研究課題/領域番号 |
16H01873
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
杉浦 元亮 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (60396546)
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研究分担者 |
本多 明生 山梨英和大学, 人間文化学部, 准教授 (80433564)
石原 眞澄 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, その他部局等, 研究員 (70759597)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 脳・神経 |
研究実績の概要 |
精神的な健康を自己管理するために、日常生活で容易に実践可能な「精神健康法」への注目が高まっている。健康法の効果には大きな個人差があり、その背景には精神機能の不全状態の質的個人差が想定される。申請者らは心理・認知神経科学的理論に基づいて、(1)精神状態の機能不全メカニズムが自己意識作用の悪循環のいくつかのパターンに分類される、(2)それぞれのパターンに対応して異なるタイプの精神健康法が異なるメカニズムによって効果を発揮する、と仮説を置いた。これに基づいて精神機能不全と精神健康法の効果の関係性と各脳メカニズムを体系化し、質問紙と脳活動計測を用いて事前に健康法の効果を予測するツール開発を試みる。そのために、主要な「不全―効果系」を網羅すると期待される数種類の異なるタイプの精神健康法を、MRIスキャナ内で実施可能な「介入課題」に改変し、課題実施中の脳活動を機能的MRIを用いて計測する。また介入前後の精神状態を質問紙と脳活動(安静時及び「評価課題」実施中の脳活動)によって計測する。最終的に不全―効果系の抽出と脳メカニズムの解明、効果予測質問紙・評価課題・モデル開発を目指す。 本年度は介入課題セットと精神状態評価ツールを調整し、介入fMRIデータを取得・解析、不全-効果系・メカニズム・予測ツールを検証した。具体的には、環境気温介入による情動・報酬系の関与の解明(学会・論文発表)、5分間の面接介入による対人関係意識調整脳メカニズム解明(学会発表)、評価・予測ツールとしての自己特性判断課題の妥当性検証(著書発表)や随伴性エラー課題の関連脳メカニズム検証(学会発表・論文投稿中)、環境気温に対する心理・行動反応の個人差質問紙尺度開発(学会発表)、高齢者を対象とした写真鑑賞介入プログラムの検討(学会・論文発表)、感謝介入の効果(学会発表)や、死の恐怖に対する脳反応(学会発表)検証等の実績を上げた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
介入課題セットと精神状態評価ツールの開発については質・量共に当初の予定を凌駕している。一方、そのせいもあって全体の結果を体系化し、検証するスケジュールに関しては予定よりやや遅延が見られている。これは研究の進捗に従って研究対象(健康法の種類と、その効果や背景となる精神機能状態の質的個人差)自体の全体像が明確化してきたことに伴う、研究計画の調整と位置づけるべきと認識している。均して概ね順調な進展と自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である30年度はこれまで2年間で解明・開発を進めてきた、不全-効果系・メカニズム・予測ツールの検証・改良を目指すとともに、研究の次フェーズへの展開に備える。介入課題と精神状態評価を用いた行動・脳計測実験を、対象を高齢者も含めた多様な被験者群に拡張するとともに、健康法の効果や精神機能状態の質的個人差に関する理解・モデルを更新し、介入課題セットと精神状態評価ツールのさらなる調整・新規開発と、今後の研究課題の整理を行う。
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