研究課題
睡眠調節や炎症の進展と終息に関与する脂溶性メディエーターであるプロスタグランジン(PG)D2の産生を司るリポカリン型(L型)と造血器型(H型)の合成酵素、及び、その情報伝達を行うDPとCRTH2の2種類の受容体の遺伝子欠損マウスを用いて、様々な生理機能における各合成酵素と受容体の関与を明らかにした。最終年度は、睡眠調節に関わる脳のL型酵素が分布するクモ膜、脈絡叢、オリゴデンドログリア、それぞれの細胞特異的L型酵素欠損マウスを作製して、L型酵素阻害剤SeCl4による睡眠抑制効果を調べた。その結果、クモ膜特異的欠損マウスだけがSeCl4による睡眠抑制を消失し、クモ膜のL型酵素が睡眠調節に重要であることを証明した。L型酵素は癌組織の血管内皮細胞で誘導され、癌増殖はL型酵素欠損で亢進しDP受容体作動薬投与で抑制したことから、PGD2が癌増殖のネガティブレギュレーターとして機能することを証明した。L型酵素とCRTH2受容体は線維芽細胞から脂肪細胞への分化で誘導され、PGD2は脂肪細胞分化に関与することを明らかにした。そこで、未分化脂肪細胞で発現するaP2遺伝子と成熟脂肪細胞で発現するAdipoQ遺伝子の2種類のプロモーターを用いて、脂肪細胞特異的L型酵素欠損マウスを作製して高脂肪食負荷試験を行った。その結果、未分化脂肪細胞からL型酵素を欠損させた場合のみ、体重増加が低下してインスリン抵抗性が改善した。この結果は新たな肥満予防の標的を示した。国内製薬企業と開発したH型酵素阻害薬TAS205を用いたデュシェンヌ型筋ジストロフィー患者を対象とした探索的第Ⅱ層臨床試験の結果がまとまった。その結果、24週間の投薬前後で下肢筋肉容積の減少が有意差を持って抑制されたが、運動機能の保護効果は認められなかった。新規H型酵素阻害薬の開発に有効な阻害薬結合部位の詳細なX線結晶構造を決定した。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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