研究課題/領域番号 |
16H02081
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
山本 洋平 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (40589834)
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研究分担者 |
鍋島 達弥 筑波大学, 数理物質系, 教授 (80198374)
神原 貴樹 筑波大学, 数理物質系, 教授 (90204809)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 光共振器 / メタマテリアル / 自己組織化 / レーザー / 発光 / 球体 / ポリマー / 錯体 |
研究実績の概要 |
① 特徴的な発光特性を有する共役ポリマーおよび蛍光ドーパントの合成 ポリマーとして、金属配位部位を有する共役ポリマー、凝集誘起発光特性や遅延蛍光特性、フォトクロミズムを示す共役ポリマーおよび有機分子の開発を行った。蛍光ドーパントとして、リン光特性を示す重元素金属錯体(Ir, Ptなど)や高輝度発光を示す希土類金属錯体(Eu, Er, Tb, Tmなど)を合成し、金属配位部位を有する共役ポリマーへの配位結合の形成を検討した。非共役ポリマーや強誘電ポリマー球体への蛍光ドーパントとして、円偏光発光を示す色素や分子内分極が大きなD-π-A型非線型光学色素、近赤外発光を示す蛍光色素を合成した。合成したポリマーや蛍光色素を用いて、蒸気拡散法もしくは界面析出法により球体を作製し、顕微分光によるWGM発光特性を観測した。 ② マイクロマニピュレーションによる球体の1次元配列と1Dメタマテリアル特性 作製した複数の球体共振器を、マイクロマニピュレーション技術を用いて特定の配列を形成し、WGMを介した効率的な球体間光伝搬および放射エネルギー変換を実現した。例えば、緑・黄・赤色WGM発光を示す球体を連結することによる多段階カスケードエネルギー移動を実現した。同種もしくは異種の球体が連結した場合のモードカップリングや波長変換に関して、実験とシミュレーションの両面から検討を行った。 ③ 共役ポリマー球体からの光ポンピングによるレーザー発振の実現 本課題の重要目標の一つに、電荷注入発光によるレーザー発振の実現が挙げられる。今回、ミニエマルジョン法を用いて光耐久性の高いポリフルオレン(F8)という共役ポリマーからなるマイクロ球体を作製した。その球体1粒子に対し、フェムト秒パルスレーザーを照射し、発光スペクトルを計測した結果、1.5 マイクロJ/cm2の低閾値での青色レーザー発振の観測に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、ほぼ予定通り研究を実施し、関連する論文を計17報発表した。当初の目標であった、球体間光伝搬と波長変換や光ポンピングによるレーザー発振特性など、複数の成果を高インパクトジャーナルに発表することができた(ACS Nano x 2, Angew. Chem. Int. Ed. x 1など)。また、レビュー論文1報とビデオジャーナル1報を発表した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、以下の2つの研究を行う。 ① 基板表面への自発的2次元配列と2Dメタマテリアル特性:光学メタマテリアル作製のためには、球体共振器をより高次に集積しなくてはならない。前述の溶液プロセスによる球体形成ではサイズや分散を厳密に規定することが難しく、また基板表面への周期配列構造の形成も難しい。そこで本申請では、溶媒蒸気アニールによる基板表面での直接的なマイクロ球体の自己形成を提案する。これまでの予備実験において、スピンコート法により基板表面に形成したポリマー薄膜をクロロホルム/メタノールの混合溶媒蒸気中に曝露することで、ポリマー薄膜が自発的に構造変形し、球体が形成することを見出している。また、親水表面、疎水表面、あるいは金属電極上では球体の粒径や形状が変化することを見出している。本提案では、自己組織化単分子膜(SAM)による親水疎水パターンを形成した基板上にπ共役ポリマーの薄膜を形成し、溶媒蒸気アニールによりポリマーが親水表面部位へ凝集し構造変形するプロセスを利用し、基板上に周期的に球体やディスクを形成する。アレイ形成のために、親水疎水パターンの幅、溶媒の種類と混合比、保持温度、アニール時間を系統的に変化し、最適な自己形成条件を検討する。 ② 3次元超格子コロイド結晶の構築と3Dメタマテリアル特性:①で作製した2Dコロイド結晶を足場として、3次元的なコロイド結晶を構築する。既に2次元的な周期配列が形成しているので、その隙間を同種もしくは異種の球体で充填する。また、反対の表面電荷を有する球体を用い、交互に積層することでコロイド超格子結晶を構築する。作製した超格子コロイド結晶に光を導入し、異なる発光色の閉じ込めや発光の先鋭化を実現する。さらに、電荷注入発光による電流誘起コロイドフォトニック結晶を実現する。
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