研究課題/領域番号 |
16H01919
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研究機関 | 国際日本文化研究センター |
研究代表者 |
稲賀 繁美 国際日本文化研究センター, 研究部, 教授 (40203195)
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研究分担者 |
三原 芳秋 一橋大学, 大学院言語社会研究科, 准教授 (10323560)
堀 まどか 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 准教授 (20586341)
鵜戸 聡 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 准教授 (70713981)
鞍田 崇 明治大学, 理工学部, 専任准教授 (80469618)
大西 宏志 京都造形芸術大学, 芸術学部, 教授 (90351361)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 情報 / 複製 / 美的範疇 / 器 / うつし |
研究実績の概要 |
1.共同研究会を4回実施し、「うつわとうつし」の概念について参加者の共通了解を基礎づけた。とりわけ物質と精神とのあいだの「霊性」の東西のはざまでの交流、「右」と「左」との「あいだ」即ち「対掌性」、「右巻き」と「左巻き」、「渦巻き」と「螺旋」、さらには「裏」と「表」、「受動」と「能動」のあいだにある「中動態」にいたるまで、それぞれの領域の専門家を招聘し、自然界から言語学、認識論を横断する議論を深めた。黒田玲子、金子務、森田亜紀、三木順子、アグネシカ・コズィラ、山崎佳代子ほかの報告を得た。 2.「合法性」と「違法性」のあいだ、そのあいだの移行とその媒体をめぐり「海賊」的存在に関する考察を集約した。具体的には「海賊概念の検討」を目的とする国際研究集会を催し、前回の科学研究費補助金事業を集約するとともに、「うつわとうつし」研究事業への接続を図った。その研究成果報告書を『海賊史観からみた世界史の再検討』として2017年2月に刊行した。これは今回の「うつわとうつし」の基礎をなす研究成果である。 3.研究代表者は台北で開催された「タイペイ・ビエンナーレ」に基調講演者として招聘され、Haptic Sensations beyond Visual Cultureと題した英語講演を行ない、「うつわとうつし」に関連する接触感覚について知見を述べた。また同じ台北で開催された「国際デザイン史・デザイン研究学会」総会に基調講演者として招聘され、Toward Social Design in the Era of Globalizationと題する英語講演により、社会の器と情報の写し=移しについて提言を行った。前者は台北国立近代美術館の紀要に中国語訳が掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度としては計画どおりに共同研究会を実施し、また基礎固めの成果刊行も成就している。また研究代表者・研究分担者を含め、2年次にむけての準備作業も順調である。 初年度には、国際日本文化研究センターを会場として共同研究会を6回実施した。計画に沿って研究分担者に応じ、A「情報」B「枠組」C「インドラ網」D「輪廻転生」E「接触界面」それぞれについて関連文献の調査、専攻研究の検討など予備的な作業を進めた。 領域を超えた討論を重ねた結果、欧米と日本とでは、「うつし」と「うつわ」に関する基礎的な概念と語彙についてなお共通了解が成立しておらず、引き続きの討論、研究が必要なことが判明した。
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今後の研究の推進方策 |
2年目にあたる本年度は、各班を横断して、いくつかの具体的計画を実現する。 1)2018年にロンドンでの実現を計画している「うつわとうつし」展示およびシンポジウムの準備として、2017年5月に英国オックスフォード大学で、予備的な研究会・講演会を開催し、英国側の研究者との意見交換の機会とする。あわせてオックスフォード大学に設けられた日本式の「穴窯」を実地検分し、来年度以降の実際の活用への準備とする。2)引き続き、共同研究会を4回開催し、これに並列して可能な範囲で海外および国内からの研究協力者の招聘により、各分科会の主題にそった研究をすすめ、意見を交換する。3)来年度に予定する国際研究集会を視野にいれた成果中間とりまとめの準備に入る。4)研究会の成果発表を受け、3年次終了時に予定する研究報告論文集の企画に着手する。5)研究代表者は、スリジー国際文化センターでの研究発表およびヴィーン大学への招聘講演において、研究の構想を公表し、批判を仰ぐとともに国際的workshopとして活用する。
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