研究課題/領域番号 |
16H02056
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
下山 晴彦 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (60167450)
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研究分担者 |
坂本 大介 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 特任講師 (00556706)
星野 崇宏 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (20390586)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 認知行動療法 / コンピュータ化認知行動療法 / 臨床心理学 / 臨床心理士 / インターネット版認知行動療法 |
研究実績の概要 |
初年度となる28年度は、まず心理職のCCBT研修チーム、コンテンツ開発チーム、CCBT開発チームを中心とした研究体制づくりを行い、研究を進めた。心理職のCCBT研修チームでは、既に下山研究室で開発済みのCBTのWebサービスを用いて臨床心理士がガイドに入るCCBTを試験的に実施し、心理職の研修課題を検討した。その結果、臨床心理士が適切なサポートが出来るためには、CBTの訓練だけでなく、臨床心理学全般の知識と技能訓練が必要となることが明らかとなった。そこで、研修プログラムの再開発が課題であることが判明し、その課題対策を行った。 コンテンツ開発チームでは、CBT実践の基本となる生活記録及び感情認識のアプリのコンテンツを開発した。生活記録アプリは、下山研究室が既に開発してあるアプリを全面的に改定し、出来事記録を追加できるコンテンツを開発した。感情認識アプリは、フォーカシング機能を組み込んだコンテントを開発した。それを受けてCCBT開発チームでコンテンツをアプリ化する作業を行った。それに加えてCCBTを搭載した家電ロボットやAIを用いたCCBTのWebサービスを開発した。CCBTを搭載した家電ロボットでは高齢者を対象に、AIを用いたCCBTのWebサービスでは、大学生を対象に試験的な実施をした。 データ分析チームでは、利用者の反応を分析し、コンテンツの修正を行った。なお、CCBTを実施して臨床場面でも活用できるようになることも本研究の重要な目的となっている。そのため、今後臨床フィールドにおいてアクションリサーチとしてCCBTの実践研究ができるか臨床環境の整備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
進捗状況は、概ね予定通りであるが、一部遅れているところがある。遅れが明確なのは、CCBTの利用を維持するために必須となるガイド役の臨床心理士の研修システムづくりである。心理職のCCBT研修チームでは、CCBTの継続サポートに必要な臨床心理士の技能を確認するため、既に下山研究室で開発済みのCBTのWebサービスを用いた試験的な実践研究を行った。その結果、単にCBTの知識と基本技法を知るだけでは不十分であることが判明した。まず利用者の特徴を知るための検査法や異常心理学(特に発達障害)の知識、さらに介入方針を策定するケースフォーミュレーション技能や多様なCBT技法といった臨床心理学の知識全般の学習の必要性が明らかになった。そこで、CBTの基本技法に加えて臨床心理学全般の知識と技法をネット上で学ぶことができる学習システムを整備し、CCBTのガイド役となる心理職の研修環境を整えた。また、CCBTを用いたアクションリサーチのフィールドとして一般社団法人臨床心理iネットの協力を得て臨床環境を整える作業を行ったことも、研究の進行が遅れた理由となったいた。具体的ンには、このように環境整備に時間がとられたために実践するための活用プロトコルづくりも遅れた。また、ガイド役の臨床心理士をサポートするものとして利用者の継続を維持するための研修会プログラム、ネット上での利用者指導システム、AIが臨床心理士に替わって対応するAI化CCBTの開発を進めた。この作業で時間と労力がとられたこともアプリ開発の作業が遅れた理由ともなっていた。なお、28年度に実施する予定であった英国のIAPT調査については、英国の海外研究者であるロンドン大学のPatrick Smith上級講師から、IAPTにおけるCCBTの活用については特に最近の発展はないとの報告があったので、今年度の調査は取りやめた。
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今後の研究の推進方策 |
28年度の研究経験に基づき、今後の研究の推進方策を微調整することとした。当初は、CCBTを開発し、実施プロトコルを作成し、実践した成果を検討することを軸とする研究方策のみを考えていた。しかし、既に開発済のCCBTを試験的に実施したところ、サポート役の臨床心理士の訓練を含めて実施環境づくりが非常に重要であるとともに予想外に手間のかかる作業であることが判明した。有効なCCBTを開発し、臨床心理職の活動範囲を広げ、サービスギャップの解消を目指すことが本研究の最終目標であるので、実施環境の整備は避けて通れない課題であると判断した。そこで、研究の推進方策として、29年度は、当初の予定以上に実施環境の整備に注力することとした。具体的には、ガイド役の臨床心理士がCBTだけでなく、臨床心理学全般の知識と技法を学ぶことができるインターネットで学習できる映像教材の製作を引き続き進めることとした。また、ガイド役の臨床心理士のためのCCBTの研修会を開き、実践能力の育成を目指すこととした。さらにガイド役の臨床心理士の技能訓練ともなる臨床現場でのアクションリサーチを実施する環境整備も引き続き進めることとした。CCBTの開発と関連する研究方策の微調整としては、ガイド役の臨床心理士をアシストする機能をもつポータルサイトの開発、さらにはガイド役割を一部担うAI化システムの開発も併せて行うこととした。
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