研究課題
不活性金属の金は触媒活性を示す。さまざまな金触媒について、それぞれが異なる複雑な原子的構造をもち、さらに作用する化学反応ごとに異なる触媒メカニズムが提案されていた。本研究では、化学反応(一酸化炭素の室温酸化)に関与する金原子、担体を構成する原子および気体分子について、さまざまな金触媒の活性領域における協同的な運動を原子スケールかつ高い時間分解能での環境制御型・透過電子顕微鏡法(ETEM)によって解明することを目的とした。これまでの金ナノ粒子触媒についての解析に加えて本年度はナノポーラス金触媒についてETEM法による反応環境下での表面の動的その場観察に、第一原理計算による電子論的解析も連携させた解析を行った。その結果、ポアの表面のうちで{110}晶癖面においては、反応環境下で1ないし2原子コラムのスケールの範囲で表面原子の動的な挙動が観察された。一方で、純酸素雰囲気中においては表面原子は比較的安定していることも観察された。以上の観察は、電子線照射の効果を低減させるために低エネルギーの電子(80keV)を試料に入射させて高速カメラを利用することで可能となった。解析の結果、ナノポーラス金触媒試料中に残留する不純物の銀原子が表面で酸化することで、微小な金-銀酸化物のクラスターが生成したと結論された。この結果は、ナノポーラス金触媒の本質的な原子構造は、主要な金触媒である金ナノ粒子触媒(金ナノ粒子が酸化金属担体に担持された構造をもつ)の逆触媒であることを示唆する。この他に、ETEM内部で電位差を制御できる新規なナノ接合モデル金触媒の観察・解析も行なった。以上から金の触媒能についての動的な原子構造的描像の解明に大きく寄与することができた。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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