公的及び私的主体による要支援者支援に関する包括的研究

2017 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 16H01985
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 久保野 恵美子 東北大学, 法学研究科, 教授 (70261948)
• 研究分担者: 嵩 さやか 東北大学, 法学研究科, 教授 (00302646) ; 飯島 淳子 東北大学, 法学研究科, 教授 (00372285) ; 小池 泰 九州大学, 法学研究院, 教授 (00309486) ; 横田 光平 同志社大学, 司法研究科, 教授 (10323627) ; 石綿 はる美 東北大学, 法学研究科, 准教授 (10547821) ; 渡辺 達徳 東北大学, 法学研究科, 教授 (20230972) ; ROOTS MAIA 東北大学, 法学研究科, 准教授 (20754550) ; 岩村 正彦 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (60125995) ; 中原 茂樹 東北大学, 法学研究科, 教授 (60292819) ; 太田 匡彦 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (80251437) ; 平田 彩子 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (80547810) ; 今津 綾子 東北大学, 法学研究科, 准教授 (80708206) ; 滝澤 紗矢子 東北大学, 法学研究科, 准教授 (40334297) ; 大谷 祐毅 東北大学, 法学研究科, 准教授 (80707498)
• 研究期間 (年度): 2016-04-01 – 2021-03-31
• キーワード: 要支援者 / 公私協働

研究実績の概要

平成28年度中に、本研究の問題意識の元となった要支援者支援の具体的領域について共同研究者間で共通の理解を図り、課題の抽出を行ったのを受けて、平成29年度からは、各共同研究者が特に焦点を当てる課題を確定するための基礎作業的な研究に着手し、各共同研究者において、前年度に共有された問題意識に照らし、各自の専攻する分野の理論枠組みに基づいて、対象領域を絞った形で比較法的な文献研究を進めている。
研究は、研究代表者と中核分担者の計3名をリーダーとして、「手続・組織班」（リーダー：飯島）、「実体・作用班」（リーダー：久保野）、「執行・政策班」（リーダー：嵩）の各アプローチから進めており、平成29年度中には、「手続・組織班」中心の研究会として、前田雅子先生（関西学院大学教授)による「個人の自立を支援する行政の法的統制－生活保護法と生活困窮者自立支援法上の自立支援」（平成30年2月）、「実体・作用班」中心の研究会として、山本敬三先生(京都大学・教授)「私人間における障害を理由とする差別禁止違反の判断構造」（平成29年11月）を行った。これらにより、対象とする個別分野を広げると共に、前年度に今後の課題とされた各自の専攻分野の理論枠組みや問題意識の相違について相互理解を深めることができた。
さらに、研究代表者及び中核分担者3名は、平成31年度の社会保障法学会でのミニシンポジウム開催に向けて、生活困窮者自立支援法に対し、行政構造論、社会保障法理論、家族法の多角的に検討を行うべく、名古屋大学の中野妙子教授の協力のもと、複数回の研究会（平成29年11月、平成30年2月）を行い、報告準備を行っている。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

前年度に課題とされた専門分野ごとの理論枠組みや問題意識の相違について、要支援者支援に関わる法制度についての行政法の立場からの研究報告、民法の立場からの研究報告を受けて、専門分野を異にする研究分担者が議論を交わすことにより、相互理解を深めることができた。これらの研究会での分野交流を元に、各研究分担者が、それぞれの研究特性を活かしつつ、関係分野との関係を踏まえた具体的課題設定の検討を進めている。とりわけ、研究代表者及び中核分担者が生活困窮者自立支援法を素材に多角的検討を行う企画を進め、平成31年度当初には成果発表を行える見込みであり、本研究課題は概ね順調に進んでいるものといえる。

今後の研究の推進方策

平成30年度の後半に、研究班の研究成果を発表する全体研究会を開催し、最終年度のまとめに向けての相互の調整や補充的な研究を要する問題の洗い出しを行う予定である。研究班の研究成果の発表がこの段階に間に合わないおそれがありうるが、その場合には、研究代表者及び中核分担者の打合せを通じて、各班の研究課題の性格の違いに応じて、理論的分析の報告を先行させるなど、柔軟な進行管理により対応する。

研究成果

• [雑誌論文] 物上保証行為と親権者の法定代理権濫用（最判平成4年12月10日民集46巻9号2727頁） (2018)
  • 著者名/発表者名: 石綿はる美
  • 雑誌名: 別冊ジュリスト 巻: 239 ページ: 100-101
• [雑誌論文] 行政組織とその構成員の責任に関する一考察 (2018)
  • 著者名/発表者名: 飯島淳子
  • 雑誌名: 法学 巻: 81巻6号 ページ: 1-26
• [雑誌論文] 離婚時の親権者指定に際して、父母の面会交流に関する意向をどのように考慮すべきか (2018)
  • 著者名/発表者名: 小池泰
  • 雑誌名: ジュリスト 巻: 1518号 ページ: 81‐82
• [雑誌論文] 信頼関係破壊の法理（最判平成８年１０月４日民集５０巻９号２４３１頁） (2018)
  • 著者名/発表者名: 渡辺達徳
  • 雑誌名: 別冊ジュリスト 巻: 238 ページ: 122-123
• [雑誌論文] 日本における失業者・非正規労働者の社会的包摂－近年の政策展開を中心に (2017)
  • 著者名/発表者名: 嵩さやか
  • 雑誌名: 社会保障法研究 巻: 7号 ページ: 45-60
• [雑誌論文] JR東海認知症高齢者損害賠償事件 2 社会保障法学の視点から（判例評釈） (2017)
  • 著者名/発表者名: 嵩さやか
  • 雑誌名: 社会保障法研究 巻: 7号 ページ: 213-229
• [雑誌論文] 共働き化社会における社会保障制度のあり方 (2017)
  • 著者名/発表者名: 嵩さやか
  • 雑誌名: 日本労働研究雑誌 巻: 689号 ページ: 51-61
• [雑誌論文] 不法行為責任と「家族」の関わり (2017)
  • 著者名/発表者名: 久保野恵美子
  • 雑誌名: 法律時報 巻: 89巻11号 ページ: 91-97
• [雑誌論文] 第36章 児童の虐待をめぐる諸問題 (2017)
  • 著者名/発表者名: 久保野恵美子
  • 雑誌名: 講座実務家事事件手続法 巻: 下 ページ: 179-205
• [雑誌論文] 合意に相当する審判 (2017)
  • 著者名/発表者名: 今津綾子
  • 雑誌名: 講座実務家事事件手続法 巻: 下 ページ: 465-488
• [雑誌論文] 家事事件手続法と行政法－「行政的裁判」・家庭裁判所・実体法上の法的地位 (2017)
  • 著者名/発表者名: 横田光平
  • 雑誌名: 行政法研究 巻: 21 ページ: 109-145
• [雑誌論文] 未成年後見人による未成年被後見人の保険金横領につき家事審判官による未成年後見人の後見監督が国家賠償法1条1項に基づき違法とされた事例 (2017)
  • 著者名/発表者名: 横田光平
  • 雑誌名: 自治研究 巻: 93巻3号 ページ: 134-147
• [雑誌論文] 乳児への輸血を拒否する親権者に対する審判前の保全処分 (2017)
  • 著者名/発表者名: 小池泰
  • 雑誌名: 家事法の理論・実務・判例 巻: 1 ページ: 172‐186
• [雑誌論文] 取締法規と民事法―割賦販売法の改正を手がかりとした『システム化』への視点 (2017)
  • 著者名/発表者名: 渡辺達徳
  • 雑誌名: 消費者法研究 巻: 4号 ページ: 13-33
• [学会発表] Regulatory Ambiguity: a pilot survey of regulated entities’ perspectives (2017)
  • 著者名/発表者名: 平田 彩子
  • 学会等名: 法と経済学会
• [学会発表] あいまいな法規定をめぐる現場自治体と事業者――規制実施の正当性を求めて (2017)
  • 著者名/発表者名: 平田 彩子
  • 学会等名: 北海道大学法理論研究会定例研究会
• [学会発表] 相続法改正論議にみる「家族の多様化」・「高齢社会」 (2017)
  • 著者名/発表者名: 久保野恵美子
  • 学会等名: 家族〈社会と法〉学会第３４回学術大会
• [学会発表] Le mouvement en faveur de la réforme du droit de (2017)
  • 著者名/発表者名: 石綿はる美
  • 学会等名: séminaire japon contemporain: droit et famille
• [図書] 自治体現場の法適用 (2017)
  • 著者名/発表者名: 平田 彩子
  • 総ページ数: 240
  • 出版者: 東京大学出版会
  • ISBN: 9784130361514