通してその有効性を確認した。また、提案方法をブタ小腸の微小循環像に適用して、概ね妥当な酸素飽和度マップを得た。 SDF撮影で得られた血流動画像に対して血流速を算出する画像処理手順も確立した。中でも取得した原動画像に対してロバスト主成分分析を適用することで血流を強調し流速の算出を容易にした点は新規かつ有用であった。さらにこれらの手法を小動物に適用した。この結果、敗血症モデルラットにおいて血流速が優意に減少し、その応答性は一般に指標として用いられている乳酸値よりも鋭敏である可能性が示唆され、医学的有用性も指摘することができた。 腫瘍マウスを用いた小動物実験にも着手した。これまで未経験であった担癌マウスの生成のノウハウを獲得し、その腫瘍部分の血管新生を画像化することにも成功した。 分光SDF撮影に関しては、まずワンショットマルチバンドカメラの諸特性を調査した。とりわけ、各バンドの分光特性の重なりの大きさを把握し、ウィナー推定によって重なりを除去する方法を試み、概ね良好初期結果を得ることができた。 OCTに関しては機器の納期の問題から、稼働開始が年度末近くになったため、統合システムの構築は29年度に行うこととした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下に示すとおり、AからDの4項目に分けて研究を進めている。Aの装置(ハードウェア)作成部分がやや遅れているものの他の項目は順調に進展しており、全体としては概ね順調と言える。 【A 撮像光学系の構築】SDF撮影系ではワンショットマルチバンドカメラの分光特性の把握とスペクトル推定を試行することができた。また、OCTと連動させるための機構の設計および部材の調達を行った。連動した装置の構築についてはやや遅れているが、29年度早期には実現できる見込みである。 【B融合像生成・画像解析】異なる焦点位置で撮った複数のSDF画像から血管抽出を行うアルゴリズムを構築し、血管ファントムに適用、さらにファントム内血液に対する酸素飽和度推定も行うことができた。 【C 酸素飽和度推定法の構築】光伝搬シミュレーションやファントム実験を通して、概ね予定どおり酸素飽和度推定方法の構築を進めることができた。 【D 動物実験】予定通り担がんマウスの作成、腫瘍部の微小循環の撮影が可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
【A 撮像光学系の構築】 SDF撮影系:28年度末に調達した高精細カメラを用いたSDF撮影系を新たに構築する。特に暗視撮影系を実現するための照明系を高精細撮影系に合ったジオメトリで設計・製作する。OCT連動撮影ステージの構築:SDFカメラと28年度終盤に納品されたOCT装置が同一の軸上をコンピュータ制御により移動可能な機構を構築する。広域収集ができるように、各装置ともXYZ軸の微細な移動を可能にする。 【B融合像生成・画像解析】OCT像からの血管抽出:OCT像から血管抽出を行うための半自動のソフトウェアを開発する。SDF広域画像の作成技術:XYステージの移動によって得られる複数枚のSDF画像をスムーズに貼り合せる技術を確立する。 【C 酸素飽和度推定法の構築】光伝搬シミュレーション:シミュレーションを行って、推定精度の見積もりや特性の理解を進める。またそれらの知見から精度向上のための方策を確立する。たとえば対象深度別の補正量の利用などが考えられる。C2ファントム実験:SO2を制御した牛血を細管に封入するなど物理ファントム実験を作成し、その撮影実験・SO2推定実験を通してシミュレーションの妥当性を検証する。 【D 動物実験】28年末までに担がんマウスの作成、腫瘍部の微小循環の撮影が可能になった。29年度はチャンバーを利用した撮影領域の固定法、安定的撮影法を確立する。
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