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2016 年度 実績報告書

弥生初期水田に関する総合的研究-文理融合研究の新展開-

研究課題

研究課題/領域番号 16H01961
研究機関奈良県立橿原考古学研究所

研究代表者

本村 充保  奈良県立橿原考古学研究所, その他部局等, 指導研究員 (00270778)

研究分担者 豊岡 卓之  奈良県立橿原考古学研究所, その他部局等, 部長 (00250374)
稲村 達也  京都大学, 農学研究科, 教授 (00263129)
菅谷 文則  奈良県立橿原考古学研究所, その他部局等, 所長 (10275175)
金原 正明  奈良教育大学, 教育学部, 教授 (10335466)
佐藤 洋一郎  大学共同利用機関法人 人間文化研究機構本部, 大学共同利用機関等の部局等, 理事 (20145113)
岡田 憲一  奈良県立橿原考古学研究所, その他部局等, 指導研究員 (20372170)
川島 茂人  京都大学, 農学研究科, 教授 (40354039)
絹畠 歩  奈良県立橿原考古学研究所, その他部局等, 主任技師 (50638103)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2020-03-31
キーワード弥生初期水田 / 文理融合型研究 / 復元水田
研究実績の概要

中西遺跡発掘調査現場における分析試料採取を継続するとともに、平城京下層遺跡で確認された弥生前期水田における考古学的データの収集及び分析試料採取を行った。弥生時代前期の小区画水田群での水田面の高低差と畔の高さの空間変動から当時の湛水特性を明らかにした。無肥料で栽培した当時のイネ品種の生育特性値と収量などを調査した。
世界の古気候データとテレコネクションを用いて弥生時代初期の奈良の古気候復元を行うために、古気候データのある地点と奈良の気象データのテレコネクション解析を行った。 北京の古気温復元データと、奈良の気象データとの相関関係を調べた結果、奈良の8月平均気温が北京の夏期平均気温復元データと最も相関が高く、回帰分析による寄与率が約0.60と高い値を示した。
平城京右京三条二坊十四坪発掘調査と中西遺跡第16次調査区の弥生時代前期小区画水田遺構で、植物遺体分析を行った結果、やや乾燥から湿潤まで環境にばらつきはあるものの、オモダカ属やミズワラビなど典型的な水田雑草も生育し、当初より土壌の形成のよい機能的な水田が造られていたことが示唆された。平成29年度から実施する予定となっている復元水田実験のための用地選定及び借地交渉を行い、奈良県立万葉文化館が管理する耕作地をその用地として確保した。また、農作業に対する地元協力者確保のため、地元総代を通じて募集してもらえるように調整した。
弥生時代に栽培されていたイネ品種の復元のために、今後出土するであろうイネ種子のDNA分析に基づく品種分類のための分子マーカの開発を行った。弥生時代のイネ品種が遺伝的に多型であったであろうことを考え、現存する品種「神力」を対象に、4つのDNAマーカの多型に基づいて分類を試みた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

発掘調査現場における分析試料採取、採取試料の整理及びデータ解析、さらに発掘調査データをもとにした水田形態・規模などに関するデータベース作成は予定通り実行することができた。
水文環境復原のための、気象観測機器の設置及び観測、復元水田実験に向けた栽培品種の選定に関しては、概ね予定通りに進行していると考えている。実験用水田の借地を始めとする準備作業など、概ね作業計画に沿って進展していると考えている。ただし、中西遺跡の発掘調査によって良好なイネ試料を確保することができず、復元実験用品種選定においては他地域での検討結果を適用せざるを得ない状況があったこと、復元実験のための水田候補地絞り込みの遅れにより用地決定が年度末にずれ込んだため、気象観測機器の設置に矢や遅れが生じたこと、本来28年度中に実施しておくことが望ましい農作業の一部が着手できなかったことなど、一部作業においては、当初予定を完全に達成することができなかった。しかし、ともに研究成果に重大は悪影響を及ぼす程の深刻な遅延ではなく、その意味において、大きな問題はないと考えている。
東アジアにおける水稲耕作との比較を目的として、世界遺産にも当路側されている中国雲南省元陽の視察を実施した。視察時期は年度末にずれ込んだものの、元陽の棚田と弥生初期水田の共通点・相違点などが明確に認識でき、調査目的は十分に果たせたと考えている。

今後の研究の推進方策

中西遺跡における発掘調査は、平成29年度以降も継続する見込みであることから、現場での分析試料採取および分析試料解析については、これまで通り進めて行く方針である。また、対象地が想定される耕作域の東側に当たることから、東側境界を推定しうる調査成果が得られるような検討を進めていく予定である。
考古学的な資料集成の一環として、発掘調査報告書の検索作業等を通じて、水田および各種農具のデータベース作成に着手する。従来の集成は、遺構と遺物が個別に扱われる事が多く、両者の相関関係が不明確であるという問題があると考えており、両者を統合したデータベース作成を目的とする。
復元水田実験については、平成29年度~平成31年度の予定で実験用水田用地を確保した。日々の農作業についても、地元協力者を始め、地元振興公社やシルバー人材センターへの作業委託を通じた体制を構築し、本格的な作付け実験を進める予定である。実験用水田は1600㎡と広く、3筆にわかれた棚田状水田であることから、水環境や土壌環境など地点ごとの作付け環境をかえることで、様々な環境における生育状況のデータを収集することを目指す。またこれにより、当初4年計画で行う予定であった復元水田実験も、圃場内を区画し、いくつかの実験を同一年度に実施する事により、当初予定の実験を完了できるように具体的な作業計画や実験項目の再検討を行う。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 炭化物14C年代測定の前処理過程の科学的解明―和歌山県根来寺坊院跡から出土した炭化米の分析―2017

    • 著者名/発表者名
      富山慎二・南雅代・中村俊夫・金原正明
    • 雑誌名

      考古学と自然科学

      巻: 72 ページ: 45-61

    • 査読あり
  • [学会発表] 中国、日本における初期水田の機能と環境、栽培植物2017

    • 著者名/発表者名
      金原正明・岡田憲一・杉山真二・金原正子
    • 学会等名
      日本文化財科学会第34回大会
    • 発表場所
      日本、山形
    • 年月日
      2017-06-09
  • [学会発表] 栽培植物、農耕、環境をめぐる環境考古学手法の検討と新知見2017

    • 著者名/発表者名
      金原正明
    • 学会等名
      日本考古学協会第83回(2017年度)総会
    • 発表場所
      日本、東京
    • 年月日
      2017-05-28
  • [学会発表] A new algorithm for simultaneously estimating the concentrations of several types of airborne pollen using a laser optics system2016

    • 著者名/発表者名
      S. Kawashima, M. Thibaudon, B. Clot, G. Oliver, K. Nakamura, T. Fujita
    • 学会等名
      6th European Symposium on Aerobiology
    • 発表場所
      Lyon, France
    • 年月日
      2016-07-20
    • 国際学会
  • [図書] 稲と米の民族誌 アジアの稲作景観を歩く2016

    • 著者名/発表者名
      佐藤洋一郎
    • 総ページ数
      312
    • 出版者
      日本放送出版協会

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公開日: 2018-01-16  

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