持続可能な公共財としての原子力法システムの可能性

2016 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 16H01976
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 高木 光 京都大学, 法学研究科, 教授 (60114526)
• 研究分担者: 服部 高宏 京都大学, 法学研究科, 教授 (00218504) ; 岡村 忠生 京都大学, 法学研究科, 教授 (30183768) ; 仲野 武志 京都大学, 公共政策大学院, 教授 (50292818) ; 毛利 透 京都大学, 法学研究科, 教授 (60219962) ; 須田 守 京都大学, 法学研究科, 准教授 (70757567) ; 藤谷 武史 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (90313056) ; 原田 大樹 京都大学, 法学研究科, 教授 (90404029) ; 日野 辰哉 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 准教授 (90431428)
• 研究期間 (年度): 2016-04-01 – 2020-03-31
• キーワード: 原子力法 / 電源開発 / 持続可能

研究実績の概要

本年度は、研究の初年度として、資料の収集と外国人研究者との意見交換を行い、また、４回の研究会を開催して、原子力法システムに関する検討を進めた。
総括チームは、原子力発電所の再稼働をめぐり、バックフィットに着目した行政訴訟よりも民事差止訴訟や民事仮処分が多用されていることに鑑み、両者の関係を巡る論争について研究会を開催した。
立法過程チームは、より良き立法を実現する制度改革の視点を探るため、政治過程全体や選挙権の理論的考察を進めつつ、法案作成過程の比較法的研究を行った。とりわけドイツの、高レベル廃棄物処分施設建設地立地選定に関する委員会の最終報告書、およびオーストリアの、透明性に強く配慮した政府内の法案作成過程を調査検討した。
行政・司法過程チームは、持続可能な公共財としての原子力法システムの方向性を探るべく、行政法規制と市場競争との交錯に関するフランスの状況を解明した。また、原子力設置許可の司法審査における行政の判断過程への着目に鑑み、行政処分法制と行政訴訟とをつなぐ考慮事項論に関するわが国の状況をまとめ、処分理由概念の意義を示した。さらに、原子力法システムの一翼を担う国家賠償制度につき、その草創期に遡って、現在の判例理論の基礎にある考え方を解明し、これと学説との生産的な対話を実現するための方向性を提示した。
財政過程チームは、超長期的な法制度を維持しうる人材確保に関して、ヒューマン・キャピタルの観点から検討を進めた。また、原子力政策の財政的裏付け、とりわけ原子力災害に基因する損害賠償の財源確保について公法学的考察を進め、電力事業者による電力料金への上乗せの例外的容認という仕組みへの依拠、財政需要の充足は租税収入を基本とすべきとする租税国家原理、およびそれに相応しい民主的・手続的統制を要求する租税法律主義との関係を検討し、その準備作業となる論文も執筆公刊した。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成28年度の研究計画に従い、全体会議によって研究の統括を図りながら、各チームが研究会を開催して新たな知見を得つつ、順調に研究成果を公表した。

今後の研究の推進方策

平成29年度以降の研究計画に従い、引き続き、研究会の開催や外国の研究者との意見交換を行いつつ、随時、研究成果を公表する。

研究成果

• [雑誌論文] 表現の自由と選挙権の適切な関連づけのために (2017)
  • 著者名/発表者名: 毛利透
  • 雑誌名: 法律時報 巻: 88巻5号 ページ: 22-27
• [雑誌論文] ドイツBID最新状況報告 (2017)
  • 著者名/発表者名: 原田大樹
  • 雑誌名: 新都市 巻: 71巻2号 ページ: 61-71
• [雑誌論文] 街区管理の法制度設計―ドイツBID法制を手がかりとして (2017)
  • 著者名/発表者名: 原田大樹
  • 雑誌名: 法学論叢 巻: 180巻5・6号 ページ: 434-480
• [雑誌論文] 公益法人の遊休財産額保有制限・再考 (2017)
  • 著者名/発表者名: 藤谷武史
  • 雑誌名: 法学新報（中央大学） 巻: 123巻11・12号 ページ: 151-186
• [雑誌論文] 論拠としての「租税法律主義」― 各国比較 (2017)
  • 著者名/発表者名: 藤谷武史
  • 雑誌名: フィナンシャル・レビュー 巻: 129 ページ: 194-217
• [雑誌論文] 家族内財産承継の租税法的把握をめぐる問題 ― 非典型財産承継の局面を中心に (2017)
  • 著者名/発表者名: 藤谷武史
  • 雑誌名: 社会科学研究（東京大学社会科学研究所） 巻: 68巻2号 ページ: 65-102
• [雑誌論文] 自治体法務の学び方 (2016)
  • 著者名/発表者名: 高木光
  • 雑誌名: 自治実務セミナー 巻: 654 ページ: 2-5
• [雑誌論文] 源泉徴収の法律関係と納税の告知 (2016)
  • 著者名/発表者名: 高木光
  • 雑誌名: 別冊ジュリスト 巻: 228 ページ: 216-217
• [雑誌論文] 一般的租税回避否認規定について : 否認理論の観点から (2016)
  • 著者名/発表者名: 岡村忠生
  • 雑誌名: ジュリスト 巻: 1496 ページ: 44-50
• [雑誌論文] 法人税法132条の2の「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」の意義と該当性[最高裁第一小法廷平成28.2.29判決] (2016)
  • 著者名/発表者名: 岡村忠生
  • 雑誌名: ジュリスト 巻: 1495 ページ: 10-11
• [雑誌論文] 租税法規の限定解釈 (2016)
  • 著者名/発表者名: 岡村忠生
  • 雑誌名: 別冊ジュリスト 巻: 228 ページ: 38-39
• [雑誌論文] Die Rolle von Verfassungsrecht - bei Rawls, Habermas, und in Japan (2016)
  • 著者名/発表者名: Toru Mori
  • 雑誌名: Jahrbuch des offentlichen Rechts 巻: 64 ページ: 795-813
  • 査読あり
• [雑誌論文] 帝国憲法・現憲法下の官吏責任・国家責任 (2016)
  • 著者名/発表者名: 仲野武志
  • 雑誌名: 自治研究 巻: 92巻7号 ページ: 76～100
• [雑誌論文] 自治体クラウド活用に向けた法的課題 (2016)
  • 著者名/発表者名: 原田大樹
  • 雑誌名: NBL 巻: 1071 ページ: 13-23
• [雑誌論文] 情報通信技術と政府間関係 (2016)
  • 著者名/発表者名: 原田大樹
  • 雑誌名: 都市問題 巻: 107巻7号 ページ: 44-52
• [雑誌論文] ビッグデータ・オープンデータと行政法学 (2016)
  • 著者名/発表者名: 原田大樹
  • 雑誌名: 法学教室 巻: 432 ページ: 39-45
• [雑誌論文] 本案審理の充実に向けて (2016)
  • 著者名/発表者名: 原田大樹
  • 雑誌名: 判例時報 巻: 2308 ページ: 13-18
• [雑誌論文] 政策実現過程のグローバル化とEU法の意義 (2016)
  • 著者名/発表者名: 原田大樹
  • 雑誌名: EU法研究 巻: 2 ページ: 29-62
• [雑誌論文] 保険医療機関指定拒否処分と憲法22条 (2016)
  • 著者名/発表者名: 原田大樹
  • 雑誌名: 別冊ジュリスト 巻: 227 ページ: 24-25
• [雑誌論文] 家族と税制―政府税調「論点整理」を手がかりに (2016)
  • 著者名/発表者名: 藤谷武史
  • 雑誌名: ジュリスト 巻: 1493 ページ: 32-37
• [雑誌論文] 財政と金融市場の「法的な距離」― 財政法学の研究課題の提示に向けて (2016)
  • 著者名/発表者名: 藤谷武史
  • 雑誌名: 法律時報 巻: 88巻9号 ページ: 14-25
• [雑誌論文] 寄附税制の基礎理論と制度設計 (2016)
  • 著者名/発表者名: 藤谷武史
  • 雑誌名: 税研 巻: 189 ページ: 32-39
• [雑誌論文] 租税法律主義における租税の意義―旭川市国民健康保険条例事件 (2016)
  • 著者名/発表者名: 藤谷武史
  • 雑誌名: 別冊ジュリスト 巻: 228 ページ: 8-9
• [雑誌論文] 強制執行による回収と給与支払者の源泉徴収義務 (2016)
  • 著者名/発表者名: 藤谷武史
  • 雑誌名: 別冊ジュリスト 巻: 228 ページ: 220-221
• [雑誌論文] インターネット販売業者のアパート及び倉庫が日米租税条約上の恒久的施設に該当するとされた事例（租税判例研究） (2016)
  • 著者名/発表者名: 藤谷武史
  • 雑誌名: ジュリスト 巻: 1494 ページ: 119-122
• [雑誌論文] 競争法に晒される公序保護－フランス警察法の変容と経済公法の位相 (2016)
  • 著者名/発表者名: 日野辰哉
  • 雑誌名: 筑波ロー・ジャーナル 巻: 21 ページ: 169-192
• [雑誌論文] 理由提示と処分理由（一） (2016)
  • 著者名/発表者名: 須田守
  • 雑誌名: 法学論叢 巻: 179巻1号 ページ: 1-42
• [雑誌論文] 理由提示と処分理由（二） (2016)
  • 著者名/発表者名: 須田守
  • 雑誌名: 法学論叢 巻: 179巻2号 ページ: 1-37
• [雑誌論文] 理由提示と処分理由（三） (2016)
  • 著者名/発表者名: 須田守
  • 雑誌名: 法学論叢 巻: 179巻3号 ページ: 17-41
• [雑誌論文] 理由提示と処分理由（四・完） (2016)
  • 著者名/発表者名: 須田守
  • 雑誌名: 法学論叢 巻: 179巻４号 ページ: 22-50
• [学会発表] 国際職務共助手続の法構造 (2017)
  • 著者名/発表者名: 須田守
  • 学会等名: 平成28～31年度科学研究費補助金基盤研究(Ｂ) 政策実現過程のグローバル化に対応した法執行過程・紛争解決課程の理論構築 第2回研究会
  • 発表場所: 同志社大学（京都市）
  • 年月日: 2017-01-22 – 2017-01-22
  • 招待講演
• [学会発表] 街区管理の法制度設計──ドイツBID法制を手がかりに (2016)
  • 著者名/発表者名: 原田大樹
  • 学会等名: 第3回21世紀地方自治制度研究会
  • 発表場所: 総務省（東京）
  • 年月日: 2016-12-16 – 2016-12-16
  • 招待講演
• [学会発表] 外国子会社合算税制の意義と課題 (2016)
  • 著者名/発表者名: 岡村忠生
  • 学会等名: 租税研究協会第68回租税研究大会
  • 発表場所: 日本工業倶楽部（東京）
  • 年月日: 2016-09-15 – 2016-09-15
  • 招待講演
• [学会発表] 本案審理の動向と課題 (2016)
  • 著者名/発表者名: 原田大樹
  • 学会等名: 第16回行政法研究フォーラム
  • 発表場所: 立命館大学大学院法務研究科（京都）
  • 年月日: 2016-07-30 – 2016-07-30
  • 招待講演
• [学会発表] 政策実現過程のグローバル化とEU法の意義 (2016)
  • 著者名/発表者名: 原田大樹
  • 学会等名: 第9回一橋EU法研究会
  • 発表場所: 一橋大学大学院法学研究科（国立）
  • 年月日: 2016-06-25 – 2016-06-25
  • 招待講演
• [学会発表] 政策実現過程のグローバル化 (2016)
  • 著者名/発表者名: 原田大樹
  • 学会等名: 日本銀行金融研究所セミナー
  • 発表場所: 日本銀行金融研究所（東京）
  • 年月日: 2016-06-13 – 2016-06-13
  • 招待講演
• [図書] 論点体系 判例行政法２ (2017)
  • 著者名/発表者名: 青柳馨，貝阿彌亮，川嶋知正，神橋一彦，佐野義孝，田尾亮介，高橋心平，高橋信行，友岡史仁，中原茂樹，日野辰哉，福渡裕貴，不破大輔，山本隆司，横田明美
  • 総ページ数: 29（日野辰哉「行政個別法の解釈と考慮事項」389-417頁）
  • 出版者: 第一法規
• [図書] 現代行政法の構造と展開（小早川光郎先生古稀記念） (2016)
  • 著者名/発表者名: 宇賀克也、交告尚史（編）
  • 総ページ数: 14（高木光「公害防止協定と比例原則ー摂津市対ＪＲ東海事件を素材として」653-666頁）
  • 出版者: 有斐閣
• [図書] 税制の構造改革と国際課税への多面的な取組 (2016)
  • 著者名/発表者名: 公益社団法人 日本租税研究協会（編）
  • 総ページ数: 32（岡村忠生「外国子会社合算税制の意義と課題」109-140頁）
  • 出版者: 公益社団法人 日本租税研究協会
• [図書] 法理論をめぐる現代的諸問題：法・道徳・文化の重層性 (2016)
  • 著者名/発表者名: 角田猛之、市原靖久、亀本洋、桜井徹、西野基継、濱真一郎、亀本洋、ジョージ・ムスラキス、重松博之、篠原敏雄、呉豪人、髙津融男、宇佐美誠、服部高宏他
  • 総ページ数: 10（服部高宏「ドイツ連邦制と生命倫理法制」126-135頁）
  • 出版者: 晃洋書房
• [図書] 行政課題別条例実務の要点 (2016)
  • 著者名/発表者名: 条例政策研究会（編）
  • 総ページ数: 30（原田大樹「まちづくり」7001-7030頁）
  • 出版者: 第一法規
• [図書] ガバナンスを問い直すI (2016)
  • 著者名/発表者名: 東京大学社会科学研究所（編）
  • 総ページ数: 29（藤谷武史「ガバナンス（論）における正統性問題」217-245頁）
  • 出版者: 東京大学出版会
• [備考] 科学研究費補助金基盤研究「持続可能な公共財としての原子力システムの可能性」
  • URL: http://kaken.law.kyoto-u.ac.jp/atom/index.html