研究課題/領域番号 |
16H02015
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
矢野 誠 京都大学, 経済研究所, 教授 (30191175)
|
研究分担者 |
佐藤 正弘 東北大学, 国際文化研究科, 准教授 (60622214)
太田 塁 横浜市立大学, 国際総合科学部(八景キャンパス), 准教授 (00338229)
鎗目 雅 東京大学, 大学院公共政策学連携研究部・教育部, 客員准教授 (30343106)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | ビッグデータ / 機械学習 / 消費動向 |
研究実績の概要 |
(1) 消費者行動に関し,製品グループ・製造企業・製品の3階層構造モデルを使い,製品バーコード・レベルのビッグデータに適用し,階層ごとの代替弾力性や選好のパラメータを推計,消費者の選好構造の変遷を明らかにした.消費プロファイルを特徴量空間とした消費者クラスタリングを行い,クラスタごとの選好構造を分析した(Sato and Yano, 2018). (2) 2014年4月の消費税率引上げ前後の効用水準の変化を推計し,税率変更の効果を所得効果,実質支出の変化,製品グループ・製造企業・製品の各階層における支出先の集中度という要因で分析した.所得効果,駆け込み・反動など、これまで知られている変動要因だけでなく,選好構造が集中化したことが効用の低下を引き起こしたことを明らかにした. (3) 政策の不確実性が消費者行動に与える影響を分析するため,経済産業研究所の協力を得て,政策の不確実性を日次ベースで指標化した. (4) 同じ商品を嗜好・探索・購入することを介した消費者のネットワークをグラフデータとして構築し,製品グループごとにその特徴量を抽出した.べき分布に近い次数分布を持つグループ,正の傾きの直線上の次数分布を持つグループ,それらの中間に大別されることを明らかにした(Sato and Yano, 2018, mimeo). (5) 大標本ビッグデータの解析を補完するために,社会関係資本とバイオマーカーやゲノムなどを含む高次元ビッグデータの構築を開始した.それによって,人間の社会性の源泉を明らかにするための基礎を作り,いくつかの予備的分家気結果を得た.さらに,一連の研究の基礎となる市場の質という観点からのデータ解析手法の基礎を提唱した. (6) 研究成果等を公開するための専用ウェブサイトを公開した.http://intergreen.jp/consumption
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
・新たに日本の政策不確実性指標を推計している経済産業研究所の協力が得られることとなり,マクロ経済政策の不確実性が消費者行動に与える影響についての分析に着手した. ・購買ビッグデータの研究上の活用法として,通常の計量経済学的な分析に加え,新たにネットワーク分析の手法を導入し,当初の計画では予定していなかった新たな知見を得ることに成功した. ・ゲノム情報と社会関係資本の関係を解明するために必要なデータ構築を開始するとともに,新しいアプローチの有効性を確認した.
|
今後の研究の推進方策 |
(1)消費者効用の時系列分析:昨年度までに選好構造の推計作業が完了したことを踏まえ,本年度は,引き続き推計結果の分析を行うとともに,成果となる研究論文の執筆を行う. (2)マクロ経済政策と消費行動の分析:マクロ経済政策についての政策不確実性指標を用い,政策の不確実性が消費者行動や選好構造,効用水準の時系列的な推移にどのような影響を与えているのかを分析する.また,消費税率の引上げが消費者効用に与えた影響の分析については,昨年度までに得られた推計結果をもとに,成果となる研究論文の執筆を行う. (3)製造物瑕疵の波及効果の分析:瑕疵発覚前後の当該製品及び関連財(当該製造事業者の他の製品や他の製造事業者の代替的な製品)の価格や消費量の変化を抽出するとともに,構造モデルを用いて背後にある選好パラメータの変化等を推計し,当該製品・事業者・製品グループ全体への影響やその回復,他の製品・事業者・製品グループへの代替がどのように生じるのかを分析する. (4)消費のソーシャル・ネットワーク分析:昨年度までにグラフの構築と主要な特徴量の分析が完了したことを踏まえ,本年度は,理論モデルによるシミュレーションを 行い,どのような要因が特徴量を生み出しているのかを分析するともに,成果となる研究論文の執筆を行う. (5)ヒトゲノム、バイオマーカー、健康など生命科学要因と雇用、所得、社会観などを同時にカバーする高次元ビッグデータを活用し、高頻度消費ビッグデータによるイノベーション研究を補完する.
|