研究課題/領域番号 |
16H02022
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
中室 牧子 慶應義塾大学, 総合政策学部(藤沢), 准教授 (20598403)
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研究分担者 |
藤澤 啓子 慶應義塾大学, 文学部(三田), 准教授 (00453530)
乾 友彦 学習院大学, 国際社会科学部, 教授 (10328669)
澤田 康幸 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (40322078)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 貧困 / 埼玉県学力学習状況調査 / 非認知能力 / ラボ実験 / リスク態度 / 競争心 |
研究実績の概要 |
今年度、実施した研究は下記の2つである.第一に,フィリピンの最貧困エリアの1つであるリサール州のカシグラハン再定住地で,当該地域で20年に亘って活動しているNPO法人「ソルト・パヤタス」と協力し,壮絶な貧困の中にいる子どもたちの学力,進学などの教育成果を改善するための方法を明らかにする研究で,2015-16年中を通じて行ってきたベースライン調査に基づき,(1)保護者と(2)子どもそれぞれへの政策介入プランを実施し,その介入の効果をランダム化比較試験により測定した.本研究は本年度で介入を終了し,これ以降は過去1年半に亘って実施してきた介入の効果を推定し,論文化することを目指す.本研究については6月に慶應大学三田キャンパスで,一般を対象にした研究報告会を行ったほか,NHK Eテレの「オイコノミア」でも調査中の様子を紹介した。第二に,埼玉県が実施している大規模な学力調査(埼玉県学力・学習状況調査)の分析を実施する公募研究を受託し,子どもの学力に影響を与える要因についての幅広い実証分析を行った.特に,埼玉県戸田市では全中学2年生の生徒を対象として,リスク態度や競争心を計測するラボ実験を行い,それと学力調査の結果を照合して分析を行った.この結果はRIETI(経済産業研究所)でも発表し,Disucussion Paperとして公表した.これ以外にも,埼玉県和光市の全認可保育所を対象にして,保育環境の質を計測する観察調査,保育士・保護者・児童の発達などを多面的に調査し,将来的には学力調査と照合して,保育環境の質が就学後の学力や非認知能力にどのように影響するかを明らかにする調査を実施した.また昨年の継続課題としていたピア効果や相対月齢の効果、学級規模の効果などに関する研究も進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね計画通りに進行している.第一の理由として,共同研究を行っているNPO法人や財団法人との関係がうまくいっており,現場と細かく連絡を取りながら研究を進めていくことができたことがある.第二に,今年度は,学会等での発表に加えて,一般向けの大きなコンファレンスを開催,TVや雑誌などでも研究のアウトリーチをすることができ,研究に対する一般の理解が進んだと感じた.このこともあって,自治体や政府,学校がデータの開示請求に,予想以上に積極的に応じてくれ,いくつかの実証研究については今年度中にDiscussion Paperとして公表することができた.
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今後の研究の推進方策 |
現在の研究はいずれも現在の被験者や調査対象者を「追跡」していくことが必要なため,なるべくサンプルが脱落しないよう,工夫を施していく必要がある.今後ますます自治体・政府関係者との関係が重要になってくるほか,被験者や調査対象者からも理解を得られるよう,今年度同様,研究の対外発信をすることを通じて,研究への理解を得られるよう努力していきたい.
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