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2017 年度 実績報告書

啓蒙期の知的公共圏におけるフィクション使用の形態・機能研究

研究課題

研究課題/領域番号 16H01907
研究機関東京大学

研究代表者

齋藤 渉  東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (20314411)

研究分担者 上村 敏郎  獨協大学, 外国語学部, 准教授 (20624662)
大崎 さやの  東京藝術大学, 音楽学部, 講師 (80646513)
隠岐 さや香  名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (60536879)
久保 昭博  関西学院大学, 文学部, 教授 (60432324)
後藤 正英  佐賀大学, 教育学部, 准教授 (60447985)
菅 利恵  三重大学, 人文学部, 准教授 (50534492)
武田 将明  東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (10434177)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2020-03-31
キーワード啓蒙 / フィクション / 18世紀 / ヨーロッパ
研究実績の概要

本研究に先立つ研究課題(以下「第一期」とする)では、18世紀の(とりわけ「文学外的」)フィクションに関して基本的分析の枠組みを考察し、数多くの事例にもとづき、検証や精緻化を試みた。
この成果を手がかりにしながら、今年度はフィクションの使用を支えたり、あるいは困難にした制度的要因を個別の事例にもとづいて考察することを課題としたが、無数にある事例から分析対象を絞り込むため、ジャンル論的な観点から対話形式のテクスト(Dialogues)に限定し、その文化的制度(化)を考えることとした。対話については、フランス文学・思想の分野において豊富な研究の蓄積がある(Roelens (1972, 1976), Mortier (1984), Guellouz (1992), Adams (1992), Kleihues (2002), Pujol (2005), Hoesle (2006), Cazanave (2007), Chassot (2011) など)。特に、対話ジャンルの歴史的継承関係(とりわけプラトン、ルキアノスなど古典期との関係)、ジャンル的規範の「共有」と「逸脱」、テーマの細分化とあらたなスタイルの模索、範例の模倣と衰退といった問題について考察を進めた。現在、その成果発表の準備を進めている。
また、18世紀のドイツで語られた「対話の不振」というトピックに関連して、フォントネル、シャフツベリらの範例と、ゴットシェートらによるその受容を主要な対象として関連テクストの分析を行なった。ジャンル概念については、特にSchaefferら近年の理論を参照しつつ、ジャンル意識が当事者によってどのように共有・継承(=文化制度化)されるかが大きな問題となる。ドイツ語圏での「対話の不振」論はこうした問題を検討するに際して、きわめて興味深い事例となりうることが示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究課題としては2年目だが、第一期を含めると6年目となった。これまでの成果や連絡体制を生かしつつ、有効に共同研究を進めることができている。特筆すべき点として、メンバーの久保昭博(関西学院大学)のコーディネイトにより、フランス語圏でのフィクション研究を牽引する存在の一人、フランソワ・ラヴォカ教授(パリ第3大学)との協力体制を築けたことを挙げることができる。
共同研究メンバーは、今後の研究推進の方針について密接に意見交換を行ないながら、国内外の資料を広く収集・検討し始めている。引き続き緊密な連絡態勢を維持しつつ、これまでの考察の検証やさらなる成果の発表を進めていきたい。

今後の研究の推進方策

当初の研究計画にもとづき、a)理論的研究と、b)歴史的研究の両側面から考察していきたい。
a)理論的研究:これまで検討してきた現代のフィクション論を踏まえつつ、18 世紀の言説を振り返る。それらの多くは、素朴な作用・受容観を前提にしているが、その分、専門的知識人の議論にとどまらない広範な層の関心を集めていた。他方、こうしたやや楽観的なフィクション理解は、芸術固有の価値を信奉する知識人たちによって克服が図られることとなった。文脈の違いはあるが、18 世紀と現代のフィクション理論には相通ずる点も示しており、両者の関連を考えることが重要な課題となる。
b)歴史的研究:18 世紀は、出版市場の発展により文筆家の潜在的影響力が高まった時代といえる。このことはまた政府や教会の警戒を引き起こすことにもなった。拡大するコミュニケーションを統御する方策として、検閲が実施・強化され、少なからぬ知識人に脅威を与えている。だが、こうした制限はときに別種の表現手段(フィクションはそのような手段となりうる)を選ばせ、結果的にはより広い範囲の関心を集めることもあった。今年度は特に、こうした検閲/流通のダイナミズムについての研究を進めていく。
今年は、最終年度の前年にあたる。このため、来年7月に開催される国際18世紀学会(エディンバラ)での成果発表に向けた準備が、今年度の重要な課題となる。どのような形でセッションを展開するか、前回(本研究課題の前身:2015年)の経験や反省をいかし、より効果的な成果発表と国際的なディスカッションの深化をはかりたい。
また、国内外のさまざまな研究者との交流も重要な課題である。特に、フランソワーズ・ラヴォカ教授(パリ第3大学(新ソルボンヌ))が立ち上げを企画し、当共同研究も協力を約束している「フィクション・フィクショナリティー研究学会」との相互交流を積極的に推進していく。

  • 研究成果

    (25件)

すべて 2018 2017 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 図書 (7件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] シェリングとヤコービーシェリング哲学の転換点としての神的事物論争2017

    • 著者名/発表者名
      後藤正英
    • 雑誌名

      西日本哲学年報

      巻: 25 ページ: 57-73

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ポスト・トゥルースあるいは現代フィクションの条件2017

    • 著者名/発表者名
      久保昭博
    • 雑誌名

      早稲田文学

      巻: 初夏号 ページ: 62-67

  • [雑誌論文] Description and point of view in the modern Japanese novel: Iwano Homei’s theoretical discourse2017

    • 著者名/発表者名
      Akihiro Kubo, Tomoe Nakamura, Manabu Kawada
    • 雑誌名

      Annals of “Dimitrie Cantemir” Christian University, Linguistics, Literature and Methodology of Teaching

      巻: XVI, No.1 ページ: 23-41

  • [雑誌論文] 非国教徒ダニエル・デフォーの市民的不服従─The True-Born EnglishmanからAnglo-Scottish Unionまで2017

    • 著者名/発表者名
      武田将明
    • 雑誌名

      ヘンリー・ソロー研究論集

      巻: 43 ページ: 33-45

    • 査読あり
  • [学会発表] 啓蒙期の対話ジャンルについて2018

    • 著者名/発表者名
      斉藤渉
    • 学会等名
      「啓蒙とフィクション」研究会
  • [学会発表] イタリアの演劇人とフランス~演劇とオペラにおける文化交流2018

    • 著者名/発表者名
      大崎さやの
    • 学会等名
      知求アカデミー オープンカレッジ
    • 招待講演
  • [学会発表] ドイツ語圏におけるフォントネル受容2017

    • 著者名/発表者名
      斉藤渉
    • 学会等名
      「啓蒙とフィクション」研究会
  • [学会発表] J. ハーバーマス『哲学論文集』第5巻(2008)「メタ哲学的考察」諸論考を読む2017

    • 著者名/発表者名
      斉藤渉
    • 学会等名
      批判的社会理論研究会 第32回研究例会
  • [学会発表] ゴルドーニのオペラ『スタティーラ』をめぐって2017

    • 著者名/発表者名
      大崎さやの
    • 学会等名
      「啓蒙とフィクション」研究会
  • [学会発表] 《ポッペーアの戴冠》の台本作家ブゼネッロについてー歴史上の人物を扱った最初のオペラ作家ー2017

    • 著者名/発表者名
      大崎さやの
    • 学会等名
      〈モンテヴェルディ生誕450年記念シンポジウム〉モンテヴェルディのオペラから広がるバロック・オペラの世界
  • [学会発表] Le retour au classicisme est-il un paradoxe de la modernite ?2017

    • 著者名/発表者名
      久保昭博
    • 学会等名
      名古屋大学人類文化遺産テクスト学研究センター主催シンポジウム「前衛芸術と古典主義─1880年~1945年」
    • 国際学会
  • [学会発表] 文学の理念とその外部─日本近代における文学の起源・発生をめぐる言説」2017

    • 著者名/発表者名
      久保昭博
    • 学会等名
      ハイデルベルク大学ワークショップ「日本の文学理論・日本文学を理論する」
    • 国際学会
  • [学会発表] "親密さの政治学―ヴィーラント『アリスティッポス』 における愛とコスモポリタニズム"2017

    • 著者名/発表者名
      菅利恵
    • 学会等名
      日本独文学会春季研究発表会
  • [学会発表] 事実を意識するフィクション2017

    • 著者名/発表者名
      菅利恵
    • 学会等名
      三重大学日本語学文学会
  • [学会発表] “With such alterations as might satisfy the curiosity of the public” George Psalmanazar, The Description of Formosaと十八世紀初頭の表象の臨界2017

    • 著者名/発表者名
      武田将明
    • 学会等名
      日本英文学会第89回大会
  • [学会発表] フィクションの彼方に──18世紀イギリス文学研究の最近の動向から2017

    • 著者名/発表者名
      武田将明
    • 学会等名
      日本ジョンソン協会第50回大会
  • [学会発表] La definition des physico-mathematiques chez D’Alembert et Diderot : la pluralite des sciences ‘newtoniennes’ au milieu du XVIIIe siecle2017

    • 著者名/発表者名
      Sayaka Oki
    • 学会等名
      D’Alembert dans les debats de son temps, Colloque international sous le haut patronage de l’Academie francaise et de l’Academie des sciences
    • 国際学会
  • [図書] 「愛の時代」のドイツ文学2018

    • 著者名/発表者名
      菅 利恵
    • 総ページ数
      300
    • 出版者
      彩流社
    • ISBN
      978-4779124501
  • [図書] 高橋輝暁編、人間形成としての教養――ハンガリー、フィンランド、日本におけるドイツ的理念の受容と将来展望2018

    • 著者名/発表者名
      斉藤渉
    • 総ページ数
      224(担当:125-136)
    • 出版者
      春風社
    • ISBN
      978-4861105968
  • [図書] Teruaki Takahashi, Tilman Borsche (eds.): Bildung nach Humboldt. Erfolg, Krise und Zukunft einer Idee in Ungarn, Finnland und Japan. Zum 50-jaehrigen Jubilaeum der Dokkyo Universitaet zu Soka2018

    • 著者名/発表者名
      Sho Saito
    • 総ページ数
      192(担当:134-142)
    • 出版者
      Verlag Karl Alber
    • ISBN
      978-3495489901
  • [図書] 日本英文学会(関東支部)編、教室の英文学2017

    • 著者名/発表者名
      武田将明
    • 総ページ数
      334(担当:186-195)
    • 出版者
      研究社
    • ISBN
      978-4327472351
  • [図書] 東京大学教養学部編、分断された時代を生きる2017

    • 著者名/発表者名
      武田将明
    • 総ページ数
      270(担当:10-24)
    • 出版者
      白水社
    • ISBN
      978-4560095645
  • [図書] ペストの記憶2017

    • 著者名/発表者名
      ダニエル・デフォー、武田 将明(翻訳・解説)
    • 総ページ数
      364
    • 出版者
      研究社
    • ISBN
      978-4327180539
  • [図書] 大浦康介編、日本の文学理論――アンソロジー2017

    • 著者名/発表者名
      斉藤渉(解題部分執筆)
    • 総ページ数
      466(解題担当:139-142)
    • 出版者
      水星社
    • ISBN
      978-4801002401
  • [備考] 共同研究「啓蒙とフィクション」ウェブサイト

    • URL

      http://www.usus-fictionis.jp/

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公開日: 2018-12-17  

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