研究課題/領域番号 |
16H01894
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
酒井 啓子 千葉大学, 法政経学部, 教授 (40401442)
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研究分担者 |
松本 弘 大東文化大学, 国際関係学部, 教授 (10407653)
松永 泰行 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (20328678)
末近 浩太 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (70434701)
千葉 悠志 早稲田大学, イスラーム地域研究機構, 研究助手 (70748201)
保坂 修司 早稲田大学, 総合研究機構, 客員上級研究員(研究院客員教授) (80421220)
山尾 大 九州大学, 比較社会文化研究院, 准教授 (80598706)
松尾 昌樹 宇都宮大学, 国際学部, 准教授 (10396616)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 宗派 / イスラーム / 国際政治 / 中東 |
研究実績の概要 |
初年度のH28年度は、研究会を二回開催し、それぞれの分担者が担当するイラク、レバノン、湾岸諸国、イエメンの宗派関係の現状について、情報交換を行った。また二回目の研究会では、それぞれの研究対象国に関する研究動向をまとめ、二次文献の整理を行った。 H28年度は、特にイラクにおける宗派対立に関して海外の専門家およびイラク国内の研究者を日本に招聘し、第一線の研究動向、および現地社会の動向を把握することに力点を置いた。7月には在米イラク研究者のJoel Wingを招聘し、日本エネルギー経済研究所やアジア経済研究所との合同研究会を開催した。9月には、イラクのバグダード大学、ムスタンシリーヤ大学、イラキーヤ大学から5人の研究者を招聘し、千葉大学、東京大学および九州大学でワークショップを開催し、中東研究者や政府、NGO関係者と意見交換を行った。バグダード大学からは引き続き2月にも研究者を招聘し、とりわけバグダード大学学長を招聘して中東調査会、イラク委員会の協力を得てシンポジウムを開催した。本シンポジウムの成果は、NHKなどでも大きく取り上げられた。 代表者、分担者は国内での学会、研究会でその成果を発信するのみならず、国際会議にも積極的に参加した。7月、ポスナン(ポーランド)で開催された世界政治学会には代表者および分担者(末近、山尾)が参加し、Sectarian Violence: The Impact of Changing Regional Politics and International Relationsとの題でパネルを組織した。 中東諸国における宗派対立の現代史における展開を把握するために、米調査機関が各国地下反体制派放送などを傍受し英語化して記録したForeign Broadcasting Intelligence Serviceのアーカイブを購入した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
宗派の政治化が最も深刻化かつ顕在化しているイラクに関して、その治安情勢の悪化から十分な現地調査ができないことが、研究の遂行に最も障害になることが懸念されたが、その困難を代替するために、現地の研究者をできるだけ多く招聘し現地からの一次情報を獲得することに努め、2度にわたりバグダード大学などから第一線の研究者を招聘することができたことは、研究の大きな進展と見なすことができる。そのことで、1月には代表者および分担者(山尾)がイラクのシーア派聖地を視察する招待を受けることとなり、宗派対立に関する調査を大きく発展させる結果となった。 また、こうした宗派問題に関する研究の進展が海外の研究者にも知られるところとなり、10月には代表者および分担者の末近が、Routledgeから発行される予定のHandbook of Middle East PoliticsにおいてSectarian Fault lineに関する一章の執筆を依頼されることとなった。 以上のことから、研究はおおむね順調であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
代表者および分担者の末近が、Routledgeから発行される予定のHandbook of Middle East PoliticsにおいてSectarian Fault lineに関する一章の執筆を依頼されていることから、他の分担者から湾岸諸国、イエメンなどの宗派対立に関する研究動向に関する発表を受け、それらを参考にしながら執筆を進めていく。そのための研究会を、H29年6月に開催し、現在の中東諸国における政治の宗派化に関する概論をまとめ上げる。 秋には、湾岸諸国、レバノン、イラクにおける宗派問題に関する第一線の研究者を海外から招聘し、ワークショップを開催する。具体的には、シンガポール国立大学中東研究所のFanar Haddad、ジョージワシントン大学のMadeleine Wellsを含む数名の若手研究者を招聘する予定である。 イラクについては、バグダードおよびシーア派聖地(ナジャフ、カルバラ)の研究機関と密接な関係構築に成功したことから、H29年度も引き続き現地調査の実施を計画している。治安情勢の悪いなかで、日本大使館などの協力も得て、外交関係にも十分配慮しつつ、貴重な現地調査の機会を確保していく。 研究期間内に宗教の政治化、政治の宗派化をテーマとして研究成果を出版することを企画しているため、2年目にあたるH29年度は、後半に出版計画を練り上げ、章立てなどを具体化していく。
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