研究課題/領域番号 |
16H01923
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
勝又 直也 京都大学, 人間・環境学研究科, 准教授 (10378820)
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研究分担者 |
市川 裕 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (20223084)
赤尾 光春 大阪大学, 文学研究科, 招へい研究員 (90411694)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ユダヤ学 / ユダヤ文学 / 文献学 |
研究実績の概要 |
研究初年度にあたる2016年度は、2回の研究会、1回のシンポジウムを開催するとともに、3名の在外研究者を招聘し、共同研究の実施および特別セミナーの開講を行った。 本年度の最大の課題は、確固たる研究組織の確立であった。従来、ユダヤ学の分野において独自の研究を進めてきた研究者らを集め、研究の基礎としての「ユダヤ文献」概念の刷新の必要性について認識を共有することは、我々の計画の一番の基盤であり、この点については達成できたと言えるだろう。次の課題は、この認識に基づいて、各個が独自に積み上げてきたユダヤ文化へのアプローチを、一定の共通の基盤の上に乗せていくことである。 研究体制については、予算・人員・日程調整等の面で若干の修正を余儀なくされた。当初は基礎テクストの講読会を基盤とした「東京/関西分科会」を基盤とする予定であったが、初回会合において、原則全員参加の形をとる東京での「研究会」を基盤として研究を進めていくことを決定した。しかし、とりわけ初年度において、参加者の間に課題意識を浸透させるという点で、全員の直接対面という形式は結果として有益であった。 研究会・シンポジウム・特別セミナーにおいて得られた研究成果を一言でまとめるならば、それは「ユダヤ文献」の非ユダヤ的背景の再確認である。単に対立するみならず、時には積極的に異文化の文献を取り込みながら、ユダヤ人たちはユダヤ的な文献伝統の姿をたえず刷新・再構成し続けてきたのである。一方で指摘されたのは、「非ユダヤ的」な背景それ自体も決して一枚岩ではない、という点である。本年はとりわけキリスト教文献の介在を前提とするユダヤ文献を研究したが、その都度の状況下でユダヤ人らが関係する「キリスト教」の構成もまた多様である。「外部の他者」を漠然と設定することにより、「ユダヤ的なもの」の分析が安易な本質論に陥らぬよう、注意する必要を殊更強く感じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究体制等、いくつかの点に置いて修正が必要な部分もあったが、全体として研究は順調に進捗している。研究のための会合を原則として全員参加としたため、研究方針の共有、事務手続き上の調整が容易になった。 平成28年度末に開催したシンポジウム「ユダヤ版『イエス伝』」は、本研究最初の外部公開イベントとなったが、外部よりコメンテータを招聘することで、本研究の成果をわかりやすい形で外部に発信することができたと自負している。この成果をいち早く紀要のような形でとりまとめ、最終的な研究成果としての論集の発行につなげていきたい。 本研究の目玉の一つである国際会議については、予算充足率の問題、また招聘研究者の日程面の都合もあり、年度内の開催がやや危ぶまれている。しかし、企画そのものは順調に進行しており、仮に開催を次年度に繰り越すことになっても、研究全体の進捗には影響しないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、基本的には個人による研究を進めつつ、研究会において認識を共有する方針に変わりはない。留学等による人員の流出は一つの問題であるが、すでに研究体制は確立されており、ネット会議等の準備を整えることにより、対応は可能である。 国際学会への参加については、いまだ数少ない日本人がまとまることによって却って等閑視されるリスクを念頭に、2017年度(於エルサレム)についてはパネル発表申請を見送った。無論、個別の発表は行う予定であり、各自には本研究の視座に基づく発表を要請する。今年度の反応を見ながら、次年度の国際学会でのパネル発表申請について検討する予定である。 外部発信の機会としてのシンポジウムについては、今年度以上に積極的に開催していく予定である。またこれを中心に年度単位で研究成果を冊子としてまとめ、研究の進捗を逐一形にしていきつつ、最終的な研究成果として発表する論集の基盤とする。
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