研究課題/領域番号 |
16H01861
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
橋田 充 京都大学, 薬学研究科, 名誉教授 (20135594)
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研究分担者 |
山下 富義 京都大学, 薬学研究科, 教授 (30243041)
樋口 ゆり子 京都大学, 薬学研究科, 講師 (40402797)
杉山 直幸 京都大学, 薬学研究科, 准教授 (50545704)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 安全性評価 / ドラッグデリバリーシステム / 薬物動態学 |
研究実績の概要 |
これまで、リポプレックスを投与したマウス肝臓のMS解析によって発現量が増大した3種類のタンパク質のうち、Protein AおよびCに着目することを決定した。本年度は、まずリポプレックス投与後、1時間にProtein AおよびCが上昇し、6時間までのあいだ徐々に発現が上昇するが大きな変動はないことを確認した。また、肝臓の切片の免疫染色において、肝臓全体に発現していることも確認した。Protein AおよびCのシグナルパスウェイから、その上流にある転写調節因子CREBおよびNF kappa Bのほか、いくつかの転写調節因子をリポプレックスによる毒性評価のマーカー分子の候補として選出した。既製品を入手できないものに関しては、転写調節因子の結合配列の下流にレポーター分子であるLuc2を配した、レポーターベクターを構築した。培養肝実質細胞にこれらのレポーターベクターをトランスフェクションし、炎症を誘発することが知られる9種類の化合物を添加してレポーターアッセイを行い、転写活性を評価できることを確認した。並行して、これらの転写活性を経時的にintravital imagingで評価することを目的に、経時的な変化のモデルとして肝実質細胞におけるカルシウムオシレーションを選択し、intravital imagingにより評価した。カルシウムセンサーY.C.3.6をハイドロダイナミクス法で肝実質細胞に発現誘導し、バソプレッシンを尾静脈投与した後、肝臓のintravital imagingを行ったところ、肝実質細胞におけるカルシウムオシレーションをFRETで評価できた。以上、本年度は、Protein AおよびCのシグナルパスウェイから毒性評価の指標として転写活性評価の対象を決定し評価用ベクターを構築するとともに、in vivoでの毒性評価確立のための基礎検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画では繰り返し投与の影響を評価する予定であったが、in vivoでの毒性評価システムとしての転写活性評価のためのベクター構築が遅れたため、繰り返し投与の影響の評価まで至らなかった。しかしながら、先に、intravital imagingによる経時的な変化のモデルとして、すでに肝実質細胞でカルシウムオシレーションの観察に成功した。これにより、ハイドロダイナミクス法により肝実質細胞へのベクターのトランスフェクションが可能であること、intravital imaging法の手技の確立を先取りできた。したがって、総合的に判断して概ね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
我々はこれまでに、リポプレックスをマウスの尾静脈より投与すると、肝臓において3種類のタンパク質の発現が優位に上昇することを明らかにした。また、リポプレックスをマウスの尾静脈より投与すると、血液中または肝臓組織中においてTNF alphaやInterferon gammaなどのいくつかの炎症性サイトカイン濃度が上昇することは、個別の論文ですでに報告されている。そこで本年度は、我々の同定した3つのタンパク質と、これまでの個別の報告から、いくつかの転写調節因子の活性に着目してレポーターアッセイ系を確立した。次年度は、マウスの肝臓にレポータープラスミドを発現させた後、リポプレックスを尾静脈内投与し、ルシフェラーゼアッセイによる転写活性の定量、および肝臓のintravital imagingによる転写活性の時空間変動の評価を行う。さらに、これまでに確立した方法を利用して、リポプレックス投与による炎症阻害分子のデリバリーによるリポプレックス誘発性炎症抑制法を確立し、安全性の高い遺伝子デリバリーシステムの構築に繋げる。
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