研究課題/領域番号 |
16H02029
|
研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
北村 行伸 一橋大学, 経済研究所, 教授 (70313442)
|
研究分担者 |
丸 健 一橋大学, 経済研究所, 講師 (10721649)
宇南山 卓 一橋大学, 経済研究所, 准教授 (20348840)
斎藤 修 一橋大学, 名誉教授 (40051867)
佐藤 正広 一橋大学, 経済研究所, 教授 (80178772)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 社会科学 / 経済学 / 経済史 / 家計消費 |
研究実績の概要 |
北村は家計の資産蓄積と世代間の移転について研究し、多数のセミナーで発表した。またフランスで現地の研究者と日仏のアプローチについての比較検討を行った。日本の家計資産保有額は1990年代より比較的安定しており、世代間での資産移転が年間80兆円程度行われていることを実証的に示した。斎藤は『岩波講座日本経済の歴史』第1巻・中世、第2巻・近世において、人口と都市化、就業に関する章を執筆した。本書は日本経済を数量経済史の手法で捉えなおすという一貫したアプローチに基づく研究で、今後の日本経済史のメルクマールとなる成果であり、本科研に関わる研究者が貢献しているのは特記すべきことである。佐藤は戦後の日本の統計局長・川島氏が残した資料を基に、戦中戦後の統計行政の在り方を研究した。本研究では統計局の内部文書も多用され、当時の統計行政や人材育成に関する取組み等多くの興味深い事実が含まれており、今後の資料整理及び研究が待たれる。宇南山は家計消費・貯蓄の実証研究をして論文を公表した(宇南山・大野(2017))。また海外の研究者向けに日本の家計調査に関する概説書を英語で出版した。これも国際共同研究を進める上で待ち望まれていたことであり、このような取組みを行った事は大変大きな貢献である。丸・草処(連携研究者)は、農家経済調査を用いて両大戦間の農家の酒・煙草の支出について分析し、論文として纏めた。彼らは農家経済調査の個票データを用いた実証研究を地道に行っており、本論文もその成果の一部である。その実証研究は未だ端緒についたところではあるが、データを使いながら問題点を解決することも行っており、将来の利用促進の為の基礎作業も兼ねていると評価できる。尾関(連携研究者)も日本経済史の中での統計分析の重要性を指摘した論文を公刊した。先の斎藤の貢献と同様に、日本経済史の数量的統計的アプローチの啓蒙活動として評価したい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
『農家経済調査』のデータベース化は、調査原票の整理、マイクロフィルム撮影、紙焼・デジタル画像化、データ入力、入力済みデータの校正・整理と様々な工程がある。これまでの取組みの結果、データ入力と校正以外の作業が完了し、戦間期(1931-1941)分に関しては校正が残り11県を残しているのみであり、2018年度中の完成が見込まれる。さらにそのデータを統計分析に耐えるようにパネルデータ化し、結果の一部を基に実証研究を行っている。最新の研究成果は論文として2018年4月に発表予定である。 個別家計の『家計簿』の収集とデータベース化については、昨年度に引き続いて新たな資料の収集に努める一方で、収集した資料のデジタル化を進め、34世帯分のデジタル化を完了した。収集した家計簿の数は、累計で80世帯となっているので、約半分の資料群をデジタル化したことになる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の作業の第一の目標は『農家経済調査』の戦間期(1931-1941)のデータベースのパネルデータ化を完了し、統計分析を初めとした、各種の実証研究を行うことである。すでにデータの一部を用いた分析を開始して成果を出してきており、データベースの有用性は確認している。また効率的な校正作業が進んでいるので、この目標は達成できるだろう。 家計簿の収集を継続し、デジタル撮影を進めるとともに、『家計簿』データ入力についても順次進めていき、校正作業にも取り掛かりたい。『家計簿』は必ずしも同一の入力形式で記録されているわけではないが、一部市販の家計簿のフォーマットで統一されたものも多い。よって、これらのコンテンツを参考に最大公約数的な枠組みを作り、統一した形式の作成を目指す。 また、『家計簿』データの作成と並行して、世帯の基本情報のアンケートを実施したい。家計簿は、個人での利用を目的としているため、基本的には家族情報は書かれておらず、市販のものにもそういった情報を記入する欄は存在していない。よって、それら世帯員の経歴や家庭のイベントなども把握しておく必要があり、家計簿の寄贈者・貸出者全員を対象に、世帯の基本情報のアンケート調査をすみやかに行いたいと考えている。
|