研究課題/領域番号 |
16H01869
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
七五三木 聡 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (20271033)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 視機能 / セロトニン / 刺激検出感度 / 神経修飾 |
研究実績の概要 |
運動情報の視覚的情報処理を担う背側視覚経路のニューロンの反応特性に基づいたヒトの視機能計測法として、ランダムに動くドット刺激の中から特定方向に動くドット刺激の運動方向を検出する運動方向検出課題を昨年度に開発した。今年度は、これを用いて競技者と非競技者を比較したところ、スポーツ競技者の運動視能は非競技者よりも有意に高く日々の訓練効果は、感覚情報処理にも生じていることが明らかになった。 身体運動時に脳内に分泌され、脳状態を変化させる神経修飾物質の一つにセロトニンがあるが、その機能的役割については不明な点が多い。特に、身体運動制御に関わる感覚情報処理から運動情報処理までのプロセスが、どのような修飾効果を受けるのかについてはよく分かっていない。そこで、視覚情報処理機能に及ぼす影響を調べるために、視覚刺激検出課題を学習させたラットのコントラスト感度を自由行動下で計測し、セロトニンの再取り込み阻害薬投与による脳内セロトニン濃度上昇の効果を検討したところ、コントラスト感度が上昇することが明らかになった。これは、明暗差が小さい見難い物体をより見えるように視覚情報処理を亢進させていることを意味し、スポーツ場面においても同様な効果が発揮されていると考えられる。麻酔下のラットの一次視覚野から単一ニューロン活動を記録し、セロトニンの再取り込み阻害薬の効果を検討したところ、自発発火や視覚応答に促通生あるいは抑制性の修飾作用を観察することができた。これらの修飾効果がコントラスト感度上昇に関わっていると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H29年度は、ヒトの視覚背側経路の機能評価方法の妥当性や再現性を検討するとともに、確立した評価方法を用いて、スポーツ競技者の機能評価を行うことが目的であった。それら全てを予定通りに実行し、スポーツ競技者が非競技者よりも視機能が高いことを見出すことができた。 動物実験については視覚刺激検出課題を用いた行動実験により、脳内のセロトニンが視機能を向上させることを示すことが出来たものの、課題遂行中の神経活動記録については、十分なニューロン数の結果を得ることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、腹側視覚機能計測システムを開発する。そして、H28-29年度に掛けて開発した背側視覚機能計測システムと併用することで、様々なアスリートおよび非競技者の視機能特性を視覚情報処理経路ごとに計測・評価する。また、動物実験においては、視覚刺激検出課題遂行中のラットの一次視覚野から神経活動を記録し、神経活動と視知覚との関係を直接的に調べるとともに、神経修飾物質およびその分泌を変動させる要因の影響を検討する。
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