研究課題
昨年度までに確立した複数の高次記憶課題の訓練を進めた。それらのうち次の記憶課題遂行中の行動を詳細に解析し、同時に32チャンネルからのマルチニューロン活動を海馬や新皮質から記録することも開始した。【順序記憶課題】スピーカーから高音→高音→低音→低音の順序で提示された時は、左右の穴のうち右に反応すると正反応となり、高音→低音→高音→低音の順序で提示された時は左の穴に反応すると正反応となる。【確率記憶課題】スピーカーから高音が提示されている時は、左右の穴のうち右に反応すると左よりも高い確率で報酬が得られ、低音の場合は左に反応すると右よりも高い確率で報酬が得られる。【メタ認知課題】LEDによる光刺激が右から提示された時は、3つの穴のうち右端の穴に反応すると正反応となり、左から提示された時は左端の穴に反応すると正反応となるが、光の強度が弱く弁別できない時は中央の穴に反応すると正反応となる。これらの記録実験のうち、順序情報という高次記憶の形成に前頭前野と海馬の相互作用が必要であるという成果を国際誌に出版した。また海馬における時間的符号化と視覚野における高次記憶の意識化に関する成果も出ている。同時にマルチニューロン活動の記録方法をさらに改良し、64チャンネルからの同時記録もできるようセットアップした。データ解析方法もさらに改良し、多数ニューロン間の機能的結合の表示法を複数確立した。また光遺伝学(オプトジェネティクス)の準備も開始し、新たなアデノ随伴ウイルスを用いた方法を開発している。
1: 当初の計画以上に進展している
実施計画のうち、ラットの高次記憶課題の訓練およびマルチニューロン活動の記録が予定より早く進展し、さらに記録データの新たな解析法も予定より早く確立できた。既に順序情報という高次記憶の形成に前頭前野と海馬の相互作用が必要であるという成果を国際誌に出版しており、海馬における時間的符号化と視覚野における高次記憶の意識化に関する成果も出ている。そこでこれらの進展と成果を踏まえ、平成31年度から実施予定であった光遺伝学(オプトジェネティクス)の準備を前倒してすでに開始している。
引き続き、複数の高次記憶課題遂行中のラットからマルチニューロン活動を記録しデータを解析していく。また前倒しで開始したオプトジェネティクス法の開発も進め活用していく。新たなアデノ随伴ウイルスによる遺伝子改変ラットを作成し、また光刺激用の特殊電極も作製する。そして遺伝子改変ラットに特殊電極を埋め込むことで、光刺激により特定の神経回路を賦活する方法を確立する。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (20件) (うち国際学会 4件) 図書 (2件) 備考 (1件)
Neuron
巻: 94 ページ: 1248~1262.e4
10.1016/j.neuron.2017.05.024
https://www1.doshisha.ac.jp/~ysakurai/