研究課題/領域番号 |
16H02078
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中村 芳明 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (60345105)
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研究分担者 |
森 伸也 大阪大学, 工学研究科, 教授 (70239614)
藤田 武志 東北大学, 材料科学高等研究所, 准教授 (90363382)
澤野 憲太郎 東京都市大学, 工学部, 教授 (90409376)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ナノ構造物性 / 熱電材料 / 二次元電子ガス / エピタキシャル成長 / シリコン |
研究実績の概要 |
本研究では、当初、キャリアとフォノンが感じるポテンシャルの違いを利用して、キャリアは二次元閉じ込め構造を、フォノンにはナノスケールの散乱体を作りこむことで、電気伝導率を増大させ、熱伝導率を低減させることを狙うというものであった。昨年、様々な成長法でGe系薄膜とSiGe系超格子の熱電特性を測定した結果、本材料系では、特に移動度が熱電特性に大きな影響を与えていることを見出した。これは2次元電子ガス(2DEG)を作りこまなくても、高移動度歪膜を用いることで熱電性能が増大できることを意味するものである。この点で当初計画からずれるが、よりシンプルな構造で高性能化が可能となるという点でより良い結果である。その結果を踏まえて、本年度は、単相の歪SiGe層の形成や様々な歪SiGe系超格子の形成および熱電特性の評価を行った。その結果、Siリッチな歪SiGe/Si超格子を形成することで、高い電気伝導率及びゼーベック係数が得られることを見出した。そこで、SiGeの組成比、超格子の層厚、層厚比などを緻密に変えて、熱電特性(特に熱電出力因子)を評価することで、高い熱電出力因子を有するSiリッチな歪SiGe/Si超格子の特性の本質を調べた。その結果、高移動度であることに加え、SiリッチSiGeにすることで、高縮重度電子状態に起因する高ゼーベック係数の実現が高性能の理由であることがわかった。この方針で構造を最適化した結果、SiGe超格子系で最高の出力因子(28μWcm-1K-2)の実現に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初期待していた構造とは異なり、Siリッチ歪SiGe/Si超格子により、高性能が得られるという知見が、研究の途中で得られた。この高性能の構造の本質を見極めることが本研究にとって重要であるため、そちらに舵を切って研究を行うことになった。そのため、2018年度まで繰越を行い研究を行った。その結果、最終的には、SiGe/Si系超格子の過去最高出力因子を引き出すことに成功した。この時点で、研究の遅れは取り戻し、本研究の進展をおしすすめることができたため、順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
電子輸送の制御は、順調に遂行していると思われる。そのため、今後は、熱輸送の制御に焦点を当てて、フォノン散乱体の導入を行っていく。その結果、この高い出力因子を維持したまま、熱伝導率の低減を目指す。具体的には、SiGe/Si超格子へのナノ構造の導入、界面構造の制御を推し進める予定である。ナノ構造としてナノドットを考えているが、もしそれより効率的に熱伝導率を低減し、出力因子を維持できる構造があれば、積極的により良い方向に舵を切って進めていく方針をとる。
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