研究課題/領域番号 |
16H02032
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
伊藤 宗彦 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (90362798)
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研究分担者 |
西谷 公孝 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (30549746)
遠藤 貴宏 神戸大学, 経済経営研究所, 准教授 (20649321)
松本 陽一 神戸大学, 経済経営研究所, 准教授 (00510249)
榎本 正博 神戸大学, 経済経営研究所, 准教授 (70313921)
濱口 伸明 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (70379460)
高槻 泰郎 神戸大学, 経済経営研究所, 准教授 (70583798)
上東 貴志 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (30324908)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | テキストマイニング / ビッグデータ / 画像認識 / 日本型経営 / ガバナンス / 組織構造 |
研究実績の概要 |
企業の成長を研究する方法論として経営資源に着目する限り、内部資料の分析は必須となる。しかしながら、企業が存続している限り、内部資料の閲覧は不可能である。ましてや上場企業のような大企業では社内文書は機密事項であり、外部に公表されることはない。研究対象の鐘紡資料は、同社の社史資料編纂室が所蔵していた資料で、その解散後、2008年12月に、神戸大学が寄贈を受け、経済経営研究所と経営学研究科が共同で整理、目録作成にあたってきた。同資料は鐘紡の1886年の設立から1990年にかけての時代をカバーする大規模な資料である。その中でも、稟議書と呼ばれる社長の決済資料は、ほぼ完全な形で残されており、その数は約3万点に及ぶ。同様に、帳簿関係資料も完全な形で残されている。本研究では、貴重な資料の保存、研究のため、デジタル化を進めており、稟議書、帳簿ともにほぼ作業を完了した。具体的には、1886年の設立から、戦前・戦後期の1950年ごろまでは、全て手書きの資料であり、特に明治期は特有の崩し字で書かれており、歴史家でも解読は難しい。一方、大型コンピューターを用いた図形認識や文字認識の技術が開発され、こうした判読困難な文書の活字化が研究されている。この分野のトップ企業である凸版印刷株式会社と共同で、明治期の崩し字の稟議書の一部の解読を試みたところ、コンピューターによる資料の解読・データベース化が技術的に可能、つまり最先端の画像処理技術を用いた解読、デジタル化、テキスト化を推進した。行った方法は、いわゆるOCRの技術よりも高度なもので、手書き資料においても適用可能である。本年度は、研究のコアとなる画像処理技術を用いたテキスト化とそのデータベース化、テキストマイニングのソフトウエアの導入を行った。一連の分析システムが構築できた。1年目は研究インフラの構築を行ったが、その中で、画像処理の特許申請を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
大きく、2点より実績を報告する。まず、本テーマのコアである大量データのテキストマイニングを行うための仕組みの構築と、手書き資料などデジタル化が困難であった資料のデジタル化・テキスト化によるデータベースの構築である。以下、その実績を報告する。 まず、テキストマイニングを行うための仕組みは、手書き資料(崩し字)、手書き資料(楷書)、旧かな使いを含む活字、現代の活字という4つのエンジンを有するOCRソフトウエアを導入した。市販のものではなく、専用のものであり、すでに、テキスト化に関しては高い精度で行うことができるレベルまで向上させている。次に、テキスト化したデータを保存、キーワード化、テキストマイニングのための出力形式に合わせたファイル化を行えるデータベースを構築した。これも、独自のシステムである。また、テキストマイニングのソフトウエアは、IBM社のものを導入し、既に立ち上がっている。このように、本研究のコアとなる大量データの解析に関する仕組みの構築は極めて順調に進めている。 次に、そのシステムを用いた資料のデジタル化、テキスト化の状況であるが、実績として、まず、分析対象の鐘紡資料のコアである社長回章(決裁書)のデジタル化は、35000ページほど行い、ほぼ、完了した。また、同時に進めていた、株主総会の速記録、財務諸表なども、鐘紡では、130年の歴史の中で450回行われており、そのすべてのデジタル化が終わり、テキスト化も80%程度の達成度である。テキスト化したデータは、データベースに保存され、キーワードが作成され、検索、出力ファイル化ができる状態になった。 以上、研究の推進状況は、極めて順調であり、当初の目標はすべてクリアしていることを報告する。また、研究の過程で、画像処理にかかわる特許申請を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の計画を示す。鐘紡では、会社が存続した1886‐1990年の114年間に11代の社長が在籍し、約3万点の社長回章(稟議書)が発刊された。全資料を保管している神戸大学では、現在、全社長回章のデジタル化を完了している。本年度は、デジタル化したデータをテキスト化し、データベース化し、テキストマイニングを行うことを計画の最優先課題としている。特に、武藤山治が初代支配人・社長を務めた明治から昭和初期にかけて、国内ではトップ企業となり興隆を極めた。この時期について、会社の成長要因を探求することは、おそらく、本研究の重要なパートとなる。一方、この時期の資料は、ほぼ完全に残されているものの、全て、手書き、しかも崩し字であり、今までに体系的に分析されたことはない。チャンドラーの研究で明らかにされた、多角化や垂直統合化、海外展開が企業の成長を促進するという理論は、同時期の日本企業にも適用できるのかという点の究明が期待できる。また、アメリカ企業よりも先の時代に、同じプロセスで日本企業が成長を遂げた事実を示すことができるのであれば、極めて重要な発見となる。研究の取り掛かりとして、デジタルデータ化された社長回章のテキスト化に取り組みたい。この点については、研究初年度(平成28年)より、凸版印刷社と共同実験を行い、キーワードを資料より検索し、データベース化することにより、資料全体でそのキーワードが偏在する資料を特定できることが分った。こうした先行実験の知見をもとに、テキストマイニングによる研究を進める。また、別に、株主総会の速記録、財務諸表データ、工場の繊細データなど、極めて貴重なデータのデジタル化を進めており、本年度は、そのテキスト化を進めることにより、日本式経営の形成過程の分析を進めることを計画している。
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