研究課題
本研究の目的は、世界の瞬発系および持久系運動選手のゲノム全領域の塩基配列を次世代シークエンサによって決定し、遺伝子発現制御の特性、遺伝子産物の構造・機能に影響を与えるアミノ酸置換、さらにゲノムの構造変化を網羅的に解析することによって、運動能力に関連する遺伝的素因を解明することにある。骨格筋・血液細胞でのトランスクリプトーム・メタボローム等の解析結果との照合により、骨格筋の代謝的特性ならびに骨格筋・腱の強度に影響を与える多型、呼吸・循環系の適応能力に関連する遺伝的背景を明らかにすることができ、個人の特性に応じた競技種目の選択やトレーニング方法の改善などに役立てることができる。アスローム研究とは、 アスリートのためのマルチオミクス研究 “Multi-Omics Studies for Athletes”であり、ゲノム・トランスクリプトーム・エピゲノム・プロテオーム・メタボローム “genome, transcriptome, epigenome, proteome, metabolome”を包括的に解析する。Athlome Project Consortiumは具体的に4つの目標を掲げる。1) 世界の研究拠点の相互協力体制とバイオバンクを構築する。2) 運動能力、トレー ニングに対する応答、筋損傷易罹患性に関連する遺伝子多型を発見する。3) 探索的研究から得られた遺伝子マーカーの有用性を検証 ・確認する。4) 新たに発見された生物学的プロセスを理解するために遺伝子産物の機能解析を行う。
3: やや遅れている
過去に集積されたDNAの質が低いため、高度な塩基配列解析に適さないサンプルが含まれていた。今年度は研究者の所属研究機関の異動に伴い、新たな倫理審査を受ける必要が生じた。研究参加者から再同意を得て、新たに唾液DNAを収集することを決定した。西および東アフリカ出身の短距離走者と長距離走者1000人の全ゲノム塩基配列解析を目指している。このプロジェクトのフェーズ1はすでに開始されており、最高レベルの12人の短距離走者と12人の長距離走者(世界記録保持者、オリンピック選手、世界チャンピオン)のシークエンシングが行われた。フェーズ2(2016-2018)は、配列決定のためのサンプルサイズを100ゲノムに増加させることを含む。全ゲノム塩基配列決定を行う対象者は、2020年までに1,000に拡大される(フェーズ3)。このシークエンシングプロジェクトの重要な目的は、エリート東アフリカ選手と西アフリカ選手の遺伝子型分布を記録することにある。 1000 Athlomes Projectから生成される大量の遺伝子型データは、1)将来のパフォーマンス研究のための参照パネル、および2)医学における他の極端な表現型研究のためのガイドとして役立つと期待される。
保存されているサンプルからのDNAの再抽出、ならびに唾液などサンプルの再採取を行うこととした。倫理委員会の再審査が完了し、次年度は目標とするサンプル数を確保できる見通しとなった。全ゲノム塩基配列解析のコストが低下しつつあるので、解析できる試料数の増大が期待できる。
すべて 2019 2018 その他
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 5件) 備考 (1件)
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