研究課題/領域番号 |
16H02072
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
中野 泰志 慶應義塾大学, 経済学部(日吉), 教授 (60207850)
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研究分担者 |
山本 利和 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (20200826)
鈴木 麻央 つくば国際短期大学, 保育科, 助教 (30748603)
永井 伸幸 宮城教育大学, 教育学部, 准教授 (50369310)
相羽 大輔 愛知教育大学, 教育学部, 助教 (50735751)
韓 星民 福岡教育大学, 教育学部, 講師 (60643476)
田中 良広 帝京平成大学, 現代ライフ学部, 教授 (70392933)
氏間 和仁 広島大学, 教育学研究科, 准教授 (80432821)
三科 聡子 宮城教育大学, 教育学部, 准教授 (20804082)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 視覚障害 / 合理的配慮 / ICT / インクルーシブ教育 / 相談支援 |
研究実績の概要 |
稀少障害であり、障害の程度が多様で、専門性の高い教員の確保が困難な視覚障害児に対して 、合理的配慮が適切に行われるような支援システムを構築するために以下の研究を実施した。 1.相談支援ポータルのスパイラルアップと評価:昨年度、構築した合理的配慮ポータルサイト(配慮に関する情報を蓄積し、意見交換や相談等ができるサイト)の本格的な運用を行い、情報提供の内容をスパイラルアップ方式でバージョンアップし続けると同時に、システム上の不備や使い勝手等を改良した。その結果、本サイトを見て、合理的配慮に関する相談が多数寄せられ、その中から共有すべき情報を精査し、ポータルサイトを更新した。ポータルサイトの広報の意味も兼ねて、日本特殊教育学会等でシンポジウムを実施した。 2.教育支援ツールの公開・改良・評価:知覚機能評価ツールの試作・評価では、前年度決定した仕様に基づいてアプリを試作・評価した。教材作成支援ツールの試作・評価では、デジタル化された教科書等のセキュリティ機能の向上させた上で、ユーザビリティを低下させないかどうか評価した。テスト・アコモデーション・ツールの試作・評価では、実際の試験に適応できるようにアプリを改良し、実用性に関する評価を行った。ビデオ・クリップの評価では、内容の妥当性やわかりやすさについてユーザの意見を求めた。 3.研修プログラムの開発・評価:質の高い合理的配慮を提供可能にするための研修プログラムを立案するために、前年度に実施した予備調査に基づき、視覚障害領域免許状を取得できる全国の教員養成系大学での授業や免許状更新講習、メンバー全員が関わっている全国各地での認定講習等で、本調査を実施した。教員研修・養成カリキュラムの立案にあたっては、全国的に専門家が少ないという現状を鑑み、ICTを効果的に活用する方略を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「1.相談支援ポータルのスパイラルアップと評価」と「2.教育支援ツールの公開・改良・評価」については当初の計画以上に進展しているが、「3.研修プログラムの開発・評価」については計画よりもやや遅れている。以下、進捗状況について示した。 1.相談支援ポータルのスパイラルアップと評価:合理的配慮ポータルサイトのコンテンツは当初の予定よりも多く、用意することができた。特に、ビデオクリップは、視機能評価関係10種類、点字・触図関係10種類、拡大読書機関係6種類、教材・教具関係6種類、拡大教科書関係5種類、拡大鏡の選定関係5種類、重複障害関係5種類、シミュレーション2種類の合計49種類を作成し、公開することができた。また、本サイトを見て、合理的配慮に関する相談の問い合わせが多数寄せられたし、東京都や神奈川県では親の会からの要望で合理的配慮に関する講習会や対面相談会も実施できた。さらに、日本特殊教育学会では自主シンポジウムを開催することができた。 2.教育支援ツールの公開・改良・評価:教科書・教材閲覧アプリ「UDブラウザ」(Climb App、慶應義塾大学中野研究室)、一対比較法アプリ「Paired Comp」(Climb App、慶應義塾大学中野研究室)、PDF画像を表示している際の音声録音アプリ「Rec Voice」(Climb App、慶應義塾大学中野研究室)、日用視野測定ツール(Tripot、広島大学氏間研究室)、日用視力測定ツール(Tripot、広島大学氏間研究室)、日用読書測定ツール(Tripot、広島大学氏間研究室)を評価・改良し、公開することができた。 3.研修プログラムの開発・評価:当初の計画では、本年度中にカリキュラムとテキストの原案を構築する予定であった。しかし、各大学等で実施されている研修内容の調査・分析に時間を要してしまったため、原案の立案には至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画よりも進捗がやや遅れている「3.研修プログラムの開発・評価」に研究分担者を重点的に配置しつつ、当初の計画以上に進展している「1.相談支援ポータルのスパイラルアップと評価」と「2.教育支援ツールの公開・改良・評価」についてもさらなる充実を目指し、当初の目的である「ICTの活用による視覚障害児のインクルーシブ教育支援システム」の構築を目指す予定である。 1.合意形成支援ポータルのスパイラルアップと評価:ポータルサイトで公開している情報等の有効性に関する調査を実施する。 2.配慮促進支援ツールの改良・評価:開発・公開しているツールに関して、利用者の意見を集約し、さらに改良を加える。また、ビデオ・クリップをさらに充実させる。 3.研修カリキュラムの開発・評価:昨年度までの調査結果に基づき、教員研修・養成カリキュラムを作成する。また、視覚障害領域免許状を取得できる全国の教員養成大学での授業や免許状更新講習、全国各地での認定講習等で、本研修カリキュラムを試用し、評価を行う。 得られた結果を基にして、相談支援ポータルを継続的に運用しつつ、さらに事例を収集する。また、配慮促進支援ツールを効果的に活用した事例を公開し、普及させる。また、今後の教員養成、免許状更新講習、認定講習等で活用できるように研修テキストを立案する。 さらに、これらの研究成果を普及・啓発するために日本特殊教育学会等で自主シンポジウム等を実施する。また、弱視教育研究全国大会等での研究成果発表や日本ロービジョン学会誌等に論文を投稿する。さらに、これらの研究成果を視覚支援特別支援学校等がセンター的機能として実施できるようにするための研修を実施する。
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