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2019 年度 実績報告書

記憶論的転回以後の集合的記憶論の学際的再検討

研究課題

研究課題/領域番号 16H01909
研究機関東京外国語大学

研究代表者

岩崎 稔  東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (10201948)

研究分担者 今井 昭夫  東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (20203284)
篠原 琢  東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (20251564)
長 志珠絵  神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (30271399)
金井 光太朗  東京外国語大学, その他部局等, 名誉教授 (40143523)
石井 弓  東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 特別研究員 (50466819)
成田 龍一  日本女子大学, 人間社会学部, 研究員 (60189214)
板垣 竜太  同志社大学, 社会学部, 教授 (60361549)
小田原 琳  東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (70466910)
土田 環  早稲田大学, 理工学術院, 講師(任期付) (70573658)
米谷 匡史  東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (80251312)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2021-03-31
キーワード集合的記憶 / トラウマ / 歴史修正主義 / レーテー / 国民の記憶 / メモリースタディーズ / ハザードスタディーズ / 新自由主義
研究実績の概要

本事業は、「歴史にとって記憶の問題とは何だったのか」という共通の課題設定のもとで、「記憶論的転回以後」の集合的記憶に関する言説状況を検討し、東アジア、ヨーロッパ、中東、アフリカの事例研究を空間的に広げて総括してきた。また、二十世紀後半以後の時系列に即して、個々の社会的コンフリクトのフェーズことに記憶の動態分析も行ってきた。その場合、モーリス・アルヴァックスの概念設定に端を発し、ドイツのヤン・アスマンやアライダ・アスマンの概念装置などにも立脚しながら自覚的に記憶と忘却の反省的理論として整理することをめざしてきている。また、とくに本事業の取組みの焦点となるのは、メモリースタディーズの高度化によって獲得された知見や語彙の明示化であり、また記憶論的転回以後に起こっている歴史像の分断や二極化という劇症化したコンフリクトの分析であった。
これまでにも、記憶に関するブレーンストーミングのワークショップなどを開催し、①国民国家の記憶に関するヨーロッパボーダーランド地域の個別研究、②戦後東アジアの記憶の再検討、③記憶と忘却の動態の理論化、④記憶と忘却のレキシコンの作成などに、ひとつひとつ取り組んできた。そうしたなかで、研究分担者からは、新たに意識化されたハザードスタディーズの一環としての記憶の語りや、近年のレイシズム再来現象についても、災害の記憶やコロニアリズムの記憶という論点として、積極的に組み込んでいくべきであるという提案があり、それらを通じて事業計画の視野はより豊かになってきている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本事業を通じて、個々の集合的記憶をめぐる抗争ときしみ、対立と和解に関する研究は、それぞれの研究班の活動として具体的に進捗している。たとえば、各国民国家のケーススタディーは、小田原琳准教授らの貢献によってボーダーランド地域に焦点を絞った研究成果が上がっているだけでなく、篠原琢教授らの手によって「非自由主義的民主主義」を明確に標榜する中欧地域での政治運動と記憶の抗争との関係も明らかになってきている。また東アジアのケースでは、暗黙のうちに作動しているメモリーレジームという観点を立てることで、記憶論的転回以後の30年間の論争過程を捉えなおしたり、戦後記憶の諸課題を網羅的に再検討したりする作業に進展を見ている。加えて、ハザードスタディーズの視点や近年のレイシズム回帰現状についての取組みも分担者から強く提案され、事業の当初の理解についての再検討が促されたことで、取組みの枠組みが広がってきている。各研究班の取組を概観するかぎり、コロナ禍にも関わらず、当初計画に即して実行されているとともに、着手時点では不分明であった論点もいくつか明示化されてきており、研究計画は概ね順調に進捗してきたと考えている。一部やり残した会議で検討する予定であった課題も、繰り越しの予算に基づき、またzoomを日常的に用いることで、実質的に消化してきている。

今後の研究の推進方策

当初は、令和元年度中の計画として、アメリカコーネル大学のブレット・ドバリー教授らを招聘して令和2年3月3日から5日にかけて、原発の記憶などについての会議を中間総括としての役割を与えつつ、一気に開催する予定であった。しかし、まさにこの時期からコロナ禍により国際的な行き来か不可能になったために、実施スタイルを変更せざるをえないでいる。しかし、そこで想定されていた課題については、それぞれを個別のZOOMミーティングに分解して、アメリカやシンガポールなどを繋ぎながら、そのつど開催してきており、今後もそれを実施していくことになる。

  • 研究成果

    (38件)

すべて 2021 2020 2019

すべて 雑誌論文 (17件) (うちオープンアクセス 8件、 査読あり 11件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 3件、 招待講演 8件) 図書 (11件)

  • [雑誌論文] Where and who have been Nisei soldiers―the war memory without gender?2021

    • 著者名/発表者名
      Shizue Osa
    • 雑誌名

      国際文化学研究

      巻: 55 ページ: 187-202

    • DOI

      10.24546/81012665

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 悪疫年2020 序2020

    • 著者名/発表者名
      成田 龍一
    • 雑誌名

      現代思想

      巻: 48-12 ページ: 233-245

  • [雑誌論文] 序・2 1980年代の試み2020

    • 著者名/発表者名
      成田 龍一
    • 雑誌名

      現代思想

      巻: 48-14 ページ: 213-221

  • [雑誌論文] 琉球民族遺骨返還訴訟への意見書2020

    • 著者名/発表者名
      板垣竜太
    • 雑誌名

      評論・社会科学

      巻: 134 ページ: 141-177

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] いま、コロナウイルス禍の中で――社会史研究の成果に学ぶ2020

    • 著者名/発表者名
      成田龍一
    • 雑誌名

      歴史地理教育

      巻: 913 ページ: 54-59

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 原爆・被爆を描く別役実、あるいは戦後表象空間のなかの別役実――『象』『マクシミリアン博士の微笑』をめぐって2020

    • 著者名/発表者名
      成田龍一
    • 雑誌名

      ユリイカ

      巻: 764 ページ: 155-170

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 桐野夏生の「1972年」 『抱く女』『夜の谷を行く』『夜また夜の深い夜』2020

    • 著者名/発表者名
      成田龍一
    • 雑誌名

      思想

      巻: 1159 ページ: 80-106

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 人類学京都学派と台湾:京都帝大解剖学第二講座の人骨研究の系譜2020

    • 著者名/発表者名
      板垣竜太
    • 雑誌名

      二十世紀研究(京都大学)

      巻: 21 ページ: 79-107

  • [雑誌論文] Anti-Nuclear Movement and 'Motherhood' in Post-War Japan: A Feminist Perspective2020

    • 著者名/発表者名
      Rin Odawara
    • 雑誌名

      DEP: Deportate, esuli, profughe

      巻: 41-42 ページ: 54-63

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 「この30年」をどのように見るのか2020

    • 著者名/発表者名
      成田龍一
    • 雑誌名

      歴史地理教育

      巻: 907 ページ: 94-101

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Where was gender roll for Air defense in Japan 1945?2019

    • 著者名/発表者名
      長志珠絵
    • 雑誌名

      国際文化学研究(神戸大学国際文化学研究科)

      巻: 53 ページ: 71-96

    • DOI

      10.24546/81011958

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 近代日本の人種・人種化論と「国際結婚」言説の変容2019

    • 著者名/発表者名
      長志珠絵
    • 雑誌名

      人文学報(京都大学人文科学研究所)

      巻: 114 ページ: 171-186

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 世界市民フランクリンに見る対抗文化としてのコスモポリタニズム2019

    • 著者名/発表者名
      金井光太朗
    • 雑誌名

      日本 18世紀学会年報

      巻: 34 ページ: 28-38

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 『学習指導要領』「歴史総合」の歴史像をめぐって2019

    • 著者名/発表者名
      成田龍一
    • 雑誌名

      歴史評論

      巻: 828 ページ: 14-22

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 方法としての「書き直し」・序説2019

    • 著者名/発表者名
      成田龍一
    • 雑誌名

      群像

      巻: 74-11 ページ: 84-148

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 日本の戦後処理と植民地支配責任2019

    • 著者名/発表者名
      板垣竜太
    • 雑誌名

      社会運動

      巻: 436 ページ: 20-35

  • [雑誌論文] 向き合うこと、顔をそむけること : 三・一運動百周年と日本の植民地支配責任2019

    • 著者名/発表者名
      板垣竜太
    • 雑誌名

      世界

      巻: 920 ページ: 204-209

  • [学会発表] ポストトランプと左派ポピュリズムの可能性―新生民主党を担うオカシオ・コルテス議員2021

    • 著者名/発表者名
      金井光太朗
    • 学会等名
      国際関係研究所研究会「『ポストトランプ』時代のアメリカ」
    • 招待講演
  • [学会発表] <感染症の時代>をジェンダー射程で「読む」2021

    • 著者名/発表者名
      長志珠絵
    • 学会等名
      日本大学史学会 シンポジウム<歴史教育の未来を拓くⅤ:コロナ下の「新常態」とアクティブラーニング>
    • 招待講演
  • [学会発表] アメリカ独立再考:ポピュリズム的運動の系譜と連邦主権2020

    • 著者名/発表者名
      金井光太朗
    • 学会等名
      第4回北米ポピュリズム史研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] 女系・女帝の可能性と<近代>2020

    • 著者名/発表者名
      長志珠絵
    • 学会等名
      歴史学研究会 シンポジウム「皇位継承再論―女帝・女系の可能性と皇太子」
    • 招待講演
  • [学会発表] Orphan of Zhao: A Story and the Dynamism of Village Community in Shanxi China2020

    • 著者名/発表者名
      Yumi Ishii
    • 学会等名
      European Association for Chinese Studies (EACS)
    • 招待講演
  • [学会発表] 台湾の人骨問題と日本-琉球 :京都帝大解剖学講座の系譜(あるいは博士の異常な愛情)2020

    • 著者名/発表者名
      板垣竜太
    • 学会等名
      人骨問題を考える連続学習会@京都大学 第6回
  • [学会発表] A complicated relationship between the eugenics and the reproductive rights in Post-War Japan2019

    • 著者名/発表者名
      Rin Odawara
    • 学会等名
      Reproductive (Non) Freedom (Ca' Foscari University of Venice, Italy)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 〈無垢〉の死者を想起することの困難:フォッセ・アルデアティーネの虐殺と戦後イタリアのナショナル・アイデンティティ2019

    • 著者名/発表者名
      小田原琳
    • 学会等名
      東アジアのメモリー・レジーム:再現と遂行(西江大学、韓国)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Motherhood and the Anti-nuclear Movement in Post-War Japan2019

    • 著者名/発表者名
      Rin Odawara
    • 学会等名
      Gender and Criticism: Japan in the Trans-Pacific (California State University, Northridge, the United States)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 収集と権力:京都帝大人類学研究室の「南島」調査2019

    • 著者名/発表者名
      板垣竜太
    • 学会等名
      人骨問題を考える連続学習会@京都大学 第2回
  • [図書] (共訳)バーバラ・H.ローゼンワイン/ リッカルド・クリスティアーニ『感情史とは何か 』2021

    • 著者名/発表者名
      小田原琳
    • 総ページ数
      246
    • 出版者
      岩波書店
    • ISBN
      9784000614504
  • [図書] (翻訳)ゼバスティアン・コンラート『グローバル・ヒストリー 批判的歴史叙述のために』2021

    • 著者名/発表者名
      小田原琳
    • 総ページ数
      294
    • 出版者
      岩波書店
    • ISBN
      9784000226448
  • [図書] 方法としての史学史2021

    • 著者名/発表者名
      成田龍一
    • 総ページ数
      428
    • 出版者
      岩波書店
    • ISBN
      9784006004323
  • [図書] パンデミックとジェンダー分業--共同体の公正な存続のために:歴史学研究会編『コロナの時代の歴史学』2020

    • 著者名/発表者名
      小田原琳
    • 総ページ数
      171
    • 出版者
      績文堂
    • ISBN
      9784881161364
  • [図書] 「京都帝大の人類学者の植民地主義的ダブルスタンダード」松島泰勝・山内小夜子編著『京大よ、還せ:琉球人遺骨は訴える』2020

    • 著者名/発表者名
      板垣竜太
    • 総ページ数
      249
    • 出版者
      耕文社
    • ISBN
      978-4-86377-060-7
  • [図書] 「帝国」(文旦執筆)『論点・西洋史学』2020

    • 著者名/発表者名
      篠原琢
    • 総ページ数
      340
    • 出版者
      ミネルヴァ書房
    • ISBN
      978-4623087792
  • [図書] 『環太平洋地域の移動と人種』2020

    • 著者名/発表者名
      竹沢泰子・田辺明生・成田龍一
    • 総ページ数
      423
    • 出版者
      京都大学学術出版会
    • ISBN
      978-4814002481
  • [図書] 「史料蒐集と<植民地>-『朝鮮史』史料採訪『復命書』を中心に」桂島宣弘編著『東アジア・遭遇する知と日本――トランスナショナルな思想史の試み』2019

    • 著者名/発表者名
      長志珠絵
    • 総ページ数
      374
    • 出版者
      文理閣
    • ISBN
      978-4892598432
  • [図書] 特集カタログ「Double Shadows2―映画と生の交わる場所」2019

    • 著者名/発表者名
      土田環(編)
    • 総ページ数
      164
    • 出版者
      山形国際ドキュメンタリー映画祭東京事務局
    • ISBN
      978-4908435133
  • [図書] 「戦争記憶をめぐる再帰的な自己実践ーオーラルヒストリーによる他者理解と自己理解」菅豊、北條勝貴編著『パブリック・ヒストリー入門』2019

    • 著者名/発表者名
      石井弓
    • 総ページ数
      512
    • 出版者
      勉成出版
    • ISBN
      978-4-585-22254-5
  • [図書] 「近代のなかの「戦後」/「戦後」のなかの明治」坪井秀人編『戦後日本文化再考』2019

    • 著者名/発表者名
      成田龍一
    • 総ページ数
      603
    • 出版者
      三人社
    • ISBN
      978-4-86691-229-5

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公開日: 2021-12-27  

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