研究課題/領域番号 |
16H01913
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
有賀 祥隆 東北大学, 文学研究科, 名誉教授 (20133613)
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研究分担者 |
山本 勉 清泉女子大学, 文学部, 教授 (00150037)
津田 徹英 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 文化財情報資料部, 部長等 (00321555)
岩佐 光晴 成城大学, 文芸学部, 教授 (10151713)
武笠 朗 実践女子大学, 文学部, 教授 (30219844)
泉 武夫 東北大学, 文学研究科, 名誉教授 (40168274)
瀬谷 貴之 神奈川県立金沢文庫, 学芸課, 主任学芸員 (50443411)
浅井 和春 青山学院大学, 文学部, 教授 (60132700)
長岡 龍作 東北大学, 文学研究科, 教授 (70189108)
畠山 浩一 東北大学, 文学研究科, 専門研究員 (90344639)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 彫刻史 / 荘厳 / 生身 / 清水寺式千手観音 / 神像 / 清凉寺式釈迦如来 |
研究実績の概要 |
年度当初の計画通り、1.調査、2.調査対象像の所在調査、3、資料整理・蓄積、の項目ごとに調査研究をおこなった。 1.では、6件、11点の作品調査をおこなった。調査地は、中尊寺讃衡蔵(岩手県平泉町平泉衣関202)、浄厳院(近江八幡市安土町)、鳩ヶ嶺八幡宮(長野県飯田市)、宗安寺(高知県高知市)、栃木県立博物館(栃木県宇都宮市)、金沢文庫(神奈川県横浜市)である。まず、中尊寺讃衡蔵では、千手観音立像(重文、清水寺式)のX線撮影をおこなったことが特筆される。補修の多い同像は外観からの目視では構造の詳細が不明であったが、今回のX線撮影調査によって構造が明確になった。また、鳩ヶ嶺八幡宮では、本殿に安置される、誉田別命坐像、息長足女像、男神像の三体の神像を調査撮影した。従来詳細な調査がされていなかった同三像の調査成果は貴重な資料となった。その他、浄厳院では釈迦如来立像(清凉寺式)、宗安寺では不動明王坐像、栃木県立博物館では、薬師如来像立像(茨城県笠間市岩谷寺)、馬頭観音坐像(栃木県矢板市木幡神社)を調査撮影した。以上の調査で、4×5判フィルム139枚を撮影した。これらの中には、従来詳しい報告や詳細な写真がない物件も含まれ、収集した情報と画像を報告書として公刊することで、学界に大きく寄与するものとなることが予想される。 2.では、本研究の柱である、(1)空間(霊山信仰、観音札所)に関わる作例、(2) 荘厳に特色ある作例、(3)胎内に特色を持つ作例について、県指定、市町村指定の文化財を対象に所在調査をおこない、次年度以降の調査に備えた。 3.では、(1)調査データをテキスト化してコンピュータへと入力した。(2)撮影済みの4×5判フィルム151枚を、高精細スキャナーを用いる業者に発注して、デジタルデータ化した。(3)テキストデータ、画像データを統合したデータベースの作成準備にかかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の各調査地における、調査日時及び調査作例は以下のとおりである。 1.岩手・中尊寺讃衡蔵(2017年7月29日、千手観音立像)、2.滋賀・浄厳院(2017年9月8日・9日、釈迦如来立像)、3.長野・鳩ヶ嶺八幡宮(2017年9月19日・20日、誉田別命坐像、息長足女像、男神像)、4.高知・宗安寺(9月25日~27日、不動明王坐像)、5.栃木県立博物館(2017年10月4日、岩谷寺薬師如来像、木幡神社馬頭観音像)、6.神奈川・金沢文庫(2018年3月10日~12日、鎌倉市光触寺阿弥陀三尊像、同教恩寺阿弥陀三尊像)。以上のように、調査地は、四国、関西、中部、関東、東北地方に及んでいる。また年度当初から年度末までの期間、継続して調査をおこなっている。調査物件も1年間の成果としては順当である。 さらに、2018年2月18日には、本科研の成果を発表する機会として「シンポジウム 運慶と東国の宗教世界」(東北大学文学研究科東洋・日本美術史研究室、神奈川県立金沢文庫、名古屋大学人文学研究科人類文化遺産テクスト学研究センターの共催、於横浜市立大学シーガルホール)を開催した。以上の進捗状況から、おおむね順調に進行していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
以下の各項目においてそれぞれ調査研究を進める 1.調査 (1)空間:【霊山】以下の霊山に関わる物件から調査対象を選定し調査をおこなう。1.栗駒山(宮城・岩手)、2.八溝山(福島・茨城)、3.男体山(栃木)、4.筑波山(茨城)、5.大山(神奈川)、6.富士山(静岡・山梨)。【札所】坂東三十三所札所に関わる諸寺を調査し、また、秩父三十四所札所については、事前調査をおこない調査対象を選定する。(2) 「荘厳」に関わる仏像、ならびに荘厳品の調査をおこなう。(3)「胎内」に意味を有する仏像の調査をおこなう。 2.調査対象像の所在調査 本研究のテーマに沿う調査対象を、県指定、市町村指定物件を中心に博捜し、あらたに調査すべき彫像を発掘し、次年度以降の調査に備える。 3.資料整理・蓄積 (1)調査データのコンピュータ入力:現場での調書を、調査補助者が分担してデジタル化する。(2)撮影写真の分類整理、デジタルデータ化:撮影した4 ×5判フィルムを十分な設備を備え実績のある業者に発注してデジタル化する。(3)画像データを伴った、作品データベースの作成:現場で撮影したデジタル画像をベースとして、 HTMLによって検索可能なデータベースを構築する。(4)調査対象物件のリスト化:未調査物件で新たに調査対象とすべき作例を、県指定、市町村指定品を中心に捜索し、次年度以降の調査物件としてリスト化する。
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