研究課題/領域番号 |
16H02020
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
神林 龍 一橋大学, 経済研究所, 教授 (40326004)
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研究分担者 |
児玉 直美 一橋大学, 国際・公共政策大学院, 准教授 (10573470)
有本 寛 一橋大学, 経済研究所, 准教授 (20526470)
照山 博司 京都大学, 経済研究所, 教授 (30227532)
植杉 威一郎 一橋大学, 経済研究所, 教授 (40371182)
森口 千晶 一橋大学, 経済研究所, 教授 (40569050)
上野 有子 一橋大学, 経済研究所, 非常勤研究員 (80721498)
玄田 有史 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (90245366)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 雇用仲介 / 転職行動 / Directed Search / 結婚情報サービス / 特別養子縁組 / 不動産価格形成 / 雇用期間不明 |
研究実績の概要 |
(A)雇用仲介については、まず労働市場における仲介の役割を捉えるために、転職行動に関するデータ分析を行った。次に雇用仲介会社より業務データを借用し、分析に取り掛かった。研究協力者であるマクマスター大学の山口慎太郎氏に助力を仰ぎながら、仲介者がいかに求職者の留保水準に働きかけるかという論点を定め、仲介業の社会厚生に対する貢献を推定する方向で議論を進めた。同時に、研究協力者であるアムステルダム大学の渡辺誠氏を中心に、Directed Search の枠組みによる仲介業の規模分布に関する理論モデルを利用し、無料の公共紹介の有無が営利紹介の事業形態に及ぼす影響を理論的に検討した。並行して、厚生労働省と業務データならびに職業紹介事業関係の統計の個票利用に関する交渉を開始した。 (B)結婚仲介に関しては、平成29年度に実施予定の調査のために、監督官庁である経済産業省、業界団体ならびに4つの結婚情報サービス事業者にヒアリングを実施した。その結果、事業者によって業態が多様なことがわかり、調査対象を事業者のみならず事業所に属する被用者にも拡げる必要があることが示唆された。養子仲介については、森口が厚生労働省の「児童虐待対応における司法関与及び特別養子縁組制度の利用促進の在り方に関する検討会」に参加し、特別養子縁組制度の現状と改正点について専門家と意見交換を行ったほか、養子縁組斡旋団体や養子縁組当事者にもヒアリングを行った。 (C)不動産仲介については、会計制度や税制の変更、外国人投資家の参入に伴う不動産売買の様態の変化や結果について、不動産価格形成という観点から分析を進めた。 (D)卸売小売については、平成30年度実施予定の調査のための資料収集に従事した。 (E)政策仲介については、労働法などに関する専門的知識を有する仲介者の存在が、とくに劣位な労働条件とどう関わるかに注目して分析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(A)雇用仲介については、マクマスター大学山口慎太郎氏およびアムステルダム大学渡辺誠氏をまとまった期間、招聘することに成功し、予定通り研究を進めることができた。具体的には、政府統計を用いた労働市場全体における仲介・転職のあり方、仲介会社のマイクロデータを用いた仲介業のメカニズムの解明、仲介市場全体を眺望する規模分布に関する理論的背景について、それぞれ進展をみている。このうち、第1の点についてはワーキングペーパーとしてすでに分析結果が公表されている。 (B)結婚仲介に関しても、予定通り、平成29年度実施予定の調査の基礎情報を収集できた。具体的には、監督官庁である経済産業省および業界団の協力を取り付ける一方、これまで知られていなかった結婚情報サービス業の内実について、ヒアリングを通して把握できたことは大きな進展である。また、養子仲介については、法学や社会学など、さまざまな分野の専門家から情報収集を重ねることができ、日本における養子制度の制度的枠組みや歴史的展開について一定の知識を蓄積することができた。 (C)不動産仲介については、制度変化というイベントを用いた価格形成メカニズムについての理解を進めることができた。(D)卸売小売については、平成30年度を目標に、予定通り資料収集ができ、(E)政策仲介については、政策を対象者に伝えることがいかに重要かを労働市場を例にとって示すことができ、査読付き学術誌にその成果が公表された。 以上のように、各分野において、初年度の目標である分析の具体的論点を設定できた。
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今後の研究の推進方策 |
(A)雇用仲介については、まず労働市場全体における転職の役割について、とくにパネルデータに拡張しながら分析を継続する。仲介会社のマイクロデータを用いた分析については、現在利用可能なデータを用いた分析を進める一方、仲介会社との連絡を密にとり、データをアップデートし仲介会社のシステム変更時のデータを追加的に利用できないか交渉を重ねる。また、厚生労働省とのデータ利用に関する交渉を進め、平成29年度後半には利用可能になることを目指す。 (B)結婚仲介については、平成29年度に予算の大部分を用いて調査を実施する。平成28年度までに業態の整理は終えているので、平成29年7月をめどにパイロット調査を実施し、平成29年9月頃までに調査設計を終了することを目指す。順調にいけば、同年11月中の実施、平成30年1月頃のデータ納入を予定する。この際、事業所調査と被用者調査を同時並行で進めることを検討し、雇用仲介との比較可能なデータを構築する。養子仲介については、外国研究者を共同研究者として欧州の養子縁組の法制度と実態を分析し日本との国際比較に進むと同時に、とくに日本・韓国については児童福祉施設や養子縁組機関を訪問し、実地調査と資料の収集を行う。 (C)不動産仲介および(D)卸売小売については、引き続き資料収集に従事する。 (E)政策仲介については、社会的自立に困難を有する人々に対する仲介者の役割などを中心に、データ分析ならびにヒアリング調査などから明らかにする。
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