研究課題
進化分子工学(細胞表層ディスプレイ技術)とペプチド構造構築理論を組み合わせることにより,細胞内送達を可能にし,細胞内タンパク質をターゲットとする分子標的ペプチド(中分子化合物)の新しい設計法を開発する。すなわち,強固な立体構造(ヘリックス・ループ・ヘリックス構造: HLH)をもつペプチドの細胞表層提示ライブラリーを構築し,標的タンパク質に結合するペプチドをスクリーニングする。得られるペプチドは立体構造を持っているので,生体内の酵素分解に対しても安定であり,抗体と同等の高い特異性と強い結合活性をもつ。この分子標的HLHペプチドを「マイクロ抗体」と呼ぶ。そこで,このペプチドを利用して,特定の細胞を標的し細胞内に効率良く送達される分子標的中分子の開発を行う。本研究によって,標的タンパク質が細胞内タンパク質にまで一挙に及ぶことになり,ケミカルバイオロジーの進展に貢献するとともに,医薬品開発においても対応可能な疾患の範囲が大きく広がる。平成30年度は,抗MDM2マイクロ抗体に膜透過性ペプチドであるポリアルギニンを導入し,細胞膜透過性および生物活性を検討した。その結果,蛍光を指標にした共焦点顕微鏡観察により,本マイクロ抗体の細胞膜透過性を確認した。また,抗VEGFマイクロ抗体-薬物複合体の合成し,細胞膜透過性および生物活性を検討した結果,細胞増殖阻害活性を観測した。この複合体は,受容体依存型エンドサイトーシスにより細胞内に移行し,細胞内でジスルフィド結合が開裂し,薬物を放出する。このマイクロ抗体-薬物複合体は,抗体-薬物複合体に代わる新しい薬物送達法であり,これを,PDC(Peptide Drug Conjugate)と名付ける。さらに,マイクロ抗体をマウスに投与し,免疫原性がないことを確認した。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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