研究課題
基盤研究(A)
中国における労働運動は、西側の市民社会のように、それ自体として独立かつ自立した社会において展開してきたのではなく、むしろ社会主義市場経済という法、政治、経済の制度的枠組みに大きく依存しつつ、展開されてきた。この労働運動がこれらの制度的枠組みと党=国家システムという外的環境に依存していることを具体的に明らかにすべく(1)中国からの研究者や活動家などを招聘して、ワークショップ、講演会を開催し、(2)明治大学現代中国研究所を研究拠点として、研究組織内部での研究会での中間的成果の交換、ディスカッションを通して、官製労組(総工会)と労働NGO との具体的関係性、中国の労働社会の実態を浮き彫りにした。
政治学
研究代表者である石井は、緒形康・鈴木賢との編著『現代中国と市民社会──普遍的《近代》の可能性』(勉誠出版、2017年)をまとめたが、ここでは国家と労働社会との関係をめぐる中国と日本双方での最新の研究成果を紹介した。また、赤仁編(レイバーネット日本国際部訳)『ストする中国――非正規労働者の闘いと証言』(彩流社、2018年)では、労働NGOを含む最近の広東省における労働現場の実情についても紹介した。『日中の非正規労働をめぐる現在』(御茶の水書房、2019年)の出版は、この分野での最新情報を盛り込み、本プロジェクトが社会的に高い評価を得たことを示している(『日経新聞』、2019年4月6日書評欄)。