研究課題/領域番号 |
16H02061
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
櫻井 芳雄 同志社大学, 脳科学研究科, 教授 (60153962)
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研究分担者 |
廣川 純也 同志社大学, 研究開発推進機構, 准教授 (40546470)
眞部 寛之 同志社大学, 研究開発推進機構, 准教授 (80511386)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 高次記憶 / ニューロン / セル・アセンブリ / 海馬 / 側頭皮質 / ラット |
研究実績の概要 |
昨年に引き続き、すでに確立している複数の高次記憶課題の訓練をさらに進めた。それらのうち、特に次の記憶課題遂行中の行動を詳細に解析し、正反応率と反応時間の変化を調べた。同時に、32チャンネルからのマルチニューロン活動を海馬や新皮質から記録し、各ニューロンの活動と複数ニューロン間の同期活動の変化を調べた。【メタ認知課題】LEDによる光刺激が右から提示された時は、3つの穴のうち右端の穴に反応すると正反応となり、左から提示された時は左端の穴に反応すると正反応となるが、光の強度が弱く弁別できない時は中央の穴に反応すると正反応となる。【交代複合弁別課題】2種類の音と2種類の匂いの組み合わせにより左右の穴を選ぶことを学習し(音A+匂いX→右、音B+匂いY→左)、さらに音と匂いの組み合わせを変えて再度学習する。【学習・再学習課題】高低2種類の音と左右の穴の対応(高音→右、低音→左)を数日間かけて学習した後(原学習)、異なる周波数の音で同様の学習をする(再学習)。 これらの高次記憶課題中の記録実験の結果から、視覚野において高次記憶の意識化に関わるニューロン活動を検出することができた。また、嗅周囲皮質において異なるモダリティの組合せに応じて活動するニューロンを検出できた。さらに、原学習と再学習の違いが海馬と側頭皮質の同期活動すなわちセル・アセンブリの活動に現れることも分かった。 これらの成果に加え、マルチニューロン活動の記録方法をさらに改良し、マイクロドライブの軽量化により64チャンネルからの安定した同時記録もできるようセットアップを進めた。データ解析方法もさらに改良し、多数ニューロン間の機能的結合の表示法の開発を進めた。また光遺伝学(オプトジェネティクス)の準備も引き続き進めており、新たなアデノ随伴ウイルスを用いた方法を開発している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
実施計画のうち、ラットの高次記憶課題の訓練およびマルチニューロン活動の記録が予定より早く進展し、さらに記録データの新たな解析法も予定より早く確立できた。既に順序情報やメタ認知に関わる行動とニューロン活動をまとめた成果を国際誌に出版しており、複合弁別に関する成果も国際誌に投稿中である。これらの進展と成果を踏まえ、平成31~32年度に実施予定であった光遺伝学(オプトジェネティクス)の実験もすでに前倒して開始している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、複数の高次記憶課題遂行中のラットからマルチニューロン活動を記録しデータを解析していく。これまでの結果をまとめ複数の論文を作成し国際誌に投稿する。また前倒しで開始したオプトジェネティクス法の開発もさらに進め、実際に活用していく。新たなアデノ随伴ウイルスによる遺伝子改変ラットをさらに作成し、また光刺激用の特殊電極も改良する。そして遺伝子改変ラットに特殊電極を埋め込むことで、光刺激により特定の神経回路を賦活する方法を、よりしっかりと確立する。
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