研究課題/領域番号 |
16H02058
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
川合 伸幸 名古屋大学, 情報学研究科, 准教授 (30335062)
|
研究分担者 |
神尾 陽子 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 児童・予防精神医学研究部, 客員研究員 (00252445)
香田 啓貴 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (70418763)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 自閉症 / 援助行動 / マーモセット / 第三者社会交渉 / 自閉症モデル動物 / 不公平忌避 |
研究実績の概要 |
H28年度に予備的に行った研究では、マーモセットは他個体へ援助せず、むしろ援助と拮抗する不公平忌避を示すことが示唆された。そこでH29年度は、マーモセットは他個体が自身よりも価値の高い餌を受け取るときに、課題の遂行を拒否する不公平忌避を示すかを検討した。コモン・マーモセットを用いた我々のこれまでの研究において、マーモセットが第三者であるヒト演者のやり取りが互恵的かそうでないかに敏感であり、独占的なヒト演者を避けることが示された(Kawai et al. 2014)。一方で、胎生期にバルプロ酸(VPA)に曝露した自閉症モデル・マーモセット(VPA群)は、互恵条件でも非互恵条件でも、ヒト演者からのエサの受け取りに差を示さないことを明らかにした(Yasue et al., 2015) 。これらのことから、マーモセットには、基本となる不公平忌避の性質があることが示唆される。先行研究ではこれまではマーモセットの不公平忌避は示さないか限定的で、メスには見られないとされてきた。しかし、実験を実施したところ、バルプロ酸非投与(UE)群とVPA群ともにパートナーと公平な報酬では90%以上の課題成遂行率を示したが、不公平な報酬時には、UE群はオス・メスとも有意に課題遂行率を下げ、不公平忌避を示したが、VPA群は遂行率を下げなかった。このことから、胎生期バルプロ酸曝露は、援助とは逆の不公平忌避に大きな影響を与えることが示された。 社会性の低い霊長類で第三者互恵性認識実験を行ったところ、その種では互恵性・非互恵性の交渉を区別しなかった。 また、香田は「また社会類型が他者とのコミュニケーションや認知に進化的な影響力が存在したという仮説にもとづき様々な行動について随時研究を展開し成果を得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
援助の基盤にある他者行動の認識が種によって異なることを示した。この成果は、霊長類の社会認識について一定の知見を与える。しかし、自閉症モデル動物については、予備的に生理食塩水をもちいて鼻腔に投与する試みを行ったが、オキシトシンの投与は行えていない。H31年度にオキシトシンを投与することで、VPA個体が第三者互恵・非互恵認識や不公平忌避を示すようになるかを調べる予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
自閉症モデル・マーモセットがさまざまな社会認知において障害を閉めることを、これまで示してきた。それ以外に自閉症のバイオマーカーとなる指標があるかを探索する。具体的には24時間連続で活動量を測定し、日内変動を調べる予定である。 また、向社会行動を促進するオキシトシンなどを投与することで援助行動が示されるかを予備的に検討する。そのために、ホルモンの測定などを実施する。
|