研究課題
H28年度の予備実験で、マーモセットは他個体へ援助せず、むしろ他個体がよい報酬を得ることを忌避する不公平忌避という援助行動とは逆の行動を示すことが示唆された。そこでH29年度は、マーモセットは他個体が自身よりも価値の高い餌を受け取るときに、課題の遂行を拒否する不公平忌避を示すかを検討し、雌雄のマーモセットともに不公平忌避を示すことをはじめて示した(Yasue et al., 2018)。ただし、胎生期にバルプロ酸(VPA)に曝露した自閉症モデル・マーモセットは、不公平忌避を示さなかった。そのことは、第三者の互恵/非互恵的な交渉をバルプロ酸非投与マーモセット(UE)は区別するが、VPAマーモセットは区別しないという先の結果とあわせて、自閉症モデル・マーモセットは、他者や他個体に対する関心が低いことが示唆された。それらのマーモセットが生後15週齢で示した社会性テストの得点と、これらの高次社会認知得点との間に高い相関が認められた。この発見は、生後15週齢で、2歳以降の社会行動を予測できることと示している。不公平忌避実験を用いて、米国で自閉症者が使用するオキシトシンを鼻腔に投与することで、自閉症モデル・マーモセットに治療効果(他個体への関心の高まり)が得られるかを検討した。個別に経鼻投与訓練を実施し、まず生理食塩水を鼻腔投与した後に不公平忌避実験を実施した。最初の2日間は、パートナーと同じ餌を与えられるが、残り2日間はパートナーが高い価値の餌を得る。この状況においてUEマーモセットはやはり不公平忌避を示したが、VPAマーモセットは不公平忌避を示さなかった。しかし、後にオキシトシンを投与したときにはUEマーモセットの行動は変化しなかったが、VPAマーモセットは不公平忌避を示す傾向を示した。ただし、個体数が少なく有意でなかった。今後、頭数を増やして検討する必要がある。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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